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38 騎士は神官長に進言される
しおりを挟むセイリュウがレグルス様に通信魔導具を渡してくれたおかげで向こうとこうして定期連絡を取ることが出来る。
つい先日、レグルス様からこんな事を言われた。
『今度の満月の夜、セイリュウにこう言ってごらん。“月が綺麗ですね”って』
諸々の報告の後、唐突に。
「・・・それはどういう意味が?」
『愛の告白に使われる台詞なんだよ。“愛してる”って意味なんだって』
「初耳ですね。この国の言葉では無いようですが。隣国のものでも無いですよね?」
聞き慣れない愛の台詞だな。
何処の国のものなのだろうか。
『とある世界の物語の言葉だそうだ。その国の愛の隠語の様な扱いらしい。そしてその言葉の対になる台詞、つまり了承の台詞もあって、“死んでもいい”とか“貴方と見る月だから綺麗だ”とか。あと、“ずっと一緒に見ていたい”なんて台詞は死ぬまで一緒に過ごしたいという熱烈な愛の告白だそうだ』
・・・とある世界の物語?
レグルスは意味深に話す。
空想の世界ということだろうか?
「へえ、凄いですね。あ、でも・・・そうだって?」
『---、ああ、生前スピカが教えてくれた言葉だ。だから何がどうとか、私は詳しくは知らないんだけど。---もし・・・』
「?・・・・・・レグルス様?」
『・・・・・・ロザリンド。もしセイリュウが何か君に話そうとしたら、その時は黙って話を聞いてやって欲しい。きっと、セイリュウには一生モノの大切な事だから』
「・・・・・・分かりました。必ず」
『よろしく頼むよ。私は父だけど、あの子の一番にはきっと、なれないから』
そう寂しそうな声音で言って通信を終えた。
「一体どういう意味なのかな? 確かにセイリュウは秘密を抱えているようだけど、レグルス様にも秘密なのかな・・・?」
まあ、セイリュウの事は全面的に受け入れているのだから、何があろうと俺の気持ちは変わらないが。
「それよりも次の満月だな。確か次は・・・・・・」
三日後、か。
セイリュウがどんな反応をしてくれるのかドキドキしながらも公爵や義兄にレグルス様とのやりとりを話して、三日後の夜に備えた。
そうして何事もなく、何時ものようにゆったりした日々を過ごして三日後、満月の夜。
何時もより早めに入浴したセイリュウがソファで横になって休んでいる。
部屋が明るい事に気付いたのか、おもむろにテラスに近付いて行って・・・。
俺もそっと背後から近寄ると、あの言葉を呟いた。
「・・・月が綺麗だな」
セイリュウは知っているのだろうか?
知らないで、ただ『そうだね』とか返されるのだろうか?
ドキドキしながら待っていると・・・。
「---え」
驚いて振り向いたセイリュウは月明かりの逆光で暗かったが、目を見開き、頬が紅潮しているのが分かった。
「・・・・・・死んでもいい」
泣きそうな顔で、実際、青紫色の瞳は潤んでいる。
戸惑いと喜色を含んだ声音で、震えるように呟いた。
---通じていた!
俺はパニックになっているセイリュウに念を押した。
すると・・・。
「---はあ、もう・・・。『貴方とずっと月を見ていたい』」
照れてちょっと俯いたセイリュウの口から、熱烈な返事が!!
もう死んでも離さない!
その後、照れてツンツンしながらも一緒に寝ようとベッドに誘って(ロザリンドの中では誘われたという事に変換されている)くれたセイリュウが可愛過ぎて、思わず深い口付けをすると、無意識に魔力を欲して欲情してしまったセイリュウを抱き潰したのは、まあ、反省はしている。
え?
もちろん後悔は無い!
翌朝、当然だが起きられないセイリュウを心配した義父義兄、使用人達に散々お小言を貰ったが、求婚を受け入れて貰えた事を知らせると皆は大喜びだった。
---今夜は祝宴をあげるらしい。
ちなみにレグルス様にも報告済みで、婚約宣誓書にレグルス様と義父の署名を入れて貰い、朝イチで王太子殿下に送って承認を得た。
これで正式にロザリンドとセイリュウの婚約が整い、大手を振って堂々とセイリュウを護れることに幸せを感じたのだった。
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