不思議の森の小さな家

エウラ

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18 番う 1

※R15なので本番行為の描写はありません。




今はまだ朝ご飯を食べ終えたばかりの時間。つまりはバリバリの朝。
そんな爽やかな空気の中での僕の爆弾発言に、アイのか細くなっていた理性の糸がプツンと切れたらしい。

「……ユーリ、いいんだな?」
「え? うん。と言っても僕はその手のことは全くの初心者で未経験で、何をどうするのか分からないんだけど。だからアイに全部任せていい?」

首を傾げてそう言えば、アイは無言で天を仰いでから深い溜め息をついた。

「ああ、もちろん任せてくれ。ユーリには痛い思いをさせないように、細心の注意を払って導いてあげる」

優しげな表情で僕をいわゆるお姫様抱っこでベッドに運ぶアイに、僕は力を抜いてもたれかかる。
アイはいつもの僕の寝室ではなくてアイ用の部屋の寝室に向かった。

「あれ、こっちなの?」
「ああ、こちらの方が大きくて作りがしっかりしているだろう。二人で激しい運動をするなら、こちらのベッドの方が安心だからな」
「……激しい、運動……」

そうなのか。激しいのか。運動なのか。……僕、体力ないけど大丈夫かな?

なにもかも初めてで予想がつかないから困るなあ。でもアイが大丈夫そうだからいいか。

そうして僕を優しくベッドに下ろすと、額に口付けを落とす。頬や目蓋、鼻先、そして唇にも触れるだけのバードキス。

これは番い宣言したときからいつもされているから、気恥ずかしいけど慣れてきた。でもその先はまだない。まあ、この先にどういうことがあるのか知らないんだけど。それをこれからアイが教えてくれるわけで──

「最後にもう一度確認するぞ。本当に番っていいんだな?」
「うん。まだアイほどの思いかどうかは分からないけれど、僕はこうして触れあうことをアイ以外の人としたくない。想像しただけで気持ち悪い。だからアイとだけシたい」

それにこんな森に入ってまで僕を探しに来てくれる人なんて、番いアイ以外にいなさそうだし。もしあとでやっぱり間違いでしたってなっても、アイ以外の人はイヤだ。
それならこの経験だけを胸に一人で生きていく。それくらいの覚悟がある。

「分かった。じゃあ最初にこれを飲んでくれるか?」
「なあに? キラキラ、アイの髪の色みたいな綺麗な金色」

僕の親指の爪ほどのつるんと光沢のある薄い……鱗?

「これは龍人なら誰でも持っている逆鱗という鱗だ。番いにだけ渡す、たった一つのもの。これを飲んで。あとは自然と溶けて吸収されてユーリの一部となる」

アイの指先には、いつ出したのかそんな鱗が摘ままれていた。

「へえ、結婚指輪みたいな? あなたは私のものですよって分かるようになっているのかな? 不思議」
「ああ、人族で夫婦で付けるペアリングのことか。まあ似たようなものかな」
「じゃあ、はい。あーん」
「……少しは疑いをだな……はあ、あーん」

んぐ……もぐっ、ゴクン。
アイだから、信頼してるからやってるんだよ。

呆れながらも口に入れてくれたその鱗をゴクンと飲み込むと、すぐに身体がほわんと温かくなった。そのすぐあとには、僕はお酒で酔ったみたいに頭がふわふわしてきて、いつの間にかアイからの深い口付けを受けていた。




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