男前で何が悪い!

エウラ

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※やっと回想終わった!


夕御飯を済ませて片付けを終えると、辺りは静寂に包まれた。

セッカは小型化したコハクと共にテントに入る。

本来は不寝番をしたり魔物避けの魔導具を設置するのだが、ウチはコハクの気配でよほどの魔物とかじゃないと近付いてこない。

それに加えてセッカの結界魔法でガッツリ囲ってあるので不法侵入は絶対に出来ない。

これは主に魔物というよりはオメガの自衛としてだ。
元がアルファとはいえ、やはりオメガになってから筋力は落ちたんだと思う。
体重も増えないし、筋肉も付きにくくなり、頑張って鍛えて現状維持をしている感じだ。

・・・もっとも鍛えるのは前世からの趣味だったので苦ではないのだが。

万が一襲われても魔法チートで撃退出来るだろうが、まずは襲われないことが最善だと思うから。

ロルフのように、同意の下、紳士的に扱って抱いてくれる方が珍しいのだ。

「・・・そういえばルゥルゥとは最初っから嫌悪感とか無かったな・・・」

───ロルフに魔力譲渡で抱かれてから一ヶ月後くらいに、今世で初めてヒートになった。

手持ちの抑制剤を飲んだが思ったような効果が無く、一人、部屋で結界魔法を張って堪えていた。
そんな時、ロルフが依頼を終えて戻ってきてセッカのフェロモンに気付き、何とか意識のあったセッカが部屋に入れて、合意の上で避妊して抱いて貰ったのだ。

セッカはあれからロルフの定宿でちょうど空いていた隣の部屋を長期で借りていたので、ロルフもすぐに気付いたんだそう。

ソレからは3ケ月毎にきっちりヒートが来るようになって、もう、ロルフ無しじゃ辛い生活になっていて・・・。

───これ以上、ロルフに依存しちゃいけない・・・。
そう思うも・・・。

「・・・後天性のせいなのか、抑制剤が効かないっていうのはキツいな」

結局、ヒートが近くなるとそれに気付いたロルフがちゃんと避妊をして抱いてくれるようになって。
───まあ、それ以外の日にも抱かれてるけど。
セフレってヤツだよなあ。

そう考えるとちょっと胸がチクリとするから、考えないようにしてる。

「───ソレだけが気がかりなんだよなぁ・・・」

ソレがココに未だに留まっている一番の理由だった。

「・・・・・・ちょっと、リハビリがてら長期で遠出の依頼を受ける数を増やすか・・・」

明日、ギルドでその辺りの依頼を漁ってみよう。
出来れば一人でも受けられるモノを・・・。

そう考えながら眠りに落ちた。


翌日、フォルセオの街に戻ったセッカはその足で冒険者ギルドに向かった。

依頼掲示板クエストボードに向かうと、手頃な依頼が無いか目を通す。

「───うーん・・・これ・・・ココから東の村の魔獣討伐・・・片道二日・・・魔獣は現地で確認、か」
『魔獣の種類や数は分からんのか?』
「ああ、そうみたいだ。行ってから現地で確認しろって。どうだコハク、片道二日なら良いんじゃないか?」
『そうだな・・・魔獣の数にもよるが行き帰りを含めて7日見ておけば余裕があるだろう』
「じゃあ、決まりだな」

コハクと話ながら依頼票を取って受付窓口に移動する。

「この依頼の受注を頼む。あと、この村の情報とかあれば知りたいんだが・・・」

セッカはすっかり顔馴染みになった受付の職員に声をかけてみる。

「───はい、承ります。ああ・・・この村は依頼票の通り、片道二日かかるのでついさっき貼り出したモノです。なので実際の被害は二日より前になりますね。・・・生憎と村の方は依頼の受理を確認して少し前に戻ってしまいまして・・・」
「───そうか、じゃあ仕方がない。でもそれなら早い方が良いな。これから準備をして向かうよ。ありがとう」
「どういたしまして。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

無事に受理されたのを確認して宿に戻ると、宿主に声をかける。

「親父さん、依頼で部屋を数日空けるんだけど、そのまま借りておける? 宿代は前払いするから」

それを聞いた宿主が目を瞠る。
そういえばずっと近場の依頼ばかりで精々が一泊か二泊くらいの留守だったな。

「え? 珍しいね。構わないけどどれくらい留守にするんだい?」
「片道二日で討伐にどのくらいかかるか行ってみないと分からないんだ。予定では最長7日ってところかな? 延びたら帰ってきたときに料金払うよ」

宿の迷惑になっちゃうから、そこはしっかりしておかないと。

「そんなの気にしなくて良いから、怪我をしないようにね。ああそうだ、ロルフさんには?」
「あー、今は依頼でいないみたいだから、後で親父さんから言っておいてくれると助かる」

一応言っておかないと心配するだろうし。
まあそこは宿主に任せた。

「分かった、言っておくよ。セッカさんもくれぐれも気を付けて」
「ああ、ありがとう。じゃあ支度が出来次第発つから、よろしく」

そう言って部屋を片付けると足早に出かけていった。

「───ロルフさん、大丈夫かなぁ・・・」

宿主の親父さんが意味深に呟いたが、誰の耳にも入らなかった・・・。









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