癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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70 魔導師は魔剣士団長と話す 2

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ロズにエスコートされて馬車に乗り込んだ。もちろん向かいにはルーお爺ちゃんも座っている。

王城までは馬車で一〇分ほどらしい。思ったよりも近かった。じゃあ今のうちに色々聞いておこう。

「ルーお爺ちゃん、王城で王様に謁見するんでしょう? そのときに例の魔剣士団長さんともお話するの?」
「いや、謁見の場にはいるが、陛下に御挨拶をしたら場所を移すそうだ。おそらく陛下の私室になるだろう」

詳しくは聞いていないのか、ルーお爺ちゃんもちょっと考えながらそう教えてくれた。
うーん、その場で済む話じゃないってことかな?

「じゃあ、とりあえず謁見を頑張って無事に終わらせれば何とかなるね」
「ふっ、そうだな。まぁ、固くなることはない。今の国王は俺の母の兄だ。つまり伯父だ。ちなみに名前はホウオウだ」
「あ、そうなんだね。じゃあ気楽に───ってなるかぁ!」

うっかり納得しそうになって我に返った。
危ない危ない!
いくらロズの伯父でも国王陛下! さすがに不敬だわ!

「いや、まぁ、公ではさすがに威厳があるが、あの方もシスコンだからな。溺愛する妹姫の子で甥であるロザリンドにはかなり甘いぞ」
「へえ。想像がつかないなあ」

顔も知らないホウオウ国王がロザリンドの頭を撫で撫でする様子を想像するも、全くイメージが湧かない。どちらかと言えば・・・・・・。

「───うん。大型犬をモフる王様」
「───ぶっ」
「ふはっ」

思わずそう呟けば、ルーお爺ちゃんもロズも吹き出した。
そのまま笑いのツボに入ったらしく、城に着くまでずっと思い出し笑いをしてたせいで結局、他の情報は全く聞くことが出来なかった。

「フォルレイク国魔導師団長セイリュウ様、第三騎士団長ロザリンド様並びにルラック公爵様、お着きにございます」

馬車がゆっくり止まって、外からそう声が聞こえてハッとする。
ロズもルーお爺ちゃんもいつの間にか笑いを引っ込めてビシッとしていた。いつの間に!?

僕も気持ち背筋を伸ばして、外面の仮面を被る。うーん、猫を被るっていう方が合ってるかな?
一応、国の顔だし。侮られないように気を付けよう。

───そう思っていたんだけど・・・・・・。

先にルーお爺ちゃんが、次にロズが降りて僕に手を差し出してエスコートをする。
そこにそっと手を添えようとして───。

「ローズー! 会いたかったよぅー!」

甘えたような媚びるような声で誰かがロズに突進してきて、僕はビクッと手を引っ込めて固まった。

・・・・・・誰?

「───ユリアナ様。退いて下さい」
「えー? 何でぇ? せっかく会えたのにぃ」

・・・・・・何で僕の婚約者のロズに馴れ馴れしくしがみ付いてるの? 何でロズも無理に引き剥がさないの?

「誰か、そこの近衛騎士! 離して向こうにお連れしろ!」
「ええっ!? 酷い! ルーお爺様!」
「貴方にそう呼ばれる謂れはありませんが?」

・・・・・・ルーお爺ちゃんを、お爺様?
何がどうなってるの?

「ええ? 照れてるの? 二人とも恥ずかしがり屋さんー」

そう言って近衛騎士らしき人達に引き離される瞬間、僕を下から見上げて、僕にしか見えないようにニヤリと孤を描いた小さな口。

僕よりも小柄でふわふわカールの長いブロンドの髪と大きいアーモンドの形のアクアマリンのような瞳。
その全部のパーツで僕を嘲笑っている。

「あははっ! またねぇ、ロズ!」

手荒に引き離さないのは、それなりの地位の子息なんだろう。

───コレから謁見だというのに、僕は表情が抜け落ちてしまい、念のためにと持ってきていた翡翠色の薄いベールを頭から被った。

・・・・・・こんな顔、見られたくない。見せたくない。

無表情で虚ろになった顔の裏で、心臓はイヤな音を立てている。

「───すまない、ちょっとハプニングが・・・・・・セイリュウ? ベールを付けていくのか?」
「・・・・・・うん」

それ以上の言葉が出なくて、エスコートの手を借りずにサッと馬車から降りる僕を心配そうに見つめる二人だったが、僕は今の出来事に触れたくなくて先を急ぐように歩き出した。

ロズもおかしいと気付いているが、何も言わずに僕の右手をそっと掴み、エスコートして歩き出した。

───さっきの子は誰?

親しそうにくっ付いてた。

僕の知らないロズを知っているかもしれない子。
あの顔は優越感に浸っている顔だ。

───僕はモヤモヤした醜い嫉妬で心が埋め尽くされそうになって、無言でひたすら前を向いて歩いていた。

最悪の気分だった。







※うん、トラブル勃発。久々の更新は平和的な話になるはずだったのに何故!?


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