【完結】悪役令嬢のカウンセラー

みねバイヤーン

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83.ヘンドリック2

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 やあ、子猫ちゃんたち、今日もかわいいね。まさか僕のこと忘れていないだろうね? そう、ヘンドリック、愛の戦士さ。

 今日はね、子猫ちゃんたちが大好きなレディーに招待されてるのさ。僕の姉だって、彼女に夢中さ。ちょっと妬けるね。フフフ。


「ようこそいらっしゃいませ、ヘンドリック様。わたくしがエリザベートですわ」

「麗しの我が姫君。姫にお目にかかる機会をいただき、恐悦至極に存じます」

「さあ、ヘンドリック様、こちらにお座りくださいな。お飲み物は何になされます? いいスパーリングワインがございますが……」

「酒に酔って姫の言葉を聞き漏らすのは本意ではありませんので……レモン入りの炭酸水をいただけますか?」

「さあ、どうぞ。ヘンドリック様とこうしてお話するのは初めてですわね。多くのお嬢さま方のお心を奪っていらっしゃると耳にしておりますわ」

「フフフ、姫ほどではありませんよ。紅薔薇姫におかれましては、国中の男女を虜になさっているではありませんか。夢中にさせるばかりで、男をいっこうに寄せつけてこなかった姫に、こうしてご招待いただけたとあっては、僕はこの後嫉妬にかられた者たちに吊し上げられてしまうかもしれませんね……。とはいえ、ついに姫を射止めた男がいると密かにささやかれておりますが……上にいる彼でしょうか……?」

「ほほほ、失礼いたしましたわ。わたくしが殿方とふたりきりで会うのを、頑なに反対するものですから……フィー大丈夫だから、扉の前で待っていて……。さて、前置きが長くなりましたが、わたくしヘンドリック様にお願いしたいことがございますの」

「それはそれは、光栄です。僕に対応できることであれば、なんなりと」

「わたくしの友人のパフィリア様なんですけれど、長年の片思いを成就されましたでしょう。今まで語れなかった彼への想いを、どなたかと存分に語り合いたいそうなのですわ」

「……まさかとは思いますが、僕にパフィリア様のノロケ話しのはけ口になれと?」

「まあ、はけ口だなんて人聞きの悪い……。わたくし、語り合いと申し上げましてよ」

「フフフフ、僕にはこれといってパフィリア様と語り合いたいことはありませんがね」

「あら、そうですかしら? わたくし、ヘンドリック様はパフィリア様と気が合うと思いますのよ……。だって、おふたりとも長い片思いの経験がございますもの……そしてやっと長年の恋が実を結ぶ……」

「……一体何をおっしゃっているのやら。お話が以上であれば、これで失礼させていただきます」

「お待ちになって。……オフェーリア様は、あなたのお姉さまは……ヘンドリック様と同じお気持ちでいらっしゃいますわ……」

「……僕を脅す気か、エリザベート・フォン・シュヴァルツベルク」

「いいえ、いいえ、とんでもないことですわ。……わたくし、オフェーリア様から相談を受けていたのですわ。弟への、いえ、義弟への許されない恋情について……」

「……ふざけたことを。姉は僕のことなど、弟としか見ていない」

「……フィー、お通ししてちょうだい」



「……ヘンドリック。エリザベート様は本当のことをおっしゃっているの。私ずっとあなたのことを……」

「……ああ、オフェーリア……」


「あとは、おふたりでお話しくださいな。……砂時計をふたつお渡しいたしますね。使い方はパフィリア様に聞いてくださいませ。……では、ごきげんよう」



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