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23 討伐からの異変 1(sideルーカス)
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討伐要請を受けて向かった森で、ヨウガの姿に見蕩れる討伐隊員達にイラッとする。
こうなるから来たくなかったんだ。
だがお互いに一時も離れたくないという気持ちは同じで、だからわざわざやって来たんだ。
どうもヨウガは自己肯定感が低くて、『こんな俺が』とか『俺なんか』ということを頻繁に口にする。
向こうの世界では、ヨウガを肯定する存在がいなかったのだろう。いたとしても、そんなヤツの存在を俺は許さないが。
森の入り口に固まっていたのは一〇人ほどだが、少し離れた場所に張ってある複数の天幕の中には、三〇人はいるだろう。
討伐隊の隊長のライアンに色々と揶揄われたが、無視だ。ヨウガを見るんじゃない。
さっさと作戦会議用の天幕にヨウガと移動し、状況を確認する。
森の北に大きな魔力反応があるという。かなり大物の魔物の気配だ。
詳しく知るためにヨウガに声をかけると、必要な情報を乗せて、可視化した地図を皆に分かるように教えてくれた。
唖然としたライアン達に密かに笑う。
俺も最初は、ヨウガの規格外な魔法に驚いたがな。
ヨウガは自分の役目が終わったと、ナルという聖騎士見習いの子とほのぼのしている。可愛い。
やがて方針が決まり、俺達に強固な防御魔法と攻撃力アップの魔法をかけてくれたヨウガに礼を言う。
「気を付けてね」
「ああ、ヨウガも。彼とここにいるんだよ」
そう言ってナルを見ると、彼も真剣な顔で頷いた。
他にも数名、治癒係や連絡係が待機するため、彼らの護衛として五人ほど聖騎士が残るが、天幕の中で常にヨウガと一緒にいるのはナルだけだ。俺が他の聖騎士達を側に置きたくないからな。
ナル? 彼はヨウガと同じ抱かれる側だろうから心配ない。
「うん、ここにも防御魔法を張っておくから大丈夫! 俺、攻撃に関してはからっきしで役立たずだから、迷惑かけないように、ここで大人しく待ってるよ」
「迷惑だなんて、そんなことは絶対にないが……そうだな、怪我をしないように待っていてくれ」
そう言ってヨウガの額に口付けを落とすと、さあっと顔に熱が集まった。
可愛い。
「ルーカス、恥ずかしいってば」
「そうだな、また夜にな」
「っそういう意味じゃ……もう、いい。本当に気を付けてな!」
そう照れるヨウガが本当に可愛い。ライアンが呆れた目で見ているから、仕方ない。そろそろ行くか。
そうして森に入ってすぐに、俺はライアン達三〇人あまりを連れて、一度に転移してオークキング達のすぐ前にまで移動した。
急に現れた俺達に、ちょっと理解が追いついていないのか、動揺して動きがおろそかになっている。今のうちにサッサと討伐してしまおう。
そうやって、オークキングの首を一刀両断にしていると、我に返ったらしい他の魔物達がめちゃくちゃに動き出した。
「司令塔のオークキングを殺ってしまえば、こんなものか」
「いやいや、ルーカスさんが凄すぎなんですって! ナニアレ、油断してたとはいえ、一撃で首ちょんぱって、おかしいでしょうが!」
「サッサと討伐して帰りたいからな」
「あーあー、そういや、蜜月中ですもんね!」
クソ羨ましい、なんて口の悪いライアンに苦笑する。
聖騎士は、見た目が華やかでよそ行き顔をするから、反動で討伐中は品行方正とは真逆になりやすい。
命のやり取りの最中に、真面目なだけの聖騎士は命を落としやすい。図太く生き残ってやるという気概がないと、やってられないからな。
「そうだよ、その蜜月中にきた連絡にむかついてるんだよ。ヨウガが俺と離れたくないって言うから、渋々、承諾したんだ」
「う、わー! 何で俺、討伐中にルーカスさんののろけを聞かされてんだ!?」
「羨ましいだろう」
「ちくしょー! 俺も早くそういう嫁が欲しいー!」
「はいはい、頑張れー」
