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辺境伯騎士団(sideダグラス)
しおりを挟む---その日、ヒューズの運命が決まった。
年に一度の、二つの月が満月になる日。
ここ辺境地では魔物の活発化による被害を防ぐため、毎年この日の前後には騎士団総出で泊まり込みで森の警戒にあたっていた。
そして満月になった当日の夜。
森の空気が変わったのが分かった。
森の中から魔狼の遠吠えが聞こえて、慌ててヒューズと向かう。
どうやらヒューズの勘が早く行けと言ってるらしい。
ヒューズの勘は恐ろしいほど当たるからな。
そして魔狼の声と人の声、滑り落ちる物音が耳に入った。
「急がないと!」
ヒューズも俺も大急ぎで向かうと、辿り着いたその場所に子供が倒れていた。
おそらく木の幹に背中を打ち付けたのだろう。
頭は庇ったようだが、背中を強打したのなら呼吸もし辛いはずだ。
痛みもかなりあったのだろう、気絶したようでぐったりとしている。
それを見て、ヒューズが慌てる。
珍しいな、ヒューズが取り乱すなんて・・・。
とにかく、先に戻って医療部隊に準備をして貰う。
「すまないが、今から怪我人が運ばれてくる。急ぎで手当てを頼む。団長が運んで来るからな」
「え? こんな日にこの森に人が?!」
「ああ、子供らしいが、魔狼に追われて斜面を滑り落ちたようでな、背中を木に打ちつけたようだ」
「っ了解しました! おい、急ぐぞ!」
そうこうしているうちに団長がテントにやって来た。
テント内の灯りに照らされたその子は・・・。
---黒髪だった。
「ヒューズ・・・この髪は」
「・・・ああ、おそらくは・・・」
稀人。
医療部隊員も気が付いたのだろう。
しかし黙ってテキパキと治療に入る。
「団長達は出て行って下さい。治療の邪魔になります」
「・・・チッ、分かった。後は頼む」
「おい、ヒューズ、今舌打ち・・・ハア。後で状況を教えてくれ」
「分かりました」
そうしてしばらく、医療部隊員が一人、報告に来て告げた言葉にヒューズがキレて・・・。
もしかしたらと思う。
最初は女の子かと思っていたが、男の子と証明された。
ヒューズとは歳が些か離れているだろうが、ヒューズを見るに、感触は良い。
彼がヒューズを気に入ってくれたら、数年くらいはヒューズも待てが出来るかも。
そんな思いで迎えた翌朝。
目を覚ました彼に詳しく話を聞くと、あんな体格で17歳?!
何なら来月に18歳になるだと---?!
ヒューズと二人で唖然。
これは辺境伯家に着くまで子供と思わせておかないとヤバい。
彼には悪いが、暫くは子供扱いさせてくれ・・・と思っていたら、昼休憩の後で馬上のヒューズの腕の中、ぐらんぐらんと体が揺れてしまいには寝落ちした。
---子供か?!
いや、治癒魔法で体力ないし、お腹いっぱいで揺られれば眠くなるよね!
騎士団員達も微笑ましそうに見つめている。
ヒューズの締まりない顔を横目で見ながら、これからの日常が非日常になりそうな予感に胸を躍らせた。
きっと、楽しくて大変で、幸せになるだろう。
そんな予感がした。
※だいぶお待たせいたしました。
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