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15 事件です!! その2
しおりを挟む「サナが居ないってどういう事だ!!」
夕闇が迫る冒険者ギルド内では怒号が響いていた。
つい先ほど依頼を終えて戻ってきたヒョウガは、いつにない雰囲気のギルドに違和感を覚えた。
ギルマスを見つけて話を聞く。
そこでサナが行方不明と聞かされたのだ。
「すまん! 目を離した隙に連れ去られたようなんだ!」
「トイレに行くと言って中々戻らずに様子を見に行ったらいなくて・・・」
「---まさかギルド内で攫われるなんて・・・」
口々に叫ぶように話す内容を耳に入れながらギルマスに詳しく聞くと、どうやら最近、サナの事が噂になっていたようだ。
「---俺は知らないが、いったいいつの間に・・・?」
「ああ、柄の悪いヤツらがこそこそしているのを見かけたが、どうもサナが猫又だって噂が立っていたようなんだよ」
「隠しててもチラッと尻尾が見えるだろう?」
「加えてあの容姿だ。かなり目立ってたらしい」
・・・気が弛んでいたのか。
危険を察知出来なかった。
恐らく闇オークションの人攫い。
稀少な猫又を奴隷として売りさばくつもりなんだろう。
・・・なら、傷付けることは無いと思うが・・・。
「---サナ、たぶん泣いてるよな・・・」
「ヒョウガにべったりだったもんな」
「早く助けないと」
「手の空いてるヤツは出来るだけ手がかりを探してくれ」
そんな事を話しているところに、この街の警備隊の者がギルドにやって来た。
誰かが知らせたらしい。
ギルマスを見つけると、執務室で詳しく聞きたいと言ってきたので、サブギルマスに指揮を任せてヒョウガと共に執務室に向かう。
「・・・あの、何故冒険者のヒョウガ殿が一緒に・・・?」
警備隊の隊長だという犬の獣人でシップと名乗った男が困惑しているが、構っていられない。
「今回攫われたサナはヒョウガの番いなんだ」
ギルマスが簡単に説明する。
それにギョッとして青ざめる隊長。
「---なんだ、何かあるのか?」
ギルマスとヒョウガがジトッと睨む。
心なしか冷や汗をかいている隊長。
「---実はその、今回の事件はですね、前々から領主様主導で警備隊が調査をしておりまして、闇オークションを一気に潰そうと、重要人物を泳がせていたのですが・・・」
室内が剣呑な空気になった。
ヒョウガの目が据わっている。
「・・・その、どうやら猫又らしき子供を攫うという情報を掴んで、張り込んでいまして・・・・・・」
「・・・・・・サナを囮に使ったのか」
ヒョウガの低い声が響いた。
それに合わせるように室内の温度が急激に下がった。
警備隊長がガタガタ震えだす。
「あの子はまだ5歳の子供なんだが? 俺が保護して大切に育てている俺の番いなんだが?」
「・・・・・・ひ、は、はい・・・・・・」
「---一気に潰そうとか、そんな事は俺には関係ない。俺は俺の命より大事な番いを助けに行くだけだ。場所を教えろ。もちろん把握してるんだよな?」
コクコクと高速で首を振る隊長。
半分涙目で真っ青だ。
「あ、案内するので・・・・・・一緒にきき、来てくださっ・・・!」
ガタガタしてどもる隊長を放って装備を確認し出すヒョウガと、ギルド内に通達して戦力確保に動くギルマス。
隊長は涙目で、外に待機させていた部下達に事の次第を伝えてギルドの支度が調い次第、アジトに向けて出発をした。
---まさかヒョウガ殿の番いだったなんて・・・。
自分達の調査が甘かった。
ヒョウガ殿は冒険者ランクAで、もうすぐSになると言われている黒豹の獣人だ。
めちゃくちゃ強い。
俺達なんか目じゃない。
---猫又君に傷一つでも付いていたら俺達、死ぬ・・・!!
隊員達全員一致で思った。
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