あの湖で、君と

kiwi(キウイ)

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エリック

3.

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 それ以来、エリックはオリバーと毎日のように湖で遊ぶようになった。

 齢十二歳にして大学に通い、日頃は対等に大人と渡り合うような生活を送るエリックにとって、オリバーは初めてできた同年代の友達だった。

 エリックはオリバーがかわいくて仕方がなかった。彼の屈託のない笑顔、大きな眼鏡の向こうで輝く瞳、全てがいとおしい。  

 彼はオリバーへの恋心をひた隠しにしていたが、内心では、触れてみたいという抑えきれない欲望を抱いていた。

 オリバーは、エリックが使う魔術を、いつも楽しそうに見てくれた。また、二人で石投げや水鉄砲で遊んだりもして、思う存分、子供らしい時間を過ごした。

 普段はアッシャーウッドグループの御曹司として振る舞うエリックだが、オリバーといる時だけは、ただの好奇心旺盛な少年になれた。  
 
 この湖は、二人だけの楽園だった。

 ある日、エリックは、オリバーに尋ねた。

 「ねえ、君は泳がないの?」
 
 エリックは湖に潜って、水草の間を縫うように泳ぎ、魚を眺めるのが何より好きだった。それに、日差しが強い今の時期は、水の中から見る水面は、きらきらと輝いてすごく綺麗だ。

 オリバーは少し俯き、恥ずかしそうに答えた。

 「オレ、泳げないんだ」

 羞恥で顔を赤らめ、もじもじするオリバーの姿に、エリックの胸はきゅんと締め付けられた。
 
 (かわいい)

 エリックは思わず口に出しそうになるのを堪え、悪戯っぽく笑った。

 「じゃあ、僕が泳げるおまじないをかけてあげるよ」

 エリックは、自分の中にある魔力の源泉、魔物である水棲馬ケルピーの力を、ほんの少しオリバーに分け与えることを思いついた。それなら、一時的にオリバーの身体を水に適応させることができるはずだ。

「オリバー、目をつぶって」

 オリバーは何も疑わず、素直に大きなレンズの眼鏡の奥の瞳を閉じた。

 エリックはゆっくりとオリバーの顔に近づき、彼の眼鏡を外す。オリバーは一瞬、目蓋まぶたの向こうに光の網目を感じて戸惑ったが、そのままじっと待っていた。

 今から何をされるのか、微塵も警戒していないオリバーの少し開いた柔らかな唇に、エリックはそっと自分のものを重ねた。

 オリバーは驚きに目を見開いた。

 エリックの唇から流れ込んできたのは、温かく、そして甘い、特別な魔力だった。それは、静かにオリバーの体内へと流れ込んでいく。

 エリックはゆっくりと唇を離した。まだ少しぼんやりとしていたオリバーは、エリックの中に白いたてがみの馬を見た気がした。それは、彼に流れる血の力が具現化して見えたものだった。

 「これで息もできるし、まるで人魚みたいに、自由に泳げるようになるから。大丈夫、おいで」

 エリックはオリバーの小さな手を取り、そのまま湖の中へと誘った。

 湖に沈んだ瞬間、オリバーは狂喜した。陸地にいる時と同じように、水中で自由に体を動かすことができる。全く息継ぎをすることなく、しばらく潜って泳ぎ続けたオリバーは、水面まで上がっていくと、驚いて叫んだ。

 「すごい!すごい!エリック、オレ、泳げた、泳げたよ!」

 二人は湖の中をしばらく自由自在に泳いだ。光の筋が差し込む湖の中を、追いかけっこをする。
 
 好きなだけ泳いで魔力を消費してしまうと、エリックはオリバーを抱き寄せ、唇から魔力を渡すことを繰り返した。その行為は、二人の中で特別な意味を持つ秘密となった。
 
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