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13 温もり
しおりを挟む※後半、凌辱を匂わす言葉が出ます。苦手な方、不快に思われる方は自衛をお願いします。
どうやら俺の言葉を噛み砕いて呑み込むのに必死な様子のアルト君。
年下だから君付け。ああ、でも呼び捨てでいいかな。
今のうちにおつまみを出しておこう。
「───取りあえず、えげつない部分は後にしよう。うん」
「あはは・・・じゃあ後は、何がヘン?」
「・・・それ、本気で言ってる?」
「うん」
キリッとした顔で言ってみたが、胡乱な目で見られた。
何故に?!
「はあ、あのね、称号って余程のことがないと付かないの。それなのに4個も付いてる。まだ26歳なんでしょ? 何をどうやったらこんなに付くんだ?」
えええ・・・。
だからそれがえげつないエルフなんだってば。
「でも、天涯孤独っていうのは分かってる。俺、今独りじゃん?」
これははっきりと言えるわ、ドヤ!
「・・・それ、胸張って言う事じゃないよね?」
ははは。
そうですね!
「精霊王って──」
「──それは精霊魔法コンプリートしたから?」
「・・・そうなんだ。生産王は……」
「たぶん物作りが好きで作りまくったから?」
「・・・へえ。じゃあ魔導王って──」
「──うーん、取得出来るだけ魔法を覚えまくったからだと思う」
「・・・はあ・・・」
聞かれたそばから返事を返すと、ぐったりしたアルトにシャンパンを勧める。
「ほらほら、美味しいうちにお酒もおつまみも食べようよ。俺、初めて飲むんだ。アルトと一緒で嬉しい!」
「・・・そうなんだ。うん、そうだね。楽しく飲もう。色々忘れて・・・」
色々にもの凄い含みを感じるが・・・。
取りあえず。
「かんぱーい」
ふふふ、誰かと一緒ってこんなに心が温かい。
向こうにいた頃も独りが多かったけど。
ここには誰も知り合いがいなくって、俺は本当の意味で孤独だった。
ネットもスマホもない。
気軽に連絡を取れるモノも無い。
人がいない。
寂しさを紛らわすように飲んで、どのくらい飲んだのか分からないほど・・・。
俺は酔い潰れて、いつの間にか優しい温もりに包まれていた。
「───はぁ・・・。初めてって言う割にはかなり飲んでたなあ」
酔い潰れて眠ってしまったカムイを抱き上げて一階のカムイの部屋に運ぶ。
見た目通りに軽いカムイは、力が抜けていても重さを感じさせない。
そっと下ろすと掛け布団をかけた。
生きているのか心配になるほど静かな呼吸で。
思わず口元に顔を寄せていた。
ちゅ。
カムイは起きない。
───これで26歳とか、見た目詐欺だろう。
口にしたお酒を思わず噴き出すほどに驚いたが、その後のステータスにも突っ込みどころ満載だった。
・・・えげつないってなんだ。
めちゃくちゃ気になるが他も片付けねばと聞けば、疑問形ながら説明が入った。
一応納得の体を取って、早々に諦めた。
持ち帰り案件だな。
去りがたくてさらさらな青銀の髪を梳いていると、カムイが不意に身じろいだ。
そして魘されるように顔を顰めて呟く。
「・・・痛い・・・・・・止めて・・・やだっ・・・いや・・・助け・・・・・・」
「・・・カムイ?」
「いたい・・・いれないで・・・いや、くるし・・・・・・も、やめ・・・・・・っ死なせて・・・・・・っ」
「ッカムイ!!」
「───っ?!」
思わず体を揺すって起こしたら、ハッとしてカムイが目覚めた。
酷く怯えている。
だが、その目は虚ろでアルトを見ていない。
アルトの後ろに別の誰かを見ているようだった。
「───や、離して!! 帰りたい! 死にたい! 死なせて!!」
「カムイ!」
腕を振り上げて暴れるカムイ。
怪我をさせたくなくて手首を掴んで拘束する。
カムイの細い腕はアルトが軽く掴んでいるだけなのに直ぐに動かなくなった。
───これくらいの力で無力化される程か弱いのか・・・。
こんなんじゃ、あっと言う間に捕まって奴隷にされてしまう。
「俺、なんで生きてるの・・・・・・っいやだ! 触んなって・・・死なせて!! 俺をっ今すぐ、殺して・・・なんで、誰か、助けて・・・・・・誰か俺を殺して・・・・・・!」
「『眠れ』・・・・・・カムイ、ごめんね」
「───? ぁ・・・る、と?」
「おやすみ」
錯乱して暴れるカムイを止めるために、強制的に魔法で眠らせた。
効くかどうか心配だったが、精神が弱っていたんだろう。
レジストされずに済んでホッとした。
酷い汗と涙で張り付いた髪を避けて額に口づけると浄化魔法で綺麗にする。
「───カムイの失った記憶、か?」
眠りに落ちる直前、俺を認識したようだったが、それまでの錯乱具合が酷い。
「殺してくれ・・・か」
『触るな、痛い、死にたい、殺して・・・』
悲痛な叫び・・・。
「虐待や性的暴行を受けた者がソレを思い出すたび、ああいった精神状態で暴れたり怯えたりしていたが・・・」
まさか、それで記憶を封じたのか・・・?
もしカムイが奴隷にはなっていなくても秘密裏に囲われて凌辱されていたら、周りは徹底的に隠すだろう。
森人の奴隷化や凌辱は大陸中で極刑に処される犯罪行為なのだから。
「───確認のしようがないか・・・父さんに聞いてみよう」
独りごちてふと見ると、カムイがアルトの服をぎゅっと掴んでいた。
ひとまず今は手を離して貰えそうもないので、カムイと一緒にここで寝させて貰おう。
朝、不安にならないように・・・・・・。
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