そんな会話をしながら、一〇分足らずで討伐は完了し、後始末の方が時間を食った。
───それがあらかた片付いた頃……。
ソレは起きた。
こうなるから来たくなかったんだ。
だがお互いに一時も離れたくないという気持ちは同じで、だからわざわざやって来たんだ。
どうもヨウガは自己肯定感が低くて、『こんな俺が』とか『俺なんか』ということを頻繁に口にする。
向こうの世界では、ヨウガを肯定する存在がいなかったのだろう。いたとしても、そんなヤツの存在を俺は許さないが。
森の入り口に固まっていたのは一〇人ほどだが、少し離れた場所に張ってある複数の天幕の中には、三〇人はいるだろう。
討伐隊の隊長のライアンに色々と揶揄われたが、無視だ。ヨウガを見るんじゃない。
さっさと作戦会議用の天幕にヨウガと移動し、状況を確認する。
森の北に大きな魔力反応があるという。かなり大物の魔物の気配だ。
詳しく知るためにヨウガに声をかけると、必要な情報を乗せて、可視化した地図を皆に分かるように教えてくれた。
唖然としたライアン達に密かに笑う。
俺も最初は、ヨウガの規格外な魔法に驚いたがな。
ヨウガは自分の役目が終わったと、ナルという聖騎士見習いの子とほのぼのしている。可愛い。
やがて方針が決まり、俺達に強固な防御魔法と攻撃力アップの魔法をかけてくれたヨウガに礼を言う。
「気を付けてね」
「ああ、ヨウガも。彼とここにいるんだよ」
そう言ってナルを見ると、彼も真剣な顔で頷いた。
他にも数名、治癒係や連絡係が待機するため、彼らの護衛として五人ほど聖騎士が残るが、天幕の中で常にヨウガと一緒にいるのはナルだけだ。俺が他の聖騎士達を側に置きたくないからな。
ナル? 彼はヨウガと同じ抱かれる側だろうから心配ない。
「うん、ここにも防御魔法を張っておくから大丈夫! 俺、攻撃に関してはからっきしで役立たずだから、迷惑かけないように、ここで大人しく待ってるよ」
「迷惑だなんて、そんなことは絶対にないが……そうだな、怪我をしないように待っていてくれ」
そう言ってヨウガの額に口付けを落とすと、さあっと顔に熱が集まった。
可愛い。
「ルーカス、恥ずかしいってば」
「そうだな、また夜にな」
「っそういう意味じゃ……もう、いい。本当に気を付けてな!」
そう照れるヨウガが本当に可愛い。ライアンが呆れた目で見ているから、仕方ない。そろそろ行くか。
そうして森に入ってすぐに、俺はライアン達三〇人あまりを連れて、一度に転移してオークキング達のすぐ前にまで移動した。
急に現れた俺達に、ちょっと理解が追いついていないのか、動揺して動きがおろそかになっている。今のうちにサッサと討伐してしまおう。
そうやって、オークキングの首を一刀両断にしていると、我に返ったらしい他の魔物達がめちゃくちゃに動き出した。
「司令塔のオークキングを殺ってしまえば、こんなものか」
「いやいや、ルーカスさんが凄すぎなんですって! ナニアレ、油断してたとはいえ、一撃で首ちょんぱって、おかしいでしょうが!」
「サッサと討伐して帰りたいからな」
「あーあー、そういや、蜜月中ですもんね!」
クソ羨ましい、なんて口の悪いライアンに苦笑する。
聖騎士は、見た目が華やかでよそ行き顔をするから、反動で討伐中は品行方正とは真逆になりやすい。
命のやり取りの最中に、真面目なだけの聖騎士は命を落としやすい。図太く生き残ってやるという気概がないと、やってられないからな。
「そうだよ、その蜜月中にきた連絡にむかついてるんだよ。ヨウガが俺と離れたくないって言うから、渋々、承諾したんだ」
「う、わー! 何で俺、討伐中にルーカスさんののろけを聞かされてんだ!?」
「羨ましいだろう」
「ちくしょー! 俺も早くそういう嫁が欲しいー!」
「はいはい、頑張れー」
そんな会話をしながら、一〇分足らずで討伐は完了し、後始末の方が時間を食った。
───それがあらかた片付いた頃……。
ソレは起きた。
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