たとえ世界が滅んでも -未来人から命を狙われたアイドルと彼女を守るオタクたち

cotori

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エピソード2 ラブロマンス馨る病室 戦え病弱系オタク!

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「人気アイドルグループメンバー強姦未遂」
「しつようなストーキング、押収された収集品独占スクープ」
3面記事をにぎわせ、思いもよらぬ有名人になってしまった佐倉奈都さくらなつは悩んでいた。

ー本物のストーカーだ、これ。
助けてもらってなんだけど、ヒーローが気持ち悪すぎる。
ほとんど犯罪者、いや完全に犯罪者だ。

ー「ちがうんです!その人はわたしを助けてくれたんです」って言いづらい・・!!
時間がたてばたつほど言い出しにくくなるのは解っているが、
入ってくる情報が酷すぎて奈都にはお礼を言いにいくことすら憚られた。
なぜスタンガンを持っていたのか(どうもそれでモヒカンたちを倒したらしい)
なぜ荒縄を持っていたのか。
大量の隠し撮りに、なくなったと思っていた靴下。
入院中をいいわけにとりあえずノーコメントで通している。


コンコンッ
誰かが病室の扉をノックした。
「奈都、俺だよ」
聞き覚えのあるさわやかな声に、奈都はいそいそと扉を開いた。

すらりとした身長、ツーブロックの無造作ヘア
少しやんちゃな感じのファニーフェイス。
大きめのサングラスをとって「やあ」と片手をあげた。
歌って踊れるJ-POPグループREMOOBリムーブTAKASHIタカシだ。
先月収録が重なり、意気投合し連絡先を交換した。
ー来てくれると思わなかった。
ラインでの温かみのある言葉遣い、細やかな気遣い。
奈都はTAKASHIに夢中になりつつあった。
うれしい来訪に奈都は頬を上気させ、歓迎した。


ベッドをソファー代わりに隣り合って座った。
TAKASHIが奈都の横顔にふれた。
「なっちゃん、大変だったね。怖かったろう。いてもたってもいられなくて」
2人の距離は30cmもない。
「うん・・・」
ときめきと安堵で瞳をうるませる奈都をTAKASHIは抱きしめて撫でた。
「・・・TAKASHI」
目をつぶった奈都のくちびるに、TAKASHIはそっと近づいた。

ガンッ
   カシャン、 カラン

異音に目を開いた奈都は自分たちのうしろのガラス窓の銃創に気づいた。
「きゃ、きゃああああああ」
「うわああああ」
一方TAKASHIがあげた悲鳴は目の前に浮かんだ穴のようなものに対してだった。
恐怖で抱き合った2人に穴から声が聞こえてきた。


『何撃ってんのよ!』
モヒカンの声だ。

「え、なにこれ、ドッキリ!?」TAKASHIが固まった顔で奈都に聞いた。

『命に別状なければ、ある程度多めに見るって言われたから大丈夫だよ』
『撃ったことがない奴がうつと無駄に危険なのよ!』

「たぶんこれ、私をねらってるの!こないだもこいつらに襲われたの!」
「えっ!?」

穴から銃口が出てくる。
『殺されたくなければそいつを置いて失せろ』

ガンッ
今度は床に穴があいた。

TAKASHIは血の気を失って奈都から離れた。
震えながら少しずつ後ずさる。
腰をぬかして動けない奈都はTAKASHIにすがりついた。
「TAKASHI!まって行かないで!」
「ごめんなっちゃん、ほんとごめん・・!!」
病室から出たあたりで悲鳴をあげながらTAKASHIは走り去っていった。

『何をしているんだ』
『モモがまだ開通しきってないのに発砲しちゃったのよ』
『騒ぎになるのはよくない。ターゲットは?』
『そこにいるわ』

奈都は手で必死に動いて逃げようとした。
『大丈夫。タイムトンネルが十分あいたら私が始末するわ
 腕一本通れば十分よ』
さっきまで5cmほどだった穴はもう10cmを超えている。
ーなんで、なんでわたしをねらうの
奈都は涙と鼻水でどろどろになりながら必死に這った。


「・・・なっつん」
病室のドアからかすかに声が聞こえた。
ネルシャツを着たひょろりとしたロンゲ
そばかすメガネに出っ歯の男が病室を覗き込んでいた。
男は泣いていた。

「お願い!たすけて!」
奈都は叫んだ。
男は微動だにせず奈都を見つめ続けていた。
「・・・なっつん・・・TAKASHIと何をしてたんでござるか」
「なにって、なんでもいいじゃない。たすけてぇ」
「・・・何をしてたんでござるかー!!!」
男は泣きながら叫んだ。奈都はとっさに答えた。
「付き合ってないのにキスしようとしてきたから ひっぱたいたのぉ!!」


「なっつん!!!」
男の顔に笑顔が広がった。
「なっつん!拙者信じてたでござるよ!!」
「いいから、たすけてってば!」
「もちろん!命に代えても!」
派手な音をあげてドアが開かれた。
出っ歯の男は右腕にギプスと三角巾をしていた。
「拙者ファンクラブナンバー21番幡中伸宏はたなかのぶひろでござる!
 なっつんのピンチにさっそうと登場でござる!」
なぜかネルシャツを脱いで、奈都にかけた。
洗ってない犬のような臭いがした。

「あの穴!あの穴塞いで!」
一瞬の戸惑いの後、奈都は叫んだ。
「むむ!なんと怪しげな穴!拙者にまかせるでござる!」
白いタンクトップになった出っ歯が穴に走り寄った。


『あ、オタク』かすかな声がきこえた。
その瞬間、出っ歯はギプスごと右腕を穴につっこんだ!
「もえあがれ右手!なっつんのために!」

『うわ、なによこれ』
『未確認の第三者が関与したようです』
『いやオタク。オタクがなんかいれた』
『撃つわよ』
『ダメダメ、オタクだよ?』
『命に別状なければ、大目に見るんでしょう?』
『オタク以外はね。オタクはダメ』

『どうしたんだ』
『病室にオタクがきちゃいました』
『追い返せ』
『この白い塊がそうです』
『・・・』
「もってくれ拙者の右腕!すべては愛のため!なっつんのために!!」


『・・・閉めろ』


ドンッ

出っ歯が後ろに倒れた。穴から弾き飛ばされたギプスが砕けた。
『あ、やば』
その声を最後に、吸い込まれるように穴は消えてしまった。


通院していた出っ歯は今日、ギプスをとる予定だった。
蹴られた右手ではなく、左足を骨折した入院することになった。
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