箱庭

エウラ

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戻ってきた平穏

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俺達が小島でのんびり蜜月を過ごして三週間ほどした頃、王様達から連絡が来た。

『離宮も改装終わったし警備も見直したし、この前の件も片付いて安全だから帰ってきていいよ』

そんな感じのことだったらしい。

「うーん、こっちののんびりした生活も煩わしくなくていいけど、皆とわいわい過ごすのも楽しいからたまにこっちに帰って、普段はあっちで生活かなぁ」

俺がそう言ったらサイファが苦笑した。

「俺としては閉じ込めて独り占めしておきたいんだけど」
「うわ、何そのヤンデレ発言! いや俺だってサイファとずっと一緒に過ごしたいけど、せっかく長生きするならいろんなところに行っていろんなモノ見たいよ」

もちろんそのときはサイファと一緒のつもりだけど。

「……う、そう言われたら連れて行ってあげたくなるじゃないか。でもしばらくは王城付近をブラブラするくらいで許してくれ」

サイファが苦渋の決断みたいに言うけどそんなに難しいのか。まあ立場上仕方ないのか。

「もちろん。無理強いはしないよ。この前みたいなことはイヤだし。……俺も何か自分の身を守れるように護身術的なモノ習おうかな?」
「俺が護る──ってこの前の前例があるから、うう、否定できない。いっそのこと移動以外も全部抱っこしたまま生活──」
「するな!」

それだとトイレも一緒になるだろう。風呂はともかくトイレだけは勘弁して。まあ、そのトイレでやらかしたから余計に心配なんだろうけど。

「チッ、さすがに『まあいっか』とはならないか。じゃあ次の手を──」
「おーいサイファさーん? 舌打ち&腹黒発言は止めてね!」

ちょっとコワイところが見え隠れしてるぞ、おい。

「とにかく、許す限りラトナにくっ付いてるから」
「お、おう」

ちょっと目がイッちゃってる人みたいだったのでそう返事するしか出来なかった。
妥協できるところは許そうと思う。

そうして転移で王城に戻ると、ナージュから熱烈な出迎えを受けて早速離宮に案内された。
すでにサイファの荷物はこっちに移動済みらしい。俺は何にも持ってないから気にしない。服やら何やらはこっちでサイファ達が用意してくれたモノだし。

「まあ基本的には俺達二人とナージュ、あとは料理人や庭師、使用人が数名生活を共にする感じだ」
「あ、そっか。家は小さいと思ったけど管理する人はけっこう必要だよな」

王族だから自分で家事をするわけじゃないし、そもそも部屋もたくさんあって掃除で一日終わりそうだ。

「もちろん厳選した使用人達だから安心していいが、もしラトナが合わないと思う者や不届き者がいたら遠慮なく教えてくれ。お前に危険が及んだら俺はどうなるか分からない」
「あー、この前のようなヤツね。うん、ここでああなったらお城がたいへんなことになるね。分かった、すぐに言うね」

ミニ○ジラみたいだったもんね、アレ。お城が破壊されちゃう。

そしてまた鼻っ面に投げられる(正確には自分から投げさせた)のはもういいかなと思う俺だった。

こうして離宮での生活を始めてたった一日でサイファがトイレまでついて行くとダダをこねるので、俺は浄化魔法を使ってお腹の排泄物を消し去るという裏技? を編み出して、トイレに行くという行為自体をなくす羽目になるのだった。

ちなみにサイファは自分がトイレに行くときに俺も連れて行こうとして断固拒否したら、サイファ自身も浄化魔法でトイレに行くのを止めてしまった。

いやだってつれションはともかく大の方はちょっと、いやかなり抵抗あるだろう! 俺は変態じゃない!

そういうわけで我が離宮のトイレは引っ越し初日から未使用だよ。誰得? 使用人得か、掃除の手間が減るし。アレ、掃除も魔法ですぐに終わるんだっけか? まあいっか。

何かいつの間にか俺の開発した浄化魔法ソレが王城のみならず一般人や冒険者達にも広まって衛生的にもいいと話題になっていると俺が知るのはだいぶあとのこと。

疫病とか減ったらしいよ。うん、不衛生が減るのはイイコトだ。










※離宮の外観とか、けっこう前の話で書いてたのに気付きまして、この中では削除しました。しかも外観間違えてたので。すみません、久しぶりだとダメですね。
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