15 / 42
15 結界の外は下界と呼んでます
しおりを挟む朝食を食べ終えたので、魔法でちゃっちゃと綺麗にし、アルトを誘って外へ出た。
「そう言えば、アルトの用事って? やることあるなら俺に構わず済ませてきて良いよ?」
「ああいや、世界樹の点検みたいなもんで・・・」
「・・・なるほど? アレか、結界がちゃんとしてるかとかヘンなのがいないかとか・・・・・・ん?」
アルトを見る。
目を逸らされた。
「・・・・・・」
無言を貫くアルト。
「ヘンなのが、いるねぇ・・・俺がいるねぇ?」
「・・・・・・」
「ねえ、そういうことなんでしょ? 急に俺が涌いたから調査をしに来たんでしょ?」
詰め寄って聞くが、無言は肯定と取りますよ!
「・・・・・・はー。別に気にしなくても良いのに。どうせここから出る気はないし? たまにアルトが遊びに来てくれれば寂しくないし・・・」
奴隷なんて聞いちゃったから怖くて出られないよ。
「下界に行かなくても生きていける」
「───下界って・・・」
「・・・・・・最初はさ、ここに慣れたら人のいる場所を探して旅をしようと思ってたんだ。けど、昨日アルトが言ってたじゃん、ハイエルフは特にヤバいって。怖い目に遭いたくないし。だからもうずっとココにいてもいいかなって」
「・・・・・・カムイ」
「あっ、でもここじゃ駄目っていうなら、家ごと引っ越すから言って? そこで自前の結界張って引き籠もるから」
「カムイ」
「だからそっちでも遊びに来て欲しいかな」
「───カムイ、大丈夫・・・・・・ここに住んでても良いんだ。寧ろ安全だからここに住んで!」
アルトが俺の目を見て言った。
逸らされなかった。
「・・・・・・でも、アルトの一存じゃ決められないでしょ。多分だけど、アルトって騎士で、今回の任務を任されただけでしょ? 上に報告して、上の判断を仰がなくちゃいけない立場でしょ?」
「・・・・・・っぐ、その通りだ」
悔やしそうな顔だな。
そんな顔も格好いいぞ!
じゃなくて。
「その上司とはどうやって連絡を取るの? 帰ってから?」
「・・・・・・いや、この腕輪が通信機能付きなんだ。・・・ああクソ、こんなに早くバレるとは思わなかった!」
「はっはっは。人を疑うことに関しては玄人かも知れない」
両親死んでから、お金諸々の悪意は嫌というほど経験済みだからな。
なんせ、小学3年からだからな。
年季が違う。
だからそんなに哀しそうな顔をしないの。
耳がへたってるぞ、可愛いけど。
またヘンな勘違いしてるのか?
訂正しないけどな!
藪蛇、駄目、絶対!!!
「・・・・・・次に連絡するとき、話してみる?」
「!! 面白そう。良いのか?!」
「ああ、好きに話すと良い。夕方ごろ通信する予定だ」
「じゃあそれまで外で少し探索しよう。薄暗いから独りだと怖くていけなかったんだよね」
ラッキーとはしゃいでるカムイを見る。
楽しそうだ。
───どうやら昨夜の悪夢は覚えてないようで安心した。
父さんは調べてみると言っていたが、直ぐには分からないだろう。
せめてもう少しカムイから情報を得られないかな。
でも、もし本当に凄惨な記憶を自ら封じたのだとしたら、それを掘り起こしてまで聞きたくはない。
「・・・・・・見極めが難しいな」
昨夜のはおそらく、酒のせいだろう。
前後不覚になってしまって奥底の記憶が表面に出て来た・・・と。
「あんな悲痛な叫びは聞きたくないな」
ふと顔を上げると、少し先で手を振って呼んでいるカムイがいた。
「早く行こうぜ! 俺、行きたかった場所があるんだ!」
「・・・ああ、分かった。今行く」
彼の嬉しそうな笑顔をこれからもずっと見ていたい・・・。
146
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に巻き込まれた料理人の話
ミミナガ
BL
神子として異世界に召喚された高校生⋯に巻き込まれてしまった29歳料理人の俺。
魔力が全てのこの世界で魔力0の俺は蔑みの対象だったが、皆の胃袋を掴んだ途端に態度が激変。
そして魔王討伐の旅に調理担当として同行することになってしまった。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています
水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。
一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。
前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。
これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる