不思議の森の小さな家

エウラ

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38 手持ち無沙汰なので 2

何を作ろうかな。

僕も五歳でこっちに来たから、地球の便利な道具ってそんなに多く知らないんだよね。
向こうの家族が使っていたスマホとかは何となくでできたけど、扇風機やエアコンはそもそも魔法があるから必要ないかも?

「うーん……」
「何を悩んでいるんだい?」

目を閉じて唸っていると、エルヴィンが声をかけてきた。

「あのね、錬金術で何か作ろうかと思ったんだけど、何がいいかなと」
「作りたいものが浮かばないってこと?」
「そう。ほら、僕って小さいときに転移したから向こうの世界のものをあまり知らないし、かといって森に引き篭もってたからこっちの生活必需品も分からなくて」

そう言うと、エルヴィンは一瞬顔をしかめたけどすぐにニコッと笑った。たぶん親から引き離されてしまった当時の五歳児の気持ちを想像したんだろうな。
そりゃあしばらくは寂しかったしホームシックにもなったけど、エルリオがいたからけっこう平気だったんだけどな。

でもまあ、ここでエルヴィンにわざわざそれを言ったところで納得はしないんだろうし。

だから気づかないふりをして流すことにする。

「ねえ、エルさんだったら『こういうのがあったら便利だな』っていうもの思いつかない?」
「そうだなあ……既存の魔導具でこういうふうに改良されたらな、というのはいくつかあるけど」
「そうなんだ。もし現物があれば確認して改良できるかも」

森の家にあるのはエルリオが錬成したものか僕が錬成したものだから参考にならない。
やっぱり僕よりも長生きだから、こういうとき知識とかすごく助かる。

──あ。

「そういえばエルさんって歳はいくつ? 僕、アイの歳は三〇〇歳って聞いたけど、他の人は聞いてなかったよね」
「ああ、そういえば言ってないね。僕は二〇〇歳だよ。見た目は二十歳くらいでしょ。ある程度成長するとそのあとはゆっくりと歳を取るから、見た目では分かりづらいよね」

そう言ってにっこり笑うエルヴィンは、確かにちょっと幼げな様子がある。まあこれはエルさんの性格もあるのかもしれないけど。

「確かにエルリオはもっと長生きだけど、見た感じはエルさんみたいだもんね。中身はエルさんよりも幼い感じだけど」
「ふふ、そうなんだ。うん、ユーリくんもお義父さんによく似てると思うよ。何かさ、種族とか関係ないよね」

ほわほわしてて可愛いよね、って微笑まれて、嬉しいけど恥ずかしくなる。でもエルリオに似てるって言われてやっぱり嬉しい。

──そういえば、僕、寿命で確認していないことがあった。

「ねえエルさん。僕って人族でしょ。龍人よりもずっと早く死んじゃうでしょ。じゃあアイとはあと数十年しか一緒にいられない?」
「──えっ!?」
「はっ!?」

あれ、エルヴィンに聞いたのにアイとカイン副団長の戸惑った叫び声が聞こえた。何で?

「……兄上? まさかとは思うけど、ちゃんと話していないの? 番ったのに?」

僕の斜め向かいに座っているエルヴィンが、笑顔なのに何か不穏なオーラを出している。

「え、あのエルさん……何か怒ってる?」
「ああ、ユーリくんは悪くないよ。悪いのは浮かれポンチのバカ兄上だからね。……兄上、ちょーっとアッチで話し合おうか?」
「…………あ、ああ」

音もなくスクッと立ち上がったエルヴィンは無言でアイのもとに行くと、ドスの効いた低音でアイを顎で立たせ、仮眠室らしい部屋に二人で入っていった。

残された僕とカイン副団長は青い顔をしながら無言で見つめ合う。

「……」
「……エルさんって、怒らせたら怖い人だった?」
「ええと、私も初めてなもので、何とも……」

そう言って僕達はソロリと扉を見た。
防音の魔法でも張ったのか、静まり返る部屋が妙に不気味だった。









※ユーリがエルヴィンを会話で呼ぶときは『エルさん』で心の中では『エルヴィン』と呼ぶことに統一しました。
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