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27 戦略的撤退も有り
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※ちょっと不快な言い回しが出ますのでご注意下さい。
(セッカの台詞ですが、ちょっと下品です)
執事のマーカスはセッカ達を客間に通すと、従者を一人紹介した。
「この者はセッカ殿を御世話させて頂きます、パンテルと申します。何かあれば遠慮なく何なりとお申し付け下さい。セッカ殿は賓客で御座いますので」
「・・・ありがとうございます。じゃあ、湯を使いたいのですが」
「セッカ殿、我等に敬語は不要で御座います」
にっこり笑っているが有無を言わせない圧をマーカスから感じてセッカは折れた。
「・・・分かった。じゃあ、湯浴みを頼む」
「畏まりました。お湯は一日中沸いております。この辺りは温泉が出ますので。ではパンテル、頼んだぞ」
「・・・はい」
「温泉! あるんだ。やった、(今世では)初めてだ!!」
「それはよう御座いました。ごゆるりとなさって下さいませ」
そう言って部屋を出るマーカスを見送り、さてとりあえず、ひとっ風呂浴びてさっぱりするか、と浴室を覗いていると、後ろの方で舌打ちが聞こえた。
何を隠そう、パンテルである。
セッカにも聞こえるようにワザと大きな音を出したのだろう。
だがセッカが聞こえないふりで無視していると湯上がり用の着替えを取りに出て行ったようだ。
「───俺が気に入らねえのは分かるけどよ。仕事中は私情を挟んじゃダメだろ」
『アレはどうやらお前に敵意を持っているようだな。嫉妬・・・か?』
「・・・まあ、ルゥルゥモテるだろうしなぁ。・・・どうすっかな・・・。面倒くせえ・・・」
『なら、逃げるか?』
「───ルゥルゥに、もう逃げないって言っちゃったんだけど・・・」
『言い方が悪かったな。少し距離を置くか、という意味だ』
「うーん・・・アレの出方次第だな」
そう言って脱いだ服やら荷物やらを全部インベントリにしまうと、タオルを持って浴室に向かった。
───無造作にマジックバッグを脱衣所に置いて・・・。
「───ふひい───。あ”ー、生き返る・・・」
源泉掛け流しの広い浴槽に浸かって何処ぞのオヤジのような台詞を吐くセッカに呆れた様子のコハク。
『・・・お前は、年の割に爺臭いな・・・』
「いーじゃん、別に。はああ・・・命の洗濯・・・心が洗われて生き返るってこういうことなんだよ・・・」
セッカの言葉に何だそれは?という顔をするが、脱衣所の気配に気付いてセッカと顔を見合わせる。
お互い、無言で、念話での会話に切り替える。
『───何やらやっておるの』
『俺のマジックバッグを漁ってる』
ワザとらしく置いといたダミーのマジックバッグだ。
まさかとは思ったが、マジかよ。
『・・・中身は?』
『どうでも良いモンばっか。・・・あ、でも一個だけ、加工してネックレスにしてあった魔石が入ってる。そこそこの大きさで質も良いからせっかくだし、と細工して貰って・・・ついでに魔法付与もしてあるから、結構良い値がつくぜ』
『・・・・・・良いのか?』
『別に、思い入れがあるモンでも無いし。それに俺がやった魔法付与だから魔力で何時でも探せるし、ルゥルゥも気付くだろう』
さらっと言う俺に思案した後、コハクが面白そうな声で言った。
『・・・・・・嵌めたな?』
『人聞きの悪い・・・。もしもの時のための布陣って大事だろ?』
『当然だな』
そう話して、二人でニヤリと笑う。
そうして気配が消えた頃、何も気付かなかったですって顔で風呂を出て、用意された服に着替えようとして───。
「・・・・・・馬鹿にしてんのか?」
『───我は人の常識には疎いが・・・。ソレは主に男娼が身に着けるような衣装ではないか?』
「・・・・・・どっから用意してきたのか知らんが、俺に喧嘩売ってんのか? 誰にでも股を開く下半身の緩いオメガだとか、身体で籠絡したとか誑かしたとか言いたいわけか」
ペラリと広げた薄いひらひらスケスケの下着と肩が出ているチュニック。
セッカは行ったことはないが、街にあった娼館にいる男娼はおおむねこんな衣装で、寒そうだなと見当外れなことを思ったものだ。
