男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
5 / 62

4 幻獣との出会い

しおりを挟む

アレから鬱蒼とした森の中を、食べられそうな果物なんかを手に入れつつ歩いて数日後。

この森は【暗き森】という、そのまんまの名前で笑った。

アシェルの住んでいたであろう王都のタウンハウスから北に位置するそこそこ深くて魔物が多い森だ。

ウェイバー侯爵領は王都からもっと南にあるが、何か用があって王都にいたらしい。

なんで分かるかって?
マップさんがウェイバー侯爵領を示して鑑定さんが説明してくれたから。

なにこの親切設定。
痒いところに手が届くってヤツ?

で、思ったわけ。
アレかな?
小説だと学園入学とか?
ソレで王都にいる間に狙われたのかな?
・・・って。

たぶんだけど、おおよそあってると思うな。

心底どうでもいいけど。

ただ、が生きてるって分かって追っ手がかかるのもイヤだし、助かっても知らない家族の元に連れ戻されてあーだこーだ気を遣いたくないし。

いやだってもう、ほんっと記憶ないもん。
赤の他人と同じよ。

だからとにかく、離れたい。
俺はもう別人なんだから、ほっといて欲しい。


そんな事を思いながら森をあと少しで抜けるって時に、目の前にが現れた。

「キョエー!!」

そう叫んだヤツは、今の俺より小さい、鷲の頭に獅子の身体で鷲の翼を持った【グリフォン】だった。

見た目、俺の前世の知識と同じ容姿だし、鑑定さんもそう言ってた。

「・・・キョ○ちゃん?」

俺は思わず鳴き声と嘴から何となくそう呟いた。

ソレを馬鹿にされたと思ったのか飛びかかってきたソイツに、思わず反射的に回し蹴りをおみまいしてしまった。

「あ、やべ」

思ったよりもガッツリ決まったらしく、横に吹き飛んだグリフォン(小)は大木の幹に頭からめり込んだ。
その後、ピクリともしない。

「・・・しまった。おーい・・・無事か?」

尻尾を握って引っ張って幹から抜くと、何かぱあっと魔法陣のようなモノが現れて光った。

思わず鑑定さーんと思えば、【セッカの従魔・グリフォン(瀕死)】と出て・・・。

「───はああっ?!」

どっからツッコめばいいやらな情報満載だったが、ひとまず人助けならぬ従魔助けをせねば、と慌てて途中で狩った魔物の肉を取り出し、時間短縮で火魔法でレアに焼いて皿に盛ってやった。

匂いに反応したのか、ピクッとしたあとのグリフォン(小)のがっつきっぷりが凄くて、思わず追加で何度か肉を焼いてやったら満足いくまで食べていた。

『───美味かった!』
「ソレは良かった」
『・・・ん?』
「ん?」

一人と一頭は同じ向きに首を傾げた。

『・・・何故、我の言葉が分かる』
従魔契約テイムしたから?」

───でいいんだよな、鑑定さん?
・・・ウン、確かにステータスに追加されてる。
間違いない。

『・・・・・・従魔契約・・・・・・だと? 誰が? 誰を?』
「俺が、お前を」
『・・・・・・・・・・・・のわあぁ───っ?! な、何故だ?! 何故人間なんて矮小な輩と従魔契約なぞ───?!』
「・・・・・・うん、矮小なのは認めるけどね。従魔契約も何でか分かんないけどさ。別に俺はお前なんか求めてないし、解除しても良いよな?」
『───は? 良いのか?』

俺の言葉を聞いてグリフォンが唖然とした。

「別に良いよ。幻獣なんてバレたら面倒そうだし。お前も嫌でしょ?」
『・・・・・・そりゃ、いきなり従魔なんて、十分プライドも何も・・・・・・』
「うん、じゃあ契約解じょ」
『まてまてまて! お前、本当に良いのか?! 幻獣だぞ! 滅多にないことなんだぞ?! 偶然とはいえ凄いことなんだぞ!!』

それに俺は首を傾げた。

「面倒事は勘弁なんで」
『うおおおおい、即決だな! 分かった。分かったから』
「じゃあ、解」
『だから待てと言ってるだろうが!! はそういう意味じゃない!』
「・・・えー、面倒・・・」
『・・・・・・面倒、じゃ無い!! ったく。このまま従魔契約で良いという意味だ! ボケッ!』
「・・・・・・・・・・・・解除」
『すんなって言ってんだろーがぁ!!』

ぎゃいぎゃい喚くグリフォンに、しまいには耳を塞いで半目でうんざりするセッカ。

結局、根負けしたセッカがグリフォンに名付けをして正式な従魔契約を結ぶと、幻獣についてのリスクを考え、便利な創造魔法で従魔の証を作り、認識阻害の魔法を付与して大きな鷲の魔物に擬態した。

普段は小型化してもらう。

ソレから、セッカの事情も説明する。

『・・・・・・なるほど、過去の記憶が無いのだな。ソレでもしかしたら命を狙われているかも、と。うむ、分かった。我も気を配ろう。その代わりと言ってはなんだが、お前の作った飯、美味かったからまた作ってくれ!』
「・・・・・・構わないけど、そんなんで良いの?」

・・・・・・幻獣なのに?

『うむ。今まで1000年くらい生きてるが、あんなに美味いのは初めてだった! 何時も生肉を貪り食っていたのでな!』
「・・・・・・そうなんだ。せんねん・・・・・・長生きだね。まあ、俺も生肉は食えないからついでだし、分かった。じゃあコレからよろしく琥珀コハク
『おう、よろしくな、雪花セッカ
「───ところで、何であんなに弱ってたんだ?」

セッカが疑問に思っていたことをついでに、とばかりに聞いてみたら、すいっと目を逸らされた。

・・・オイ。

『・・・うっ・・・・・・ついうたた寝したらいつの間にか300年くらい経ってて・・・・・・さっき目覚めたばかりで腹が減りすぎてて・・・』
「───馬鹿?」

呆れたセッカにジト目でそう言われて、コハクは返す言葉も無くセッカの肩にしょぼんと丸くなってしがみ付いた。

コレが俺達の出会いだった。





それからは色んな街や村を転々としながら、レベルを上げ、冒険者ランクを上げて北へ北へと旅を続けていた。


───そんなある日、あの魔物大発生スタンピードに出くわしたんだ。







※別の話の幻獣を思いだした方・・・全ての幻獣がこんなんではありません。
単に作者の趣味です。
初めての方はご注意ください。
シリアスは長くは続きません。

ストックがある内は予約で連投します。
切れたら不定期になります。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...