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41 魔導師は祝福される
しおりを挟むぐっすり午睡をして元気になったセイリュウは、ロザリンドに勧められるまま庭の散策に出かけた。
いかんせん体力筋力が落ちてしまっているので少しずつリハビリを兼ねて歩こうということになって。
「・・・・・・ねえロズ、そういえば僕は何時まで休めるの? それともまさか、クビ・・・」
「いやいやないない! ちゃんと有給休暇で休んでるよ?!」
「え、そうなんだ?! ん?・・・・・・有給?」
ふと気付いたセイリュウは、そういえば今の自分の扱いってどうなってるんだろうと心配になった。
ロザリンドが言うには有給休暇扱いらしいけど・・・。
「有給休暇ってあったんだ? そもそも休み無かったから知らなかった。へえ、一応まだ魔導師なんだ・・・面倒くさ」
---もうこの機会に辞めて良いかな?
そんなことを考えていると、思考が漏れてたのか、ロザリンドが言った。
「4年分の有給休暇を消化してから辞職すれば良い。王太子殿下も許可を下さっている」
「え?! マジ?!」
驚きのあまり言葉遣いが悪くなったセイリュウ。
「それってどれくらい休めるの? ねえ、もしかして辺境地に帰れるくらい? 帰っても良いかな??」
「ああ、十分にあるから、婚約の挨拶に一度行こうな。書類はすでに受理されているからもうセイは俺の婚約者だけど、レグルス様に顔を見せて挨拶しなくてはな」
「---!! ありがとう、ロズ!! 大好き!!」
嬉しくて思わずロザリンドに抱き付いたセイリュウを、こちらもやはり嬉しくてギュッと絞め殺しそうになったロザリンド。
それを止めに何処からか騎士や使用人達が湧いてきた。
「・・・死ぬところだった・・・」
「---す、すまない・・・つい」
「ロズが強いのは分かったから、いい加減力を抑えて? 僕はまだまだガリガリだから・・・うう、自分で言ってて辛いけど・・・」
「・・・すまない」
「はいはい、謝りっこはお終いにして、手を繋いでくれる? 散歩の続き、行こ?」
「そうだな」
そうして散策を再開したことにほっとして、邸の者達は再び宴の準備に取りかかった。
セイリュウがロザリンドに介助されながら、あの花綺麗だねとか夕焼けなんて久しぶりに見たなとか話しながら軽く30分近く歩いて部屋に戻り、さっとシャワーを浴びて身支度を整えて。
「じゃあ晩餐に行こう」
「あれ、今日は部屋じゃ無いんだ?」
「ああ。そろそろ皆と一緒に食べられるだろうと、準備してくれたらしい」
「おおー! やった、嬉しい」
そしてロザリンドにエスコートという名の介助をされて食堂に向かう。
「ご婚約おめでとうございます!!」
「「「おめでとうございます!!」」」
「「「おめでとう!!」」」
扉の先には公爵家の皆と使用人達がいて、何やら花とかいっぱい飾ってあって。
ワゴンに大きなケーキが乗っていて、テーブルにもところ狭しとたくさんの料理が・・・。
「---え? え?」
「皆、こっそりお祝いの準備をしてくれてたらしい」
「・・・うう、嬉しい・・・ありがとうございます」
今朝の夕方で、こんなに準備をしてくれて祝ってくれて、セイリュウは祝福される側なのにうっかり祝福してしまった。
「神様ありがとう!」
「「「「あっ!!」」」」
セイリュウの祝福を知っている公爵家の皆はもとより、知らない使用人達でさえ、セイリュウの魔力が暴走したのが分かった。
飾ってある花の蕾は満開に、庭は再び芋畑。
おそらく辺境地も同じようになってるな・・・とロザリンド達は苦笑した。
「---!! ご、ごめんなさい!!」
「いや、セイリュウがそれだけ嬉しかったって分かるから大丈夫」
「さあさあ、今夜は無礼講で騒ごう!」
「「「やったー!」」」
「・・・・・・楽しそう」
「さあ、たくさん食べて。ケーキもあるぞ」
「うん、頑張る」
その後は遅くまで賑やかな笑い声が響き渡っていた。
セイリュウは早々に疲れてお腹いっぱいで寝落ちした。
今夜は楽しい夢を見ることだろう。
一方、辺境地のレグルスの方も、パーティーで盛り上がっていたところにセイリュウのやらかしが加わって、案の定、芋畑豊作の報告が次の日連続で来るのだった。
※兄ぃの釣った太刀魚三匹捌いてたら書く時間が、投稿が・・・・・・!!
しかも鋭い牙に左手人差し指をしこたま引っかけて流血・・・。
マヌケと笑って下さい。
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