「───俺、まだ我慢した方が良いか?」
『・・・・・・とりあえず自前の服を着ろ。そしてもう少し堪えろ』
「・・・・・・ひとまず腹が減ったから、何か食べてから再考するわ・・・」
はああーっと深い溜息を吐いて、手に持った服を几帳面に畳み直す。
俺は何も知りませんよーって体で無視。
以前ロルフにプレゼントされた服に着替えて部屋に戻ると、何故かテーブルに夕食が並べられていた。
「───何?」
「皆様、お疲れですので各部屋で食事を取るとのことです」
セッカが問うと、パンテルは無表情でさらっと言った。
「・・・・・・あ、そう。分かった。じゃあ、並べおえたら部屋から出てて良いよ。自分のペースでゆっくり食べるから。ありがとう」
「・・・・・・畏まりました」
セッカがそう言うと、少し間を置いて返事をして出て行った。
───その後、隣の部屋にこっそり入ってこちらの様子を窺っているのもお見通しで・・・。
『・・・・・・はー、面倒くせえ』
『コレは全部彼奴の独断であろうか』
『うーん・・・お粗末な気はするがソレにしては一人でやれることでもないような・・・』
今日訪ねることを知ったのはおそらく数日前だろうし、そこから衣装だの準備するには時間がない気がする。
『・・・ま、協力者がいたにせよ、コレはないわ』
さすがに俺も腹に据えかねる。
並べられた料理には鑑定で見ると無味無臭の致死量の毒がまんべんなく混入されていて・・・。
───ここに来て、また命を狙われるなんてな・・・。
もちろんこれっぽっちもロルフ達を疑ってはいない。
だが前回命を狙われてほんの数日でコレだ。
9年堪えてきたセッカの神経もさすがに擦り切れてくる。
───やっとのんびり出来るかと思った矢先にコレだもんな・・・・・・。
『・・・・・・コハク』
『何だ?』
『もう、俺、逃げて良いかな?』
『セッカ・・・』
『ルゥルゥにはああ言ったけど・・・・・・俺、一人で少し、休みたい。何も考えたくない』
『良いと思うぞ。今は、心穏やかに過ごせ』
コハクの応えに、ほろりと一つ涙を溢して、セッカとコハクは忽然と消えた───。
※スミマセン、逃げちゃいました。ヤバい。
(セッカの台詞ですが、ちょっと下品です)
執事のマーカスはセッカ達を客間に通すと、従者を一人紹介した。
「この者はセッカ殿を御世話させて頂きます、パンテルと申します。何かあれば遠慮なく何なりとお申し付け下さい。セッカ殿は賓客で御座いますので」
「・・・ありがとうございます。じゃあ、湯を使いたいのですが」
「セッカ殿、我等に敬語は不要で御座います」
にっこり笑っているが有無を言わせない圧をマーカスから感じてセッカは折れた。
「・・・分かった。じゃあ、湯浴みを頼む」
「畏まりました。お湯は一日中沸いております。この辺りは温泉が出ますので。ではパンテル、頼んだぞ」
「・・・はい」
「温泉! あるんだ。やった、(今世では)初めてだ!!」
「それはよう御座いました。ごゆるりとなさって下さいませ」
そう言って部屋を出るマーカスを見送り、さてとりあえず、ひとっ風呂浴びてさっぱりするか、と浴室を覗いていると、後ろの方で舌打ちが聞こえた。
何を隠そう、パンテルである。
セッカにも聞こえるようにワザと大きな音を出したのだろう。
だがセッカが聞こえないふりで無視していると湯上がり用の着替えを取りに出て行ったようだ。
「───俺が気に入らねえのは分かるけどよ。仕事中は私情を挟んじゃダメだろ」
『アレはどうやらお前に敵意を持っているようだな。嫉妬・・・か?』
「・・・まあ、ルゥルゥモテるだろうしなぁ。・・・どうすっかな・・・。面倒くせえ・・・」
『なら、逃げるか?』
「───ルゥルゥに、もう逃げないって言っちゃったんだけど・・・」
『言い方が悪かったな。少し距離を置くか、という意味だ』
「うーん・・・アレの出方次第だな」
そう言って脱いだ服やら荷物やらを全部インベントリにしまうと、タオルを持って浴室に向かった。
───無造作にマジックバッグを脱衣所に置いて・・・。
「───ふひい───。あ”ー、生き返る・・・」
源泉掛け流しの広い浴槽に浸かって何処ぞのオヤジのような台詞を吐くセッカに呆れた様子のコハク。
