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誘拐騒ぎの裏側(side国王達)
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※三人称。王様の名前ちょっと間違えてました。修正しました。
ラトナとサイファが小島でのんびり二度目の蜜月を過ごしていた頃、例の誘拐騒ぎの顛末が執務室に集まった国王と王太子に報告されていた。
それによると、サイファが以前に冒険者として受けた依頼で潰された闇組織の残党が逆恨みして行ったことのようだ。
「──というわけで、サイファ殿下を我が国の第二王子殿下と知らずに計画を立てていたようです」
「……はぁ。冒険者にとっては逆恨みは日常茶飯事とはいえ、今回は王族に対する不敬罪も適応されるから極刑は免れんな。残党も徹底的に探し出して処罰せよ」
側近の一人であるライアンの報告に国王のトレヴァは一つ溜め息を吐くと、厳しい表情でそう言った。王太子シヴァも頷く。
「知らなかったでは済まされることではありませんからね。王家の威厳もありますし、何より『神の愛し子』を拐かしてその御身を危険に晒そうなど」
「報告書によればどうやら闇オークションで売り飛ばし、性奴隷とする心づもりだったそうです。ゲスの極みですね」
ライアンも嫌悪を隠すこともせずにそう言った。
「本当によく無事だったと思う。アレか、神がおっしゃっていた『幸運EX』のおかげかな」
「ああ、そういえばそんなことが例の手紙に書いてありましたね」
アレがいい方向へ働いてくれたのかもしれないとここにいる一同全員でホッとする。
「それにしても暴走したサイファを止めたラトナは凄いな」
トレヴァが感心しながらそう呟くとライアンとシヴァも頷いた。
「ああ、巡回騎士団長アレックス・カーフィルの報告書によると、カーバンクル姿のラトナをサイファに投げつけたとか」
「ああいや、あれはラトナが投げてくれと頼んだそうだが、よく思いついたものだよな」
「絶対に大丈夫だという確信めいたものがあったようですが、それにしても……」
ライアンが言葉を切ってふるふると肩を震わせ、それにつられるようにトレヴァとシヴァも震えた。
なんなら扉の両脇で護衛中の近衛騎士達もぷるぷると吹き出すのを堪えるようにしている。
「竜化したサイファの鼻にビタンと引っ付いたあとにくしゃみで吹き飛ばされて、でもネコっぽいのに体勢を立て直せずに大泣きしながら落ちていったらしいじゃないか」
「我に返ったサイファが慌てて竜人に戻ってキャッチしたらしいですよね」
「意図せず正気に戻せましたが、あのあとのラトナ様の落ち込みようは──」
獣姿なら落ちても体勢をくるりと立て直せるはず! と意気込んでいたのに何も出来なかったとべそべそ泣いていて可愛らしかった。
「まあ、誘拐はする方が悪いからラトナを強く叱ることも出来なかったが、これで少しは危険を感じて警戒を強めてくれるだろう」
「そうですね、怖い思いをさせてしまいましたがいい教訓になるでしょうね」
「何よりサイファがもう離さないと思いますよ」
たぶんお風呂もトイレもつきっきりになるだろう。サイファの過保護っぷりに拍車がかかるだろうと予測された。
「……さあて、今回の犯人達にどんな処罰を与えましょうか。生きていて後悔するような目にあわせたいですよね」
「ふふふ、番いに手を出すとどうなるか、存分に思い知らせてやろう」
「特に今回は王族な上に神の愛し子ですからね。天罰がくだるやもしれないですねぇ」
王の執務室では真っ黒なオーラが揺らめき、普段の様子からは想像できないような魔王のような顔でうふふあははと笑う三人の姿があった。
護衛中の近衛騎士達は背筋をゾッとさせつつも自業自得な犯人達を憐れむことはなかった。
彼らも、いやラトナを知る者達全員がトレヴァ達同様、犯人達は地獄に落ちろと思っていたのだから。
