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24 情報の擦り合わせって大事 2
しおりを挟む「───やっぱり俺とルゥルゥって、9年前に会ってるんだ?」
そう聞き返したら、ロルフは気まずそうに目を逸らした。
「・・・・・・ああ。だが一年前に会ったときセッカは覚えていないようだったから、確信が持てなくて言わなかった。髪の色も違ってたし、何よりオメガだったから」
「───ああ、確かに。ソレにあの時にそう言われても、逆に警戒して離れてったかも」
そう言ったらロルフは顔を青ざめさせた。
「・・・い、言わなくて良かった。あそこで逃げられたら、監き」
「オイコラ!! 物騒だな!!」
危ねえストーカーだな、おい!
俺、良く無事だったな。
今回、セフレなんて勘違いを解いておかなかったら絶対逃げてた。
そうしたら監禁まっしぐらだったって事かよ・・・怖え。
セッカの引きっぷりに気付いたロルフはハッとして咳払いをした。
「───ゴホン。ええと、出来たらこの後、俺と一緒に辺境伯邸へ行って辺境伯殿に会って貰いたい。そこで全部話す。・・・さっき、話せることは話そうって俺から言っておいてアレだが、ここではちょっと無理なんだ」
「ああうん、いや別に、気にはしねえよ? でも辺境伯って・・・ルゥルゥって、実はもしかしてめちゃくちゃエラい身分の人だったりする?」
セッカが気にした風でもなく笑って軽い気持ちで聞いてみたが・・・。
「───ああ・・・セッカには隠したくないから先にコレだけは言うが、他言無用で頼む。俺は正式にはロルファングという。ロルファング・ルル・エーデルシュタイン」
そう真剣な顔で告げたロルフ。
セッカは笑顔のままピシッと固まった。
───エーデルシュタイン・・・って、大森林の向こうの獣人の王が治める国の名前、だったよな?
セッカは固まったまま、だらだらと冷や汗を流した。
「・・・エーデルシュタイン・・・って、獣人の国の、王族の・・・?」
国の名前が入ってるって時点でもうアレなんだが・・・。
せめて王族に近しいだけの人物であって欲しいなーなんて願いは、ロルフの言葉で木っ端微塵に砕け散った。
「第三王子だ」
「・・・・・・はあああ───っ?! マジかよ?!」
『我は気付いてたぞ?』
「・・・はあ?! 何で?! どうして冒険者なんかになってんの?! そもそも何でこの国にいるんだよ?! てか、コハク知ってたんかいっ?!」
そんな大層な身分のヤツと何時どうやって知り合ったんだよ、アシェル───!!
セッカは思わず両手で頭を抱えた。
「スマン。その辺も辺境伯邸に戻ったら詳しく話すから・・・取りあえず行ってくれるか?」
申し訳なさそうにそう言うとロルフはセッカを抱き込んで頭を押さえているセッカの手の甲にちゅっちゅと口付けを落とす。
セッカは恥ずかしくなって、顔を上げないまま頷いた。
「・・・・・・うん。取りあえず動けるようになったらギルドに・・・。アレ、そういえばあの村の討伐の報告は・・・」
「ああ、俺が説明して手続きをやっといた。完了で受理されて、報酬もセッカのギルドカードに入金されているはずだから確認して」
「ああ、ありがとう」
ホッとしたらうとうとと眠くなったセッカ。
どちらかというと精神的な疲れだろう。
「少し休んでて。辺境伯邸に向かう準備をダート達としておくから」
「・・・そういえば、ダート達はルゥルゥの本当の身分を知ってるのか?」
「ああ知ってる。あの二人は辺境伯と自国から付けられた俺の護衛兼監視みたいなもんだけど、10年以上の付き合いで気の置けない友人だよ。普段はただの冒険者仲間だ。・・・あの二人にもセッカの事情を話すが、良いか?」
「そういう関係なら、良い。ルゥの判断に任せる。でも・・・そっか、なら・・・二人にも気を張らなくて・・・良さそう・・・・・・良かっ・・・」
ロルフの言葉に安心したのか、呟きながら寝落ちたセッカを横にして掛布を肩まで上げて寝かせる。
「───じゃあコハク、セッカを頼む」
『任せろ』
「俺はダート達と色々とやることがあるから少し離れる」
『うむ。ああそうだ、お前とも念話を繋げたから、セッカを介さずとも何時でも声をかけて良いぞ。・・・・・・お前は此奴の番いだからな』
「───!! そうか。ありがとう、コハク」
ロルフはセッカの幻獣にも認められて、ウキウキしながら部屋をあとにした。
「───というわけでセッカの体力が回復次第、辺境伯邸に向かうので、諸々の準備を頼む」
セッカの事情を話してそう告げると、ダート達は驚きつつも納得した。
「ソレは構わねえけど。まさかセッカがあの時のアシェルだったとはねえ・・・。あの時、結局遺体は見つからなかったもんなぁ。・・・しかし記憶が・・・そうか・・・」
「全くだよ。全然気付かなかった。だって髪色は違うし片目隠してて、顔もよく分からなかったし?」
「そもそもアルファだったじゃねえか、なあ?」
ダートが確認のようにスレッドに声をかけた。
ソレに頷くスレッド。
「そうだよ。だからロルフがアシェル以外の子に愛称で呼ばせてあんなに露骨にアプローチしててビックリしたんだよ。漸く、アシェルを吹っ切って新しい恋をしたんだと思ってさあ・・・」
「───俺が諦めるはずないだろう?」
「そりゃそうか。ロルフって狼人族の中でも人一倍粘着質だったもんな」
「ある意味、ここで捕まえて良かったって言えば良いのか?」
「・・・・・・ソレは良かったと本気で思ってる。そもそもセッカは俺のことセフレ認識だったみたいだし・・・」
「「───はああっ?!」」
「本人にそう言われた。そんな風に思われてたなんて全然気付かなかった。逃げられかけて危うく監禁するところだった」
「───お前・・・・・・真顔で言うなよ! ぜってー有言実行する気だったろ?!」
「怖えよ! うわぁ・・・セッカ・・・・・・マジヤバかったんだな・・・。良かったな、諦めてくっ付いてくれて・・・」
ダートとスレッドは顔を見合わせて、深い溜息を吐くのだった・・・・・・。
※ちょっと時間が無くて、書ける話をポツポツと・・・。他の作品が停滞中です。スミマセン。
応援ありがとうございます!
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