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16 僕のヒーロー
しおりを挟むヒョウガさんを思い出したら一気に涙腺が緩んでぼたぼたと涙が溢れてきた。
ヒョウガさん、ヒョウガさん。
僕はここにいるよぅ。
助けてよ・・・。
猿轡をされてるから声にはならないけど、涙がぼたぼたと零れ落ちて止まらない。
目の前の二人はギョッとして慌ててハンカチを目に当ててくれた。
「ごめんね。恐いよね。きっともうすぐ助けが来るから頑張って」
コッソリ小声でそう言ったお兄さん達は、監視役の男に言われて部屋から出て行ってしまった。
扉には外から鍵がかけられた。
僕は精神的な疲れと泣き疲れたせいで体を横にしたまま動けずに眠ってしまった。
それからどれくらい経ったのだろう。
誰かの話し声が聞こえる。
「---から、・・・・・・って・・・」
「・・・・・・ふざ・・・・・・サナ・・・!」
・・・ヒョウガさん?
ヒョウガさんの声が聞こえる。
夢かな?
でも目が開かない・・・声も出ない。
どうして?
『・・・ヒョウガさん・・・?』
念話で話しかけてみる。
ヒョウガさんなら気付くはず・・・。
『ソコにいるの? ヒョウガさん? 助けてぇ・・・僕、ぼく・・・・・・ここ・・・』
「っ!! サナ?! 俺が分かるか?! ヒョウガだ。助けに来たぞ!」
そうっと壊れ物みたいに抱き上げてくれた逞しい腕はヒョウガさんの腕だ。
すりっと頬を擦り付ける。
僕の大好きなヒョウガさん・・・。
助けに来てくれたんだ。
嬉しい・・・・・・僕の・・・・・・ヒーロー・・・。
「---サナ?! おい、しっかりしろ! サナッ!!」
『あり、がと・・・うれし・・・・・・』
ホッとしたら、ぎりぎり保っていた僕の意識はまた暗闇の中に呑み込まれて消えてった。
警備隊とヤツらの案内で人攫いのアジトに乗り込んだ俺は真っ先にサナの身柄の確保に移った。
ボロい物置小屋にサナがいると連絡を取っていた警備隊が先導する。
俺は探索魔法でサナの位置を確認すると先に見張りの男共を殴って気絶させ、そっと扉を壊して入った。
何人かを残して他の警備隊は犯人逮捕に向かった。
俺は奥に縛られて猿轡をされたサナを見つけて駆け寄った。
「サナ、助けに来たぞ!」
抱き起こして拘束を解いて声をかけたが反応がない。
首筋を触ると酷い熱が出ていた。
呼吸も荒く、息が熱い。
こんな劣悪な場所で精神的なダメージをくらえば体調も悪くなるだろう。
「---お前ら、こんな子供に何させてるんだ!」
「---それは、済まなかったと・・・悪かったって」
「謝って済む事か! 巫山戯やがって、大切なサナを!」
怒りに任せて怒鳴ってしまってからハッとしたら、サナの念話が聞こえた。
『・・・ヒョウガさん・・・? そこにいるの? 助けてぇ・・・』
「---サナ!」
俺の腕に微かに擦り寄ると、弱々しい念話でポツリとありがとうと言った後、意識を失った。
サナを浄化魔法で綺麗にして自分のローブで包むと、小屋を後にする。
隣の建物では闇オークションのヤツらや買い付けにきた貴族達を捕縛する警備隊のヤツらが入り乱れて混乱していた。
ヒョウガは犯人達の目星を付けるとパラライズの魔法を無詠唱で発動し、痺れさせた。
警備隊がポカンとしてる間に犯人達を魔法で拘束し、一纏めにすると警備隊の隊長に先に戻ることを告げる。
「サナが熱を出しているから治療の為に先に街へと戻る。後で事の些細を報告してくれ。内容によっては相応の対応をさせて貰う」
「---っひ・・・りょ、了解したっ!!」
その返事を聞いて踵を返すとあっと言う間に消えた。
「・・・・・・ヤバい人を敵に回したかも・・・・・・」
その場にいた警備隊達は冷や汗が止まらなかった。
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