極度の男性恐怖症悪役令嬢は配役変更を希望します!

SAKURA

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第一章 極度の男性恐怖症な少女は悪役令嬢に転生する

第十四話 私のために

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「………ねーさま!おかえりなさい」
「エリーただいまです」

エリー………最近私の部屋にくること多いですね。可愛いからいいですけど。

「おかえりなさいませ、お嬢様」
「メアリーもありがとう」

あ、そうです。忘れる前に。

「メアリー。私も明日から皆さんと食事をしようと思うのですが、大丈夫ですか?」
「お嬢様………それは………もしかして」
「ねーさま、ごはん?エリー、ねーさまともいっしょにたべれるの?」
「はい。これからはエリーと一緒に食べようと思います」
「ほんとに?エリー嬉しい!」

あのあと気づいたんです。
私は、克服しなきゃと思いながらも自ら進んで関わろうとしなかった。
周りからのゆっくりでいい、という言葉に甘えていました。 
だから、私は私のために周りの人と関わるべきだと思いました。
だからこれは、そのために一歩なんです。

「メアリー、それでいいですか?………迷惑にならないでしょうか?」
「とんでもございません!旦那様方もとてもお喜びになられますわ!私、すぐに伝えて参ります!」

この世界で初めて誰かと取る食事。
私は上手く話すことができるでしょうか………。
不安ですけど………頑張りましょう。
そう、心のなかで気合いをいれました。


***


「あ、あの………たかが食事をするだけなのに、こんなに着飾る必要はあるんですか………?」

ただ、エリー達と食事をするだけ………なのに、こんな高そうなドレス着せられて………汚したらど、どうしたらいいんでしょう………絶対高いですよね………弁償できるんでしょうか………。

「何をおっしゃいますか!エリアス様だって普段はドレスなんですから、お嬢様も寝間具は卒業してくださいませ!」

え!?あれパジャマなんですか!?
普段着だと思ってました………ワンピースですし………。
だって、たかがパジャマですよ?こんな綺麗なもの使っていんですか!?
動きやすいから愛用しまくってたんですけど………。
ひえぇ………私パジャマで動き回ってたんですね………いったいどんな風に見られてたんでしょう恥ずかしい。
普段着用になにか作ってもらえないか頼めますかね………?図々しいのはわかってるんですけど………さすがに毎日これは………ちょっと………。
なんて思ってるうちにメアリー+他の侍女の方々による一方的な着せ替え?は終わったようで………というか着替えくらい一人でできたのに………(泣)
おそるおそる鏡を見る。

「………………誰?」 
「お嬢様以外に誰がいるんですか」
「うわぁ………」 

磨くと別人になるとはこの事ですか………。
お姫様みたいです………。
鏡のなかに写る私はそれほど普段と違っていた。
髪と同じ淡いブルーのドレスと、編み込まれた髪とリボンのバレッタ。
胸元を飾る華奢なネックレス。
………いや、やっぱりここまで着飾る必要あります?
舞踏会にでも行くんですか私は………。


「とっても素敵ですお嬢様!」
「あ、ありがとうございます………」

なんだか照れくさかった。

「ねーさま!!」

「エリー!?どうしてここに………?」
「むかえにきたの!わぁ!ねーさますっごくきれい!おひめさまみたい!」
「エリーのほうがお姫様みたいですよ」
「ほんとう!?」
「はい」

対するエリーは子供らしくピンクのドレスで、お花の刺繍やフリルがちりばめられていました。
本当に天使です………迎えに来てくれるなんて………。
やっぱり一人で行くにはちょっと心配だったんですよね………。

「ねーさまおきがえおわり?じゃあエリーと一緒にいこ!」
「あ………」

自然ととられるようになった手が今ではなんだか嬉しかった。
仲良くなれている証拠………なんですかね。
私は少しでもこの子の姉に近づけていたらいいなと思う。
私はエリーと手を繋ぎながら、部屋を出た。


「ねーさま!ここ、ここなの!」

やったきた扉はなんだか大きく感じました。
初めて来た場所、初めての………ユリアスの家族との食事。
上手く………できるでしょうか………。
不安。それでも、右手には確かに私を導いてくれた手があるから。
頑張ろうと思えるんです。
静かに深呼吸をして、心を落ち着かせる。

「ねーさま………?」

心配そうに声をかけるエリー。

「………大丈夫です」

私はそれに言葉を返して、再び扉へ向き直った。

「………行きましょうか、エリー」
「うん!ねーさまとのおしょくじたのしみ!」
「じゃあ、開けますね」

メアリーが扉に手をかけ、ドアノブを押す。


「あ、の………こんばんわ」
「かーさま、とーさま!きたの!きょうからねーさまもいっしょなの!」
「ふふっいらっしゃい。ユリア、エリー」

迎えてくれたのは、優しく、美しい空間でした。
静かに輝く、シャンデリア。
白を貴重とした椅子とテーブル。
部屋を彩る美しい草花。
そこは本当に私をお姫様になったかのように思わせてくれる場所でした。
私たちを優しく迎える奥様。
少なくない数の侍女さんに、キリムさん。
そして………


「もう、大丈夫なのか………?」 
「………はい」

気遣わしげな優しい眼差しを向けてくれる旦那様。
やっぱりこの人はあの人とは違う。
そう確信させてくれた。

「さぁ、お嬢様方。こちらへ」

キリムさんに言われて、エリーと共に用意された席へと向かった。

小さな宴が始まろうとしていました。
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