そしてこんな裏側は絶対にラトナには見せない、悟らせないと誓うのだった。
ラトナとサイファが小島でのんびり二度目の蜜月を過ごしていた頃、例の誘拐騒ぎの顛末が執務室に集まった国王と王太子に報告されていた。
それによると、サイファが以前に冒険者として受けた依頼で潰された闇組織の残党が逆恨みして行ったことのようだ。
「──というわけで、サイファ殿下を我が国の第二王子殿下と知らずに計画を立てていたようです」
「……はぁ。冒険者にとっては逆恨みは日常茶飯事とはいえ、今回は王族に対する不敬罪も適応されるから極刑は免れんな。残党も徹底的に探し出して処罰せよ」
側近の一人であるライアンの報告に国王のトレヴァは一つ溜め息を吐くと、厳しい表情でそう言った。王太子シヴァも頷く。
「知らなかったでは済まされることではありませんからね。王家の威厳もありますし、何より『神の愛し子』を拐かしてその御身を危険に晒そうなど」
「報告書によればどうやら闇オークションで売り飛ばし、性奴隷とする心づもりだったそうです。ゲスの極みですね」
ライアンも嫌悪を隠すこともせずにそう言った。
「本当によく無事だったと思う。アレか、神がおっしゃっていた『幸運EX』のおかげかな」
「ああ、そういえばそんなことが例の手紙に書いてありましたね」
アレがいい方向へ働いてくれたのかもしれないとここにいる一同全員でホッとする。
「それにしても暴走したサイファを止めたラトナは凄いな」
トレヴァが感心しながらそう呟くとライアンとシヴァも頷いた。
「ああ、巡回騎士団長アレックス・カーフィルの報告書によると、カーバンクル姿のラトナをサイファに投げつけたとか」
「ああいや、あれはラトナが投げてくれと頼んだそうだが、よく思いついたものだよな」
「絶対に大丈夫だという確信めいたものがあったようですが、それにしても……」
ライアンが言葉を切ってふるふると肩を震わせ、それにつられるようにトレヴァとシヴァも震えた。
なんなら扉の両脇で護衛中の近衛騎士達もぷるぷると吹き出すのを堪えるようにしている。
「竜化したサイファの鼻にビタンと引っ付いたあとにくしゃみで吹き飛ばされて、でもネコっぽいのに体勢を立て直せずに大泣きしながら落ちていったらしいじゃないか」
「我に返ったサイファが慌てて竜人に戻ってキャッチしたらしいですよね」
「意図せず正気に戻せましたが、あのあとのラトナ様の落ち込みようは──」
獣姿なら落ちても体勢をくるりと立て直せるはず! と意気込んでいたのに何も出来なかったとべそべそ泣いていて可愛らしかった。
「まあ、誘拐はする方が悪いからラトナを強く叱ることも出来なかったが、これで少しは危険を感じて警戒を強めてくれるだろう」
「そうですね、怖い思いをさせてしまいましたがいい教訓になるでしょうね」
「何よりサイファがもう離さないと思いますよ」
たぶんお風呂もトイレもつきっきりになるだろう。サイファの過保護っぷりに拍車がかかるだろうと予測された。
「……さあて、今回の犯人達にどんな処罰を与えましょうか。生きていて後悔するような目にあわせたいですよね」
「ふふふ、番いに手を出すとどうなるか、存分に思い知らせてやろう」
「特に今回は王族な上に神の愛し子ですからね。天罰がくだるやもしれないですねぇ」
王の執務室では真っ黒なオーラが揺らめき、普段の様子からは想像できないような魔王のような顔でうふふあははと笑う三人の姿があった。
護衛中の近衛騎士達は背筋をゾッとさせつつも自業自得な犯人達を憐れむことはなかった。
彼らも、いやラトナを知る者達全員がトレヴァ達同様、犯人達は地獄に落ちろと思っていたのだから。
そしてこんな裏側は絶対にラトナには見せない、悟らせないと誓うのだった。
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