極度の男性恐怖症悪役令嬢は配役変更を希望します!

SAKURA

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第一章 極度の男性恐怖症な少女は悪役令嬢に転生する

第十五話 食事会

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「それじゃあ、みんなそろったことだし久々の家族みんなでの食事を楽しもう」

旦那様がグラスをあげるのにならって、私たちも軽くあげる。
もちろんエリーと私はふどうジュースですよ?

「今日はユリアの回復祝いということで我が家で働いてくれている使用人達みんながユリアのために用意してくれたんだ。料理長達も腕をふるってくれたんだよ。私もやっと家族揃って食事ができることがすごく嬉しいよ」

え………?
思わず耳を疑う。
いま、なんて………?

「エリーもねーさまといっしょでうれしい!」
「わたくしもです」
「私の………ために………?」

私のなんかのためにこんな素敵な場を用意してくれたんですか………?
私はちょっと食事をして、頑張って少しでも話せたらいいくらいの気持ちだったのに………。

正直信じられなかった。

「あぁ。だから今日は楽しんでくれると嬉しい」

だって、私は皆さんと関わることを極力避けてきました。特に旦那様を。
私はいくら記憶がないとはいえ、旦那様のことを勝手に怖がって、娘ならありえない態度をとった。
なのに、旦那様は私を見捨てずにここにおいてくれた………。
暖かい部屋に、ふかふかのベッド、美味しい食事………安心できる空間を作ってくれた。
無理に関わろうとせずに、距離をおいてくれた。

奥様は母と認められない私に今のままでもいいと、ゆっくりでいいと言ってくださった。
忘れていた、母の温もりを教えてくれた、思い出させてくれました。

エリーは私にとって唯一関わることができたユリアの家族でした。
かわいくて、奥ゆかしくて、でも明るくて………。
私を癒してくれた。

たくさんの方々が優しくしてくれた、いろんなことを教えてくれた、温もりをくれた。
それだけでも充分だったのに………。

それなのに、こんな………。

こんなに素敵な場を開いてくれたんですか………?
美しい会場も、綺麗な花も、美味しい食事も………。
私のためにわざわざ?


「ねーさま、ないてるの?かなしいの?」
「あ………」

気づいたら、私の頬を温かいものがつたっていた。
それが涙だと気づいたのは周りからの反応だった。

「え!?や、やっぱり嫌だったか!?もうすこし落ち着いた方がよかったか!?そもそも祝うことだめだったか!?」
「ちがっ………違うんです………」

違う。嫌なわけない。

「………嬉しかったんです。こんな、こと………してもらったのは………初めてっだったから………」
「………ユリア」

嬉しかった。
目に見えるものが嬉しいかったわけじゃない。
ただ、私のためにしようと思ってくれたこと、時間を割いてまで準備してくれたこと。
それがとてつもなく嬉しかったんです。
こんなに温かくて優しい時間はお母さんがいたとき以来だったから。
私は一方的にこの人たちを怖いと思い込んで、接触を避けようとしていた。
それは酷いこと。
なのに、皆さんは私の好きなようにさせてくれた。
居場所をくれた。
私が新しい家族を受け入れるまで、待つと言ってくれた。

こうして、歓迎してくれた。

ずっとずっと、優しくしてくれた。
それが堪らなく嬉しかった。

ねぇお母さん。
もう、あの人たちを家族と思っても………いいですか?
こんなことを思う私は親不孝者ですよね。
それでも、お母さんはあなたはもういないから。
私も………月乃ももう死んでしまったから。
私はユリアスとして生きることを許されますか………?
あなたがいなくなってから暗く閉ざされた私の心に癒しと温もりをくれた皆さんを

家族にしてもいいですか………?

涙は止まらずに流れ続けた。
思いが、喜びが溢れて止まらなかった。
こんなに泣いたのはお母さんが死んだ日以来だったかもしれない。
私はずっと、“お母さん”に囚われていたのかもしれない。
お母さんを言い訳にして、この世界で月乃としての私の存在を本当の意味でなくすことを恐れた。  
ユリアとして生きることを恐れていた。

でも、もうやめなくちゃ。

立ち止まったってなにも進まないことは私自身がわかってるから。 
だから、進もう。
私は月乃で、ユリアなんだから。
だって、私はもう皆さんを愛しいと感じているから。
この思いも、いままでの喜びも悲しみも痛みも寂しさも………全部全部。
ユリアの感情じゃなかった。
紛れもなく、私のものだった。

「ありがとう………ございますっ………。、使用人の皆さん………」
「「「!」」」
「本当にありがとうございます………!!」

この人たちは怖くない。
すごく、優しい人たちなんです。

「ここにきて………良かったです」

心のそこからそう思った。
私は月乃のまま、ユリアス・エリストラーヴァとして生きていこう。
優しく、愛しい皆さんに今までもらった分の感謝と喜びを返していけるように。

そう、心のそこから思った。

せっかくのドレスもメイクも、涙で台無しにしてしまったけれど、そんな私を誰も叱らなかった。
ただただ、優しく見守っていてくれた。
それがまた嬉しくて、私の涙はしばらく止まらなかった。
やっと食べることができた食事は冷めてしまっていたけれど、とても美味しくて………優しい味がした。
楽しかったんです………本当に。
その日はすごく、優しい夢を見ることができた。


☆☆☆

チョロいとか言われそうですけど後悔してないです。
それくらい愛情に飢えていたと思っていただければ
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