箱庭

エウラ

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汝、狂竜を制止せよ 1

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もの凄い音でハッと目が覚めた。

俺はどうやら、助け出されたときに気絶してしまったらしい。

匂い的にアレックスさんのモノだろう布地に包まれているようで、外の様子が見えない。
見えないから、さっきから何かが破壊される音や断末魔のような声が引っ切りなしに耳に入ってきて逆にめっちゃ怖いんだけど!?

ビクビクしながらもモソッと身じろぎすると、アレックスさんが気付いて顔が出るように捲ってくれた。

「───っかわーっ!!」
「んえ? 何? 誰?」

周りが見えた途端に聞こえた知らない声にちょっとビビるが、アレックスさんの顔も見えたのでホッとする。
おそらくはアレックスさんの同僚だろう。

「ラトナ様、気が付かれましたか。よかったです」
「うん、あの、ありがとうございます。・・・・・・ところで今の状況って・・・・・・?」

キョロッと周りを見ると、アレックスさんの正面にワンコっぽい耳の獣人さんが瞳をキラキラさせて俺を覗き込んでる。
俺の目の端に見えたのはぶんぶんと千切れんばかりに振られたもふもふの尻尾。

そして延々と聞こえる破壊音と断末魔。

何このカオス?

「あ、失礼しました! 俺は巡回騎士団の副団長でピアーズと申します。抱っこしていいですかもふもふしてもいいですか!?」
「え、あ、んえ? な、何!?」
「止めなさい、ピアーズ! ラトナ様が戸惑っているだろう!」
「───っあ、痛っ!」

やたらとテンションの高い副団長ピアーズさんに俺が引いてると、アレックスさんが彼の頭をぺしっと叩いて制止してくれた。

「今なら抱っこくらいはイケるだろうが、もふもふはダメだ! サイファ殿下に殺される!」
「ハッ、そうだった。それどころじゃなかった! ラトナ様! サイファ殿下を止めて下さい!」

漫才のボケとツッコミのようなやり取りをポケッと見ていると、ピアーズさんにとんでもないコトを頼まれた。

「んええ? 今のアレックスさんみたいに頭をペちっとやればいいの? ていうか、もしかしてこの破壊音って・・・・・・」
「ええ、サイファ殿下が半ば正気を失っておりまして・・・・・・理由は言わずもがな、ですが」
「ラトナ様を救出できたって言っても全く聞こえてないみたいで・・・・・・」

───えええ!? アレだよね? 番いを失うと暴走しちゃう的なヤツ。
俺が迂闊にも攫われたせいでサイファが狂っちゃう!?

「そんなのダメダメダメー!」
「ラトナ様!?」
「俺のせい、俺のせいだから俺が元に戻さなきゃ!」
「でもあそこに行くのは無謀ですって!」
「止めてくれって言いましたが、実際は死地に向かうようなモノですよ!?」

そう二人が言って指差した方を見れば───。

「・・・・・・はああ!?」

ナニアレ、三階建ての家くらいの大きさの真っ黒な西洋風の竜が怪獣のように暴れてるんですけどー!?
手足や尻尾を振りかざして、たまに口からドラゴンブレスみたいなものが漏れるんですけど!?

───思わず敬語になっちゃうくらい動転してヤバい。誘拐されたときの比じゃないくらい怖いんだけどー!

「・・・・・・でもヤルしかない。あんな辛そうに暴れるサイファは見たくない! アレックスしゃん、ピアーズしゃん! 俺をあそこに連れてって!」

思わず噛んじゃったけど許して!

「かわっーコホン。連れて行くのは何とかなりますが、どうやって近付くんです?」

ちょっぴり頬を染めて言うアレックスさんに恥ずかしいと思いつつも俺は提案した。

「お二人どっちでもいいので、俺を投げつけてくだしゃい!」

うわ、また噛んじゃったよ。
でもガクブルしてるんだもん。ちょっとは仕方ないよね?

あ、虚勢を張って武者震いって言えばよかった!?

そんな俺の提案に二人は同じようにポカンとした。
二人とも仲いいね!















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