優しい庭師の見る夢は

エウラ

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95 お父さんとお母さんと一緒(sideフォス)3

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それからとんとん拍子に話が進み、僕は時折、地面をゴロゴロ転がる。
たまに様子見にアイツらが来るからだ。ちゃんと仕事してますよアピール。

アイツら、イツキが今この森にいないことに気付いていないようで、一向に罠にかからないと、だいぶイラついてきている。

そして精霊王や精霊達は、姿を消しているから、そばにいても気付いていなくて、べらべらと僕に愚痴を言う。

「おい、もっと泣きわめけよ! 管理者のところに聞こえてねえんだろうが!」
「なんなら、叫びたくなるように痛めつけてやるぜ」
「いい加減、捕まえて帰らねえと、王が煩いんだよ!」

───王……王様自ら、犯罪行為に手を染めてるのか。アホだな。

白けた目で見る僕に気付かずに、槍や剣で突いてきて、僕に声を上げさせようとする奴隷商人達。
魔法で直せるし、防ぐことも出来るけど、うっとうしいな。

仕方なく、キューイキューイと大きく鳴いてみる。それに満足して、でもイラつきながら去って行く輩を冷めた目で見送り、気疲れから地面をゴロゴロ転がっていると、闇と光と地の精霊王がやって来た。

それからすぐに、大きな力……竜人の気配がした。
管理者のイツキの気配もするから、森に帰ってきたんだろう。

『じゃあ、打ち合わせ通りに』
『りょーかい』

そうしてゴロゴロ転がること数分、闇の精霊王達とやって来た竜人とで話がついたようで、竜人は去って行った。

『ヨシ、もういいぞ』
『はーい。じゃあ、僕はまだここでゴロゴロしてるから、捕まえたときは教えてね』
『分かった。……あまり地面を抉るなよ。地の精霊王が睨んでるぞ』
『あ、ごめんね?』
『……あとでまとめて再生するから、いい。仕方ない』

そう言って精霊王達も消えた。
僕はアイツらが捕まるまでは、隷属されたフリを続けるから。

そうしてゴロゴロすること二日。

やっとというか、もうというか微妙だけど、アイツら全員捕縛されたというので、僕は演技を止めて首輪を外した。

『その首輪、どうするの?』
『ああ、証拠品として押収するから、竜の子の家の影達が欲しいって』

光の精霊王がニコニコしながら首輪を手に持った。

『いいよ。僕が持ってても仕方ないし。壊さないで外してよかった。面倒くさいから砂にしちゃおうかと思ってた』
『……まあ、お前なら出来るだろうが。それで、これからイツキの家に行くか?』

うっかり粉々にしそうになったけど、止めてよかった。
そう言ったら、闇の精霊王が苦笑した。そのあとイツキの家に誘ってくれて、僕は羽根も尻尾もピーンと伸ばしてウキウキになった。

『え、いいの?』
『ああ。森の中に棲めるように取り計らってやる。そういう約束だからな』

ちゃんと覚えててくれたんだ。やった!

『イツキにはで押し通すから、変なことは言うなよ?』
『分かってるよ。うわあ、楽しみ』

こうしてルンルンとくっ付いていって、イツキの家のテラスで丸まって一休み。
やがて昼前に一階に下りてきたイツキに二度見三度見されて、内心でふふふ、と笑う。

そしてイツキの微笑みに既視感を覚えた。

……かつて自分を滅ぼした、異世界の勇者の最後の顔が───。

そういえば、気配や魔力が、似てる───?

こっそり闇の精霊王に聞いてみたところ、実はイツキは神の手によって転生した、元異世界人だという。母親はこの世界のエルフの血を引いていたそうだ。しかし父親は異世界の男性だという。

もしかして、その父親って、あのときの勇者なんじゃ。元の世界に帰るには、僕を倒さないといけないとか、言ってた気がするし───。

今となっては知るよしもないが、可能性はあるかもしれない。あのときの勇者は十代後半くらいに見えたが、異世界とこちらの時間軸が同じとは限らない。

たぶん、これは必然の出会いじゃないかな。

それなら、僕は、生涯をかけてイツキを護ろう。
あの微笑みを、絶やさないように。

従魔となって、死ぬまで側にいよう。

僕が今、ここに生まれた意味が、きっとこれなんだ。






──こうして見事、従魔の座を手にするのだけど。番いの竜人の嫉妬と独占欲により、竜人の従魔として契約することになった。

「お前がイツキと契約して、四六時中、くっ付いているのは我慢がならん。愛し合うところを覗かれるのも当然。これでも抑えてる方だ」
『ははは、さすが竜人、番いへの愛が重いねえ。さすがにイチャイチャしてるところに邪魔には入らないよ。さっきは、急に目の前で始まっちゃったから、興味津々で?』

僕、自慢じゃないが、エンドラのときには生涯独身で番いなし。ああいう経験がないから凄く気になっただけで、出歯亀はしないよ。

『イツキには自由で、笑ってて欲しいもん。僕も否やはないよ。これからよろしくね、シュルツ』
「……よろしく頼む、フォス。その力でイツキを護ってくれ」

僕達はお互いの拳をコツンとぶつけて、そう言って笑った。
シュルツも精霊王達から、僕の前世を聞いたのだろう。すんなりと受け入れてくれた。
イツキを護る力は、いくらあっても足りないくらい。

さあ、これで退屈な日々とはおさらばだ。




───このあと、イツキがいろんな意味で危険だらけだと知るのはもうすぐ。

何もないところで蹴躓き、足を踏み外し、ぼーっとして木々にぶつかりかけて木の方が避けたり……。

『……エルフ、それもハイエルフなんだよね?』
「そうだな」
『……僕、鈍くさいエルフって、初めて見た』
「ちょっと訳ありでな……たぶん一生、こんな感じだ」
『……』

あとでシュルツ達に理由を聞いて怒髪衝天だったが。

自分達が護ってやればいいと結論を出し、ドキドキハラハラな毎日に笑っている。

ちなみに、精霊王が僕の生まれた里に連絡を入れると言ってたのはただの誤魔化しで、当然、そんなことはしていない。
僕は彼らとは棄てられたときにすっぱり絶縁してるから。
向こうも死んでると思ってるだろうし、僕も会いたくないから、いいんだ。

イツキには内緒ね。














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