男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
7 / 62

6 ルゥルゥとの出会い 1

しおりを挟む
※回想ですが、やっと攻めがでました。前半セッカ、後半ロルフ達の視点。




「おーい、その子があの従魔のご主人様か」

焚き火を囲んでいた冒険者達の一人が片手を上げて声をかけてきた。

「ああ。川岸で倒れていた。どうやら流されてきたようだ」
「ソレは・・・心配ですね。体調はどうですか?」

ルゥルゥが返事をすると、小綺麗な身形の30代後半の商会長らしき人が駆け寄ってきた。
商隊の幌馬車の方にも数人見える。
商会の従業員だろうか。

「・・・ありがとうございます。今のところは大丈夫です。ご迷惑をおかけして・・・」
「とんでもない! まあ最初に貴方の従魔が来たときは驚いて警戒をしましたが・・・」
「ああ。デカかったもんな! さすがにすわ魔物の襲撃かと剣を抜いちまって・・・悪かったな」
『我も慌てていて、小さくなるのを忘れていた。スマン』
「あの、コハクもスミマセンって。慌てていたからあのサイズで翔んできたらしくて・・・。普段はこのサイズなので・・・」

そう言うと、小型化してセッカのお腹に座った。

「それでソマリ殿。彼を一晩ココに泊めても良いですか? 雇い主の貴方の返答次第では俺が離れて介抱するので」
「え、いや、コハクがいるので、隅に場所をお借りできれば別に・・・」
「そんな事!! 気にしないので一緒に泊まって下さい! 護衛の皆さんもよろしいですよね?」
「もちろん」
「ソマリ殿とロルフが良いなら構わねえぜ」
「そういう訳だから、気にするな」
「・・・・・・ありがとうございます。御世話になります。俺はセッカといいます。冒険者です。ルゥルゥ、これ俺のギルドカード・・・」

そう言ってマジックバッグと見せかけてインベントリからギルドカードを取り出して皆に見えるように掲げた。

何故かポカンとする冒険者達と頬を染めるソマリ殿に首を傾げるセッカ。

「ああ、Aランクなんだ。凄いな。俺達と同じだな」

ニコッと笑ってそう言うルゥルゥに更に目を剥く冒険者二人とニコニコ顔のソマリに訳が分からないセッカ。

「───あの、俺、本当にお邪魔じゃ・・・?」
「・・・・・・いや、スマン。何でもない。ウン、大丈夫。俺はダートだ」
「・・・おう、よろしくな。俺はスレッドだ」
「私は商会長のソマリです。仕入れの帰りで、フォルセオに戻る途中だったんです。彼等は三人ともAランク冒険者で護衛を依頼してます。もう何度も御世話になっているので安心ですよ」

そう優しく教えてくれるソマリにホッとするセッカ。

「そうなんですね。あの、じゃあルゥルゥ、降ろして貰っても? ていうか皆さん、今更ですがこんな格好でスミマセン」

若干赤くなった顔を隠すように俯いてもじもじするセッカをぎゅっと抱き直して、ロルフは自分の席だったらしい焚き火の場所に移動すると、丸太の上にセッカを降ろした。

夕飯はすでに済んでいるというルゥルゥ達に断って、マジックバッグという名のインベントリからストックしておいたスープを出して飲む。
コハクには肉をたくさん出してやった。

どうも疲れからか、食欲がない。

何とか一杯飲むと、ルゥルゥに断って横になろうとした。
それを制して、ルゥルゥが自分のテントに連れて行って寝かせると、やはり疲労していたようで、ストンと眠りに落ちた。

その後のルゥルゥ達の会話は知る由もない。
いや、コハクは聞いていたがセッカ以外に関心がないのでうとうとしながら聞き流していたのだが。



「───で? 一体どうしたんだよ?」

ロルフがテントから出ると、開口一番、ダートがそう言った。

それを無表情で受け止めるロルフ。
セッカとの態度の落差が有り過ぎた。

「どうって?」
「・・・・・・あのなあ、お前とどんだけ長くつるんでると思ってんだよ。何だよ、あのあからさまな態度。キモッ!」
「ダート、言い過ぎ。でもまあ、キモいまではいかないが俺も思った。なんせ愛称で呼ばせてるんだもんな。・・・・・・初対面なんだよな?」

スレッドの応えにロルフは是とも否とも応えない。
───ソレが答えだ。

「・・・・・・まあ、あの子は完全に初対面な感じだったけどな。・・・普段のお前からは想像もつかんくらいの笑顔で怖かったぜ」
「失礼な」
「だってお前が笑うのって自分より強そうなヤツと対峙する時か魔物討伐の時くらいじゃん。魔王の微笑みって二つ名で言われてるヤツ。俺、天変地異の前触れかと思ったわ」
「ホント、何あの満面の笑み! ウケる!」

半分面白がって揶揄う二人にソマリがまあまあ、と間に入る。

「良いじゃないですか。やっとロルフさんにも春が来たって事でしょ? 見守ってあげましょう」
「いやいや、ロルフのアレはちょっと異常だって」
「ヤバいヤツだよな。あの子、大丈夫かな?」
「お前ら煩い」

ロルフが相変わらずの無表情でボソッと言うと三人はセッカを起こさないように静かに笑った。

そしてほのぼのと呑気に笑うソマリを他の従業員がいる馬車に寝かせて、ダート達も不寝番に入る。

「ロルフは今夜は彼に付いててやれよ。明日には街に着くし、俺ら二人は多少長く不寝番しても問題ないぜ」

そう言うダートに少し考えてから一つ頷くとテントに向かった。

「───貸しひとつなー」

ロルフはソレに片手を上げて応えて、テントに消えた。






※商隊といいつつ、馬車は二台で付いてきている従業員は4人だけという・・・どこが商隊なん?とツッコまないで下さい。
荷物はマジックバッグに入ってます。

しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

処理中です...