優しい庭師の見る夢は

エウラ

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59 ギルミアとぬいぐるみ

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ノンノンがある意味生んだと言える子ウサギのぬいぐるみを、ゼクスの許可の元、イツキに魔法の付与を頼んで送り出してからおよそ30分後。

『ただいま戻りました』

そう言って影がぬいぐるみの片方をゼクスの執務室に持ってきた。

「おや、早かったね?」
『無事に付与して貰えたん?』
『恙無く。もう片方はイツキ殿が抱き枕にして午睡しております』
「何?! ソレは・・・・・・めちゃくちゃ可愛いヤツ!!」
『うん!! 絶対可愛いヤツー!! 見たい見たい見たい見たい見たい---っ!!』

ノンノンが興奮のあまり、手足をばたばたさせる。

思わず距離を取るゼクスと影。
うっかり当たろうモンなら怪我は必至。
最悪、窓や壁をぶち破って飛んでいく。

最凶の破壊神の二つ名は伊達じゃ無いので。

「落ち着きなさい、ノイン」

距離を取りつつゼクスが窘めると、ノインは我に返った。

『---ハッ!! 思わず・・・ごめんなー』
「気持ちは分かるよ。だけど向こうには気軽に行けないから、コッチで欲求を満たそう!!」
『---!! ギルミアちゃん!! そうだ、早くコレ持っていって渡そう! そんでもってぎゅってしてるとこ目に焼き付けよう!』
「アハトがソレを許してくれたらね? じゃあギルミア君の部屋に行こうか」
『らじゃ!!』
『・・・では私はこれで』
「『ご苦労様』」

万歳のポーズでウッキウキなノインと子ウサギぬいぐるみを抱えて、ゼクスは蕩ける瞳でノインを見つめながら部屋をあとにした。


少しして、現在ギルミアが使っている部屋・・・アハトの隣の部屋に着いたゼクスは扉をノックした。

「---はい」
「ああ、アハト、私だ。ゼクスとノインだ」
「・・・少々お待ち下さい」

そう言ってアハトが扉を開けてくれた。
片腕には眠そうなギルミアを抱えている。

「すまない。お昼寝の時間だったか」
「まあ、ちょっとなら平気ですが・・・母上、どうされました?」
「・・・・・・うたぎたん・・・」

寝惚けているのと、長年声を『はい』以外封じられていたために舌っ足らずな発音で、ギルミアは年の割に幼い感じがする。

そしてうさぎさん、と上手く言えていないところが、3人をめちゃくちゃ萌えさせた。

『うん。うさぎさんだけど、ゼクスの奥さんでアハトとシュルツのお母さんなんだよ。ノインって言うの。ノンノンって呼んで』
「・・・うー? ・・・のんのん? あはとのおかーたん?」
『---!! かわっ! うんうん、そーなのよ。だからアハトの番いのギルミアちゃんもノンノンとゼクスの子供なのよー! おかーたんって呼んでも良いのよー!』
「・・・おかーたん?」
「「ああー! 可愛過ぎるー!!」」

ギルミアとノインのやり取りをポカンと見ていたアハトは、我に返るとゼクスに詰め寄った。

「父上?! 母上が喋ってるんですが?! 何時からぬいぐるみを辞めたんですか?! ていうかやっぱり母上なんですか!! めちゃくちゃややこしいけれども!!」
「・・・うん。お前も落ち着こうね? ・・・そういうところ、ノインにそっくりだよねえ・・・」

苦笑してアハトを宥めるゼクス。

その間にノインはギルミアに子ウサギぬいぐるみを渡していた。

『コレねえ、おかーたんからのプレゼント。イツキちゃん・・・ギルミアちゃんの義理の弟になる子にもあげたの。君を護ってくれるからね、一緒にいてあげてね?』
「・・・・・・ふああ・・・・・・やらかい・・・・・・ありあと、おかーたん」

そう言ってもふっと顔を埋めてうとうとし始めたので、ゼクスとノインはそっと離れた。

「アハト、ノインの手作りだ。性能はノインよりも劣るが、魔法と物理耐性、状態保存の魔法がイツキによって付与されてる。常に側に置くように。もっとも自力で動くけどな」

そう言って苦笑した。

『ソレもだけど、可愛い子が可愛いぬいぐるみ抱っこって可愛いよね---!!』

再び興奮のノインに引きつつ、アハトはギルミアを抱き直した。

「・・・・・・ソレは、感謝します。ありがとうございます。じゃあ寝かせるので、これで・・・・・・」

アハトが扉を閉めようとして、ゼクスが思い出したように告げた。

「あっ、イツキが今度ウチに来てお茶しながらギルミアに会いたいそうだ。可能なら調整するから、彼に確認してくれ」
「---! 分かりました。後ほど・・・」
「ああ、じゃあな」

今度こそ扉が閉まり、ゼクスとノインは去って行った。


寝室のベッドにギルミアを寝かせて、アハトは溜息を吐く。

「お茶会・・・。命令とは言え、一度は攫った相手だからなあ。イツキは気にしてないだろうが・・・ギルは・・・どうだろうか」

それにしても・・・。

「悔しいが母上の言うとおり・・・メタクソ可愛い・・・!」

ぎゅってされている子ウサギぬいぐるみが、イツキのところのフェアグリンと同じく、親指を立ててグッとした。

「---そういうところも母上そっくりだな」

アハトもシュルツのように笑った。



ギルミアはこのぬいぐるみにどんな名前を付けるんだろうな。

しっかり護ってくれよ。


アハトは穏やかに眠る愛しい番いの頬を撫ぜた。















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