『・・・お前は、年の割に爺臭いな・・・』
「いーじゃん、別に。はああ・・・命の洗濯・・・心が洗われて生き返るってこういうことなんだよ・・・」
セッカの言葉に何だそれは?という顔をするが、脱衣所の気配に気付いてセッカと顔を見合わせる。
お互い、無言で、念話での会話に切り替える。
『───何やらやっておるの』
『俺のマジックバッグを漁ってる』
ワザとらしく置いといたダミーのマジックバッグだ。
まさかとは思ったが、マジかよ。
『・・・中身は?』
『どうでも良いモンばっか。・・・あ、でも一個だけ、加工してネックレスにしてあった魔石が入ってる。そこそこの大きさで質も良いからせっかくだし、と細工して貰って・・・ついでに魔法付与もしてあるから、結構良い値がつくぜ』
『・・・・・・良いのか?』
『別に、思い入れがあるモンでも無いし。それに俺がやった魔法付与だから魔力で何時でも探せるし、ルゥルゥも気付くだろう』
さらっと言う俺に思案した後、コハクが面白そうな声で言った。
『・・・・・・嵌めたな?』
『人聞きの悪い・・・。もしもの時のための布陣って大事だろ?』
『当然だな』
そう話して、二人でニヤリと笑う。
そうして気配が消えた頃、何も気付かなかったですって顔で風呂を出て、用意された服に着替えようとして───。
「・・・・・・馬鹿にしてんのか?」
『───我は人の常識には疎いが・・・。ソレは主に男娼が身に着けるような衣装ではないか?』
「・・・・・・どっから用意してきたのか知らんが、俺に喧嘩売ってんのか? 誰にでも股を開く下半身の緩いオメガだとか、身体で籠絡したとか誑かしたとか言いたいわけか」
ペラリと広げた薄いひらひらスケスケの下着と肩が出ているチュニック。
セッカは行ったことはないが、街にあった娼館にいる男娼はおおむねこんな衣装で、寒そうだなと見当外れなことを思ったものだ。
「───俺、まだ我慢した方が良いか?」
『・・・・・・とりあえず自前の服を着ろ。そしてもう少し堪えろ』
「・・・・・・ひとまず腹が減ったから、何か食べてから再考するわ・・・」
はああーっと深い溜息を吐いて、手に持った服を几帳面に畳み直す。
俺は何も知りませんよーって体で無視。
以前ロルフにプレゼントされた服に着替えて部屋に戻ると、何故かテーブルに夕食が並べられていた。
「───何?」
「皆様、お疲れですので各部屋で食事を取るとのことです」
セッカが問うと、パンテルは無表情でさらっと言った。
「・・・・・・あ、そう。分かった。じゃあ、並べおえたら部屋から出てて良いよ。自分のペースでゆっくり食べるから。ありがとう」
「・・・・・・畏まりました」
セッカがそう言うと、少し間を置いて返事をして出て行った。
───その後、隣の部屋にこっそり入ってこちらの様子を窺っているのもお見通しで・・・。
『・・・・・・はー、面倒くせえ』
『コレは全部彼奴の独断であろうか』
『うーん・・・お粗末な気はするがソレにしては一人でやれることでもないような・・・』
今日訪ねることを知ったのはおそらく数日前だろうし、そこから衣装だの準備するには時間がない気がする。
『・・・ま、協力者がいたにせよ、コレはないわ』
さすがに俺も腹に据えかねる。
並べられた料理には鑑定で見ると無味無臭の致死量の毒がまんべんなく混入されていて・・・。
───ここに来て、また命を狙われるなんてな・・・。
もちろんこれっぽっちもロルフ達を疑ってはいない。
だが前回命を狙われてほんの数日でコレだ。
9年堪えてきたセッカの神経もさすがに擦り切れてくる。
───やっとのんびり出来るかと思った矢先にコレだもんな・・・・・・。
『・・・・・・コハク』
『何だ?』
『もう、俺、逃げて良いかな?』
『セッカ・・・』
『ルゥルゥにはああ言ったけど・・・・・・俺、一人で少し、休みたい。何も考えたくない』
『良いと思うぞ。今は、心穏やかに過ごせ』
コハクの応えに、ほろりと一つ涙を溢して、セッカとコハクは忽然と消えた───。
※スミマセン、逃げちゃいました。ヤバい。
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