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39 神様の願い 2
しおりを挟む《・・・すまぬ。カムイばかりに辛い思いをさせて・・・》
そう声が響いた。
アルトは思わず天を仰いだ。
この威厳のある声音は・・・。
「アスガルド神様・・・?」
《そうだ。詳しい話は後にしよう。まずは、カムイの心を護らねば》
そういったアスガルド神は、おそらく神力を使ったのだろう。
カムイの体が淡く光って暫くして消えると、体の強ばりが解けたのか、静かな寝息になった。
《さて、番いとなるアイントラハトには伝えておこう・・・》
「・・・はい」
《カムイはの、6年前、とある人族の国での禁忌の召喚魔法に巻き込まれて転移した高位森人でな、その場で隷属の首輪で性奴隷にされて・・・語るのも悍ましい目にあわされ続けて心が壊れてしまったのだ・・・》
「・・・・・・やはりそうでしたか・・・」
アルトは悲痛の面持ちで聞いていた。
《過干渉になるため、我は手が出せなかった。彼の契約精霊のうちの火と風を探し出し、彼等に頼んで助け出すのに6年・・・。ようやく世界樹まで連れ出せたので、我の力でカムイを6年前の召喚の時まで戻したのだ。記憶と共にな》
「・・・・・・それで記憶が無いのですね?」
《ああ、だが魂は傷付き、そこに刻まれた記憶は残った。それが時々不安定になって表に現れるのだ。目覚めて忘れているのは自覚が無いせいだ》
なるほど、精神的に不安定な状態だと浮かび上がってくるのか。
《アイントラハト、お前がしっかりついてやってくれるとカムイは落ち着いて過ごせる。だからの、出来るだけカムイと一緒にいて欲しいのだ。無理強いはしないが・・・・・・出来ることならば死が2人を別つまで、カムイと生きて欲しい・・・・・・カムイは我の愛し子だから》
「分かりました。大丈夫です。俺はカムイを愛していますから」
《・・・・・・そういってくれると嬉しいよ。カムイを・・・よろしく頼む》
そういって声と気配は消えた。
「---アルト・・・?」
マリアがそっと声をかける。
どうやら先ほどのアスガルド神の声はアルトにだけ聞こえていたようだ。
先ほどのやり取りもアルトが独り言を呟いているように見えていたらしい。
「うん、大丈夫。アスガルド神からのお言葉だ。父さん達が帰ってきたら詳しく話すよ」
「・・・そう。じゃあゆっくり話せるように色々と準備をしなくっちゃね」
そういって気丈に動き出した。
カムイは静かに眠っている。
アルトは突然転移してしまって驚いているだろう騎士団長に腕輪で通信をする。
「・・・騎士団長、すみません。アルトです」
〔---アルト、無事か? 急に消えたというから驚いたぞ。もしかしてジェイド絡みか?〕
やや焦った声で父さんが出た。
やはり心配をかけたようだ。
「はい、どうやら精神的に不安定になってしまって意識を失ったようで・・・今は落ち着いて眠っています」
〔・・・・・・そうか、良かった。じゃあ今はジェイドの部屋に?〕
「はい」
〔・・・ではこちらで処理をしておくから、お前はそのまま家に居なさい。ジェイドを頼む〕
「分かりました。・・・あの、帰ってきたら話があります。・・・・・・アスガルド神からの・・・」
〔---っ分かった。なるべく早く戻ろう。フレッド達にも伝えておく〕
「よろしくお願いします」
通信を切った後、自室で着替えてからカムイのベッドの脇に椅子を持って行き、用意した紙にペンを走らせた。
先ほどのアスガルド神の言葉を書き留めていく。
それはカムイが目覚めるまで、続いた。
およそ1時間ほどして目覚めたカムイは当然のように暗い記憶を忘れていて、アルトはホッとしたのだった。
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