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エリック
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エリックがいつものように湖で遊んでいると、ふと目を離した隙にオリバーがいなくなった。
「オリバー?」
エリックが周囲を見回していると、木陰から大きな影がぬっと姿をあらわした。
「お前かぁ、エリックってのはよぉ~」
その男、アベルは片足義足にも拘わらず、小さなオリバーを羽交い絞めにしてガッチリ拘束していた。オリバーの喉元にはキラリと光る刃が押し付けられていた。
「こいつのおかげで、簡単に忍び込めたぜぇ」
アベルは卑しい笑みを浮かべながら、オリバーを指さした。彼はなぜか眼鏡をかけていなかった。アベルは眼鏡を奪いオリバーの力を解放させて、張り巡らされた結界を壊したのだった。
オリバーは抵抗しようとしたのか、苦しそうに呻いた。
「オリバーを、離せ!」
エリックはオリバーを人質に取られ、一瞬、動きをためらった。そのわずかな隙を、アベルは見逃さなかった。彼は隠し持っていた魔道具を取り出し、不気味な呪文を唱え始める。
「うわっ!」
エリックの体が突如、炎に飲み込まれた。肉が焼け焦げる匂いが周囲に立ち込め始める。
強烈な熱さにエリックはもだえ苦しんだ。
「エリック!」
オリバーが悲痛な叫びを上げた。
(まだだ、まだ殺せてねえ!)
アベルは、まだ呪詛がエリックの核心まで届いていないことを察した。彼はオリバーを乱暴に放り投げ、両手で魔道具をしっかり持ち、そして自らの持てる力の全てを呪術に注ぎ込む。
(俺の魔力だけじゃ足りねえな!ここの湖にある魔力も借りるぞ)
アベルの足元から、湖の水面にまで、禍々しい魔力の波紋が広がっていく。とどめの一撃が完成しようとした、その瞬間だった。
「もうやめて、お父さん!」
突如、オリバーの目が青白く光った。
彼の視線は炎に包まれるエリックの背中に、くっきりと浮かび上がった巨大な魔術陣を捉えていた。
オリバーの小さな手が、宙に浮かぶ術式――アベルがエリックにかけた呪いの核――を掴み、引き剥がそうとする。
「うぎゃああああ!」
アベルは突然の灼熱に咆哮した。
オリバーが術式に直接干渉し、未完成の魔術を弄ったことで、呪詛は術者に反転し、強大な魔力がアベル自身を襲ったのだ。
「クソッ、クソッ、このガキ!」
アベルは怒りに震え、狂ったように暴れ、オリバーを吹き飛ばした。オリバーは悲鳴を上げる間もなく、そのまま湖の中に落ちていった。
「っ、お前、よくも!」
エリックは全身を包む炎の痛みを忘れ、アベルをきっ、と睨みつけた。
それだけで、アベルの体内の水分が全て奪われ、肉体は燃え尽き、あっという間に彼は灰になって風に消えた。
「オリバー!」
エリックの背中はまだ呪詛の炎に焼かれていたが、そんなことは構わず、彼は湖に飛び込んだ。
水中のオリバーは意識を失いかけていた。エリックは急いで彼を抱き寄せ、口から魔力を送り込み、オリバーを助ける。
何とか二人で水から這い上がり、湖のほとりで、互いを抱きしめたまま意識を失った。呪詛の炎は消えたが、エリックの背中には火傷の痕がくっきりと残っていた。
そして、その痕は消しても消しても何度もよみがえり、その後ずっとエリックを苦しめることになるのだった。
「オリバー?」
エリックが周囲を見回していると、木陰から大きな影がぬっと姿をあらわした。
「お前かぁ、エリックってのはよぉ~」
その男、アベルは片足義足にも拘わらず、小さなオリバーを羽交い絞めにしてガッチリ拘束していた。オリバーの喉元にはキラリと光る刃が押し付けられていた。
「こいつのおかげで、簡単に忍び込めたぜぇ」
アベルは卑しい笑みを浮かべながら、オリバーを指さした。彼はなぜか眼鏡をかけていなかった。アベルは眼鏡を奪いオリバーの力を解放させて、張り巡らされた結界を壊したのだった。
オリバーは抵抗しようとしたのか、苦しそうに呻いた。
「オリバーを、離せ!」
エリックはオリバーを人質に取られ、一瞬、動きをためらった。そのわずかな隙を、アベルは見逃さなかった。彼は隠し持っていた魔道具を取り出し、不気味な呪文を唱え始める。
「うわっ!」
エリックの体が突如、炎に飲み込まれた。肉が焼け焦げる匂いが周囲に立ち込め始める。
強烈な熱さにエリックはもだえ苦しんだ。
「エリック!」
オリバーが悲痛な叫びを上げた。
(まだだ、まだ殺せてねえ!)
アベルは、まだ呪詛がエリックの核心まで届いていないことを察した。彼はオリバーを乱暴に放り投げ、両手で魔道具をしっかり持ち、そして自らの持てる力の全てを呪術に注ぎ込む。
(俺の魔力だけじゃ足りねえな!ここの湖にある魔力も借りるぞ)
アベルの足元から、湖の水面にまで、禍々しい魔力の波紋が広がっていく。とどめの一撃が完成しようとした、その瞬間だった。
「もうやめて、お父さん!」
突如、オリバーの目が青白く光った。
彼の視線は炎に包まれるエリックの背中に、くっきりと浮かび上がった巨大な魔術陣を捉えていた。
オリバーの小さな手が、宙に浮かぶ術式――アベルがエリックにかけた呪いの核――を掴み、引き剥がそうとする。
「うぎゃああああ!」
アベルは突然の灼熱に咆哮した。
オリバーが術式に直接干渉し、未完成の魔術を弄ったことで、呪詛は術者に反転し、強大な魔力がアベル自身を襲ったのだ。
「クソッ、クソッ、このガキ!」
アベルは怒りに震え、狂ったように暴れ、オリバーを吹き飛ばした。オリバーは悲鳴を上げる間もなく、そのまま湖の中に落ちていった。
「っ、お前、よくも!」
エリックは全身を包む炎の痛みを忘れ、アベルをきっ、と睨みつけた。
それだけで、アベルの体内の水分が全て奪われ、肉体は燃え尽き、あっという間に彼は灰になって風に消えた。
「オリバー!」
エリックの背中はまだ呪詛の炎に焼かれていたが、そんなことは構わず、彼は湖に飛び込んだ。
水中のオリバーは意識を失いかけていた。エリックは急いで彼を抱き寄せ、口から魔力を送り込み、オリバーを助ける。
何とか二人で水から這い上がり、湖のほとりで、互いを抱きしめたまま意識を失った。呪詛の炎は消えたが、エリックの背中には火傷の痕がくっきりと残っていた。
そして、その痕は消しても消しても何度もよみがえり、その後ずっとエリックを苦しめることになるのだった。
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