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王都観光 初日 2
しおりを挟むとりあえずヒューズの腕をぎゅむっと抱き締めたら、ヒューズがガバッとこっちを見た。
なので、なあに?という意味を込めて首を傾げてみた。
「---っぐ・・・ヤバかわ・・・」
「? ヒューズ、大丈夫?」
「・・・・・・面白ぇ」
「ダグラス、あまり揶揄うなよ・・・」
ヒューズが片手で顔を覆ってブツブツと何か言ってる側で、ダグラスと義父様が話している。
ルカには聞こえていない。
「さあさ、早く市場へ向かいましょう」
セバスの一言で皆、歩き出した。
ヒューズを下から見上げると耳がちょっと赤い・・・?
・・・そっか、照れてるんだ・・・・・・。
ヒューズをこんな顔にさせてるのが僕なんだって思ったら、なんか凄く特別な感じがして嬉しくなった。
「・・・ふふっ、幸せ」
「ルカ?」
「ううん、ね、今日は僕とたくさん楽しい思い出作ろうね」
「---っもちろん! 色々なところに行こうな!」
「・・・俺達、空気だな」
「・・・・・・くそう、私だってルカとたくさん思い出作りたい!」
「ほっほっほ、それでは早く行きませんと彼方此方見て回れませんぞ」
セバスに促されて皆が歩き出す。
周りが賑やかだけど、男女問わずにキャーキャーと黄色い声が聞こえる。
---そう言えば、僕の旦那様はもの凄く格好良くてモテるんだった!
モヤモヤする。
だって聞こえてくる声に『格好いい人にくっついてるあの子供は何なの?! 邪魔よ!』って言う言葉が混じってる。
・・・・・・僕の見た目が子供みたいなのはしょうがないけど、でも、ちゃんとヒューズと結婚してるんだよ。
僕の気持ちはだんだん沈んで行った。
「ルカ? どうした?」
「う・・・ん・・・・・・」
気持ちと一緒に頭も俯いていたらしく、ヒューズが声をかけてきた。
僕はこの気持ちをどう言えばいいのか分からずに、言葉を濁すと黙り込んだ。
前の世界では色々な言葉をぶつけられても自分の足で頑張って立って、素知らぬ顔で流してたけど。
この世界でヒューズに甘やかされてきた今の僕は、すっかり弱くなってしまって年相応の人間になっていた。
---僕はヒューズに不釣り合いなの?
先日の馬鹿王太子の台詞がちらつく。
相応しい相手って何?
見た目が子供だからって理由でアルカエラ神も祝福してくれた婚姻を否定されて・・・・・・。
挙げ句に王太子の自分が相応しいって。
毅然としていたけど、本当は怒っていたし、怖かった。
哀しかった。
今また、そう言う声や視線を感じて、僕はどんどん暗い気持ちになって行った。
ヒューズ達が心配してるのは分かってるけど。
さっきの楽しい気持ちには戻れなかった。
『---おい、ルカの様子が変だ』
ヒューズがダグラスに読唇術で聞く。
『あ---、多分アレのせいだな』
『アレ?』
『・・・お前は気にしないし慣れてるだろうが、周りのヤツらの声や視線だよ。お前にキャーキャー言って、ルカを邪魔な子供扱いしてる』
『---何?!』
ダグラスが頬を掻きながら応える。
『見た目が子供だからなあ。今は騒がれないようにフードで顔が見えないから尚更』
『煩わしくならないようにと思っての事だったが、オープンにしたほうが逆に良いかもしれんな』
ダグラスの言葉にイライアスも続けた。
確かに稀人としては騒がれるが、影で(聞こえるように)悪意ある言葉を投げかけられるよりは良いかもしれない。
護衛達も悪口を大っぴらに止めることは出来ないしな。
『じゃあ、良いか?』
ダグラスとイライアス、セバスも頷いたので、これ幸いとルカの顔を手で向かせる。
思ったよりも暗い顔のルカに驚きつつ、顔を近づけてフードを下ろし、その可愛らしい額に口づけをした。
ルカが目を瞠った後、顔を真っ赤に染めていく。
「---ああ、その顔は駄目だ! 誰にも見せられない!!」
そういってルカをぎゅっと抱き締めて、胸元に顔を埋めた。
それを見ていた野次馬達がキャーキャーギャーギャーと大騒ぎになった。
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