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27 御対面からの圧迫面接 2
しおりを挟むそして恙無く始まったお茶会だが、お茶菓子を作りお茶を淹れているのは当然のようにシュルツである。
「・・・あの、僕、あんまり料理出来なくて・・・。ハーブティーくらいは淹れられるんだけど・・・」
「気にしなくて良いんだよ、イツキ君。そもそもエルフは私達のように様々な調理を必要としないんだろう? こういうこともシュルツが好きでやっていることだし、シュルツからも時々話を聞いているよ」
申し訳なさそうに言う樹希にゼクスがそう言えば、ちょっとホッとしたようだった。
ちなみに、お茶会の前に『お互い敬語は無しで』と言う樹希に合わせて普通に話している。
「あの、えと・・・どんな話をしてるの?」
そう言いながらシュルツを見る樹希。
それにそっと目を逸らしつつ、誤魔化しても仕方ないので正直に告げた。
「・・・イツキが鈍臭いって。この間、滝壺に落ちたこととか・・・」
「・・・・・・ウン、概ねその通りだから否定はしないけど・・・自覚はあるけど・・・言い方・・・」
『あと、方向音痴ねー!』
『森の中で目隠ししてぐるぐるしたら、もうどっちの方向か分からなくなるもん』
「それは誰でもそうなるでしょ?!」
「いや、俺はならん」
「「私達もならんな」」
「えー?!」
ガーンという音が聞こえそうなほど可愛い口をあんぐりと開けて固まる樹希に、皆が吹き出す。
そこには当然、精霊王達も混じっている。
樹希が一人で住んでいた頃はガランとした寒々しい広いだけのリビングだったが、シュルツが住むようになってリビングのテーブルに料理やお菓子が並ぶようになり、精霊王達も頻繁に様子を見に来て賑やかな雰囲気になってきた。
そして今日は、シュルツのお父さんやお兄さんや影の人達もいて。
精霊王は実体があるから窮屈そうだけど。
「ふふっ」
幸せだなあと思わず笑ってしまった。
「僕ね、こんなにたくさんの人に囲まれてお茶会なんて初めてで、嬉しいんだ」
「・・・そう言って貰えてこちらも嬉しいよイツキ君」
「また時間を作ってお茶を飲もうね」
「ありがとうゼクス父様、アハト兄様。あ、でも無理しないでね。今日のためにもの凄くお仕事したって聞いたから・・・」
「うっ・・・優しい子だ」
「ああ・・・癒される・・・」
「・・・父上、兄上・・・」
いつの間にか自分達の事を父様兄様呼びさせている腹黒父子を呆れた目で見るシュルツ。
精霊王達はというと、リビングのソファやその近くの椅子に腰掛け、圧迫面接?を続けていた。
とは言っても、遠巻きにゼクス達を観察しているだけだが。
『ふむ、この森に来られただけでも合格だが、アレぐらいの強かさがあればなお良しだな』
『あのくらいサラッと言いくるめられるならば安心だな。・・・うん、イツキが純粋過ぎて怖いからな』
『ああいう輩に過保護にされた方がイツキも良いと思う。悪感情に触れてイツキが傷付いては敵わん』
『うーん、イツキは鈍いけど悪感情には敏感だからな。なるべく排除しないと心が病んでしまう』
『その点、あの竜の子達は優秀』
『竜の子は愛情が重いからな。受け入れた身内にはとことん愛情を注ぐ。其れが親愛だろうとな』
『早いうちにイツキの番いが見つかって好かった』
などとぽそぽそ話をしている精霊王達。
どうやらお眼鏡に叶った模様。
───合格らしいな。
聴覚も良い竜人故にしっかり耳で拾っていたゼクス達。
精霊王達も分かっていて囁いている。
どちらも似た者同士だった。
ただ、エルフの癖に耳が悪いと思っていた樹希だけは案の定、全く聞いておらず、精霊達に揶揄われていた。
『イツキは耳が悪いんじゃ無くてー』
『聞くつもりが無いから耳に入んないの!』
『どうでも良いと思ってると、本当に聞こえないよね』
『そのくせ、竜の人の声にはすぐに反応するよねー?』
そう言われて樹希はキョトンとした。
「そ、そう? どうしてかな? 不思議だね」
その言葉に全員が唖然として、シュルツは遠い目をした。
「・・・・・・ウン、そうだと思ってた」
「え? え? 何が??」
「・・・シュルツが不憫に思えてきた」
「お前・・・思ったよりも苦労してたんだな」
『心配するな。イツキがコレだからの。我等は全面的に竜の子を応援しておるよ』
分かってない樹希にゼクスとアハトが憐憫の目を向け、精霊王達はシュルツの味方だと告げた。
顔合わせの圧迫面接(物理)は、最終的にシュルツを励ます会になってしまったようである。
それからは時間ギリギリまで和やかなお茶会を楽しみ、またその内遊びに来ると言って、公爵家に転移で戻っていった。
『では我等も退散しようかの。明日もゆっくり過ごすと良い。森の見廻りも毎日じゃなくて良いのだからな』
「うん、明日は目が覚めるまで寝坊してみる」
「ぷっ・・・してみるって・・・。無理に寝坊する事無いだろう」
樹希の物言いに吹き出すシュルツ。
だが次の樹希の発言で思わぬダメージを食らった。
「うーん、じゃあ、起きてもシュルツとお布団の中でごろごろするー」
「───うぐっ・・・・・・」
「シュルツ? 大丈夫?!」
急に顔を掌で覆って蹲るシュルツにわたわたする樹希。
『───竜の子、頑張れ・・・』
『不憫過ぎる』
『『『『生殺し』』』』
精霊王達も苦笑してそう言うしか無かった。
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