【完結】悪役令嬢のカウンセラー

32．ライラ様

　ようこそいらっしゃいませ、ライラ様。エリザベートと申しますわ。

　はい、ミルクレープとミルクティーですわね。かしこまりました。


　えぇ、アマリリス様からのご紹介ですわね。お元気でいらっしゃいますの？　まぁ、王弟殿下とラブラブ。すごいですわ、あっぱれですわ。まあまあ、ほほほほ。押して押して押しまくったのですね。ふふふ、アマリリス様、さすがですわねぇ。


　はい、えぇ、もちろんですわ、お気軽にお話しなさってくださいな。まあ、なるほど、あらーふふふ。お好きな殿方がいらっしゃるのね。どのような方なの？

　背がスラリと高くて、煌めく銀の髪に、満月のような金色の瞳、誰もが振り返る美貌で、政務に真摯に取り組まれ、武芸にも魔術にも秀でており、ツンデレで将来有望な第一王子……。


　まあ、王道ですわ、正統派ですわ、これぞ王子様ですわ。ほぅー……いいですわー、キュンとしますわぁ。


　それでそれで、ライラ様との仲はどのように？　まぁ、婚約なさっているの？　おめでとうございます。はぁー、久しぶりに華やかなお話しを聞きましたわぁ……若返る気分ですわぁ……。

　
　で、いつ結婚なさるの？　え、分からない？　ああ、そうですわね、まだお若いですもの。ええっ、婚約解消になるかも……。どうして！？


　ギャッ


　今よく聞き取れませんでしたわ。耳がちょっとかゆくて。もう一度おっしゃってくださる？


　ギャーーーー聞き間違いじゃなかった……ヒロインに奪われそうですって？

　ええー、いやー、ヒロインかー……あのーライラ様、諦めるという選択肢は……ひっ、嘘よ嘘、冗談ですわよ……。泣かないでくださいな。なんとか方法をみつけましょうよ、ね。


　ええと、そのー、ヒロインは他の攻略対象とはどうなっていますの？　あぁ、他には目を向けていないんですのね、第一王子が本命と……。


　あの、ちなみに他の攻略対象はどんな方たちですの？　はぁ、ええ、なるほどなるほど。優しい騎士団長、ヤンデレ教師、ライラ様のお兄様、チャラい学園の先輩ですか。


　ううーーー、しばらくお待ちいただけますかしら？　ええ、すぐに戻りますので！


　お疲れ様ー、オグちゃーん。あっ、お疲れ様サマンサ～。へっへー、これ今またはやってんでしょー？　そうそう、この前知ってド肝を抜かれたよね。それがさー、ヒロインとガチでぶつかっちゃって。うんうん、いやね、一応言ってみましたよ、諦めてみてはーーーってさー。そしたら泣かれた。そうなんよねー、ヒロインってその世界の絶対的強者じゃん？　ヒロインが勝つシステムじゃん？　無理ゲーだよー、もうギブだよー。

　あー、あー、あぁ、うん、ほーほー、なるほど。すげーオグちゃんマジで神。過去最高に尊敬した。お供えしたいレベル、うん知ってる、いらんてか。せやな、せやせや。よしこれ来た。行ってくる。ありがとありがとマジ感謝。じゃーねーい。


　ライラ様、信託を得て参りました。はい、えぇ、そうですわ、その通りです。はい、厳しい戦いになるとは思います、えぇ、もちろん。


　そうなのですわ、今から巻き直すにはスピードが重要ですわ。無駄漏れ抜けを一切作らず、効率的にフラグを制覇しませんと。お家に帰ったらフラグ一覧を作ってくださいませね。

　えぇ、重点的に教師を抑えてくださいな。ヤンデレですもの、味方にすれば頼もしいですわ。そう、そうですわ、味方が多いに越したことはありませんわ。優先順位をつけて計画的に。


　では、練習してみましょう。まずは上目遣いから。どうぞ。……ライラ様、目のハイライトが消えておりますわ。お話しになりませんわ。効果音でキュルンがつくイメージですわよ。

　では次、小走りで駆け寄る。さん、に、いち、キュー。……ライラ様、殺気が漏れてますわ。全くキュンとしませんわ、むしろ恐怖でドッキドキしますわ。


　では最後、押されてコケる、そして涙目で見上げる。さんはいっ。……なんでしょう、この相撲の寄り切り的な感じは……なんか強そう……。


　えええーこれ上手くいくんかいな……。

　ま、まぁいいですわ、いいとしましょう。ライラ様、演技力のアレなところは、幻影の魔術で補ってくださいませよ。くれぐれも、くれぐれもバレないように。

　
　いいですね、これから一か月はライラ様は流行り病で療養です。ライラ様の病気の濃厚接触者というテイで、第一王子も隔離に追い込んでくださいませ。


　一か月の間に、幻影の魔術でヒロインに化けて、王子以外のフラグを踏み抜いてくださいね。決してヒロインと出くわさないように、タイミングをうまく見計らってくださいませね。


　頑張れ
　ライラ様
　頑張れ‼︎