【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第二章 王都編

王都観光(という名のデート) 2

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結局、ケーキを食べ損ねた。

楽しみにしてたのに。

でも、あの空気の中で美味しく食べられる気がしないから仕方ないかな。

「ゴメンね? アルカス、せっかく楽しみにしてたのに」
シュンとした耳と尻尾が見える。
俺は慌てて言い募った!
「クラビスは全然、全く、これっぽっちも悪くないんだからね! 全部あの子達がぶち壊したんだからね?!」

それに帰ってからゆっくり人目を気にせず食べられる方がいいし!

「それはそれ、これはこれ! もういいから、早く宝飾店に行こう! クラビスに似合うもの探さないと!」
「そうだな。アルカスに似合うものを探さないとな」
クスッと笑って、今度は宝飾店に向かった。

大通りから少し道を逸れた隠れ家的な感じのお店に着いた。

蔦が生い茂っていて薄暗い。看板もないんだけど・・・?

「・・・ここ? ぱっと見、お店に見えないね?」
「嫌だったか?」
「え、ううん。アンティークな感じがしていいけど、・・・ウン、ゴメンね? ちょっと、お化けが出そう・・・」
「いらっしゃい」
「ひええーーーっ!」
ビクッとしてクラビスにしがみついちゃった!

クラビスは一瞬唖然としたあと、笑いを堪えるように口を押さえて肩を震わせた。

いっそのこと笑え!

「いやごめん。アルカスにも苦手なものがあったんだと思ったら嬉しくて・・・」
「嬉しくない! 物理攻撃の効かないヤツが嫌いなの!」

今なら魔法でどうとでも出来そうだけど、地球ではそんなのないから、幽霊とかお化けとか苦手だった。

「まだ痴漢とか変態とかに襲われる方が物理で追い払える分よかったよ!」
「いや、それもよくないからな? 何だそれは。そんなに襲われてたのか?」
「え、うん。小っさいときから毎日のように。だからね、体鍛えて喧嘩だけは強くなったの」
クラビスがはあーっと息を吐き出す。
「・・・だから思ったより筋肉質だったんだ。動きもキレもいいから何か習ってたのかと」
「まあ、独学だけど、カンフーが出来る先生がたまたまいて、時間がある時に教えて貰ってた」
「カンフー?」
「外国の体術。拳法?」
「ふうん? 今度やって見せて?」
「おい」
「ん?」
「店に入るんか、入らんのか、ドッチじゃ?」
「あ」
忘れてた。

「ごめんなさい。入ります!」
呆れた様子の店主に声をかけられて来た目的を忘れてたよ。


店内は外観に似合わず、こざっぱりしていて綺麗だった。

「クラビスは久しいのう。そっちは初めましてじゃな? ワシはここの店主のミックじゃ。よろしくな」
60代半ばくらいの、白い顎髭のあるおじいさん。でもやっぱり俺よりデカくて逞しい。
「初めまして、アルカスと言います。・・・クラビスの知り合い?」
後半はクラビスに言ったんだけど、ミックさんが応えた。
「そうじゃの。クラビスが冒険者登録前からの付き合いかのう」
「へえ」
「色々素材を加工して貰ってるんだよ。腕はピカイチだからね」
「凄い! 格好いい! んじゃ、腕輪とかピアスとかってミックさんに作って貰うの?!」
クラビスが頷いた。

「何じゃ、婚姻の証か。クラ坊もそんな歳か・・・ん? もしかしてこの子か?!」
「そうですね」
「は・・・え、ああ! その瞳! フォレスター家の・・・! 見つかったんか! よかったなあ」

うんうん独りで頷いて、それから顔を上げた。

「よっしゃ。素材を出せ! 腕輪もピアスもとびきりのを作ってやるぞ!」

・・・なんか凄いやる気になってる。

「デザインはどうする?」
クラビスに聞かれたけど、色とか俺のはクラビスの色でクラビスには俺の色を使って欲しいくらいで・・・。
「クラビスに任せます。お互いが夫夫って分かればいいんで!」
丸投げ。ハハハ。

その後、異空間収納バッグからあれやこれや出してたけど、ちんぷんかんぷん。
最終的に、疲れて寝てしまった。

「アルカス、ごめん。ほっといちゃって」
「・・・うん? 終わったの? ごめんなさい、寝ちゃった。ミックさんもありがとう」
ショボショボしながら、お礼を言って店を後にした。
「大急ぎで作ってくれるって」
「大丈夫なの? 無理してない?」
「興が乗ったらしい。そのまま突っ走るそうだよ? 本人がやる気だから心配ない。出来たら連絡をくれるそうだよ」

そう言うなら仕方ないかな。

取りあえず、お腹空いたから屋台で何か買って食べようということになった。

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