【完結】悪役令嬢のカウンセラー

24．クララ様

　ようこそいらっしゃいませ、クララ様。わたくしがエリザベートですわ。


　はい、えぇ、コーラとポテトチップスですわね。かしこまりました。


　えぇ、そうですか……アナレナ様とルーカス様のご紹介で……イヤな予感がいたしますわ。いえ、なんでもございません、ひとりごとですわ、ほほほほ。


　それで、アナレナ様とルーカス様はお元気でいらっしゃるの？　まあ、あらー、さすがですわねぇ。たまげましたわぁ。


　そう、初代漫才王として君臨なさり、皇后陛下の病を完治なさった功績を讃えられ、アナルカお笑い工業ギルドを立ち上げ、各地にお笑い芸人を派遣なさって病人を癒してらっしゃるの。素晴らしいですわ、好きなことをやれて、それが人助けにもなるなんて……。悪役令嬢転生冥利に尽きますわねぇ。


　それで、クララ様は何をお望みでして？　あぁ、ヒップホップでてっぺん取りたい？　そうですか、もうてっぺんにいらっしゃるのでは？　あぁヒップホップ人口ひとりのてっぺんではなく、少なくとも百人、いえ千人のてっぺんと……


　なるほどなるほど。ところで衣装はどうなさるの？　ドレスとヒップホップってものすごく合わないのでは……？


　えええぇぇぇーーー、生の早着替え初めてみましたわー。ううううわぁぁぁ、おどってますわ、歌ってますわ、ビートを刻みまくりですわ。いいいいえやぁぁぁ、エイ、ヨーヨー。クララ、クララ、クララ、クーラーラー。


　素晴らしいですわ、最高でしたわ、魂が震えましたわ、また転生するかと思いましたわ。

　クララ様、いえクララ姐さんと呼ばせていただきますわ。えぇ、やりましょう、ヒップホップを広めましょう。


　早速ですが、異世界で何かを流行らせるには、権威づけが手っ取り早いですわ。えぇ、そうですわ、王家と教会ですわ。クララ姐さん、ぜひとも次回の聖女選でてっぺん取ってください。そうですわ、ヒロインに聖女の地位を渡してはなりませんわ。権力、資金力、筋力、暴力、なんでも使ってくださいませ。


　聖女になられたら、神との対話で神託を得るのですわ。えぇ、困ったときの神託ですわ。便利ですわ。そして、聖女のお披露目の場で神への祈りのヒップホップ舞を披露するのです。衣装は今履いていらっしゃるサルエルパンツがピッタリですわ。色は白がよろしいと思いますけれど。


　歌はどういたしましょうね？　反体制的な内容はよろしくありませんわ。神を讃え、王家におもねる歌にしなければいけませんわ。えぇ、ヒップホップ人口を増やすにはスポンサーが必須ですもの。


　歌だけだと寂しいですかしら？　え、屋敷で踊るときは、乳母に鍋と木皿でビートを刻んでもらっていらっしゃるの？　最初は泣いてイヤがられたけど、今はノリノリなんですの……？
ほほほほ、頼もしいですわ。




　悪役令嬢
　踊りたい衝動
　ヒロインは不要
　聖女で上等
　捧げたい熱情
　増えろヒップホップ人口