たとえ世界が滅んでも -未来人から命を狙われたアイドルと彼女を守るオタクたち

cotori

文字の大きさ
2 / 10

エピソード1 塩対応のアイドル、ファン(ストーカー)に命を助けられる

しおりを挟む
わたくし佐倉奈都さくらなつは自慢じゃないけど美少女だ。
小鹿のような脚、引き締まったウェスト、バストはそれなり16歳。
そこに黒目がちでつやぷるくちびるの美少女の顔がのってるんだから、
そりゃあ声もかけちゃうよね?アイドルになっちゃうよね?


ーなのに!なによこの差は!
奈都は隣の在原優花ありはらゆかの行列を見て、心の中で舌打ちをした。
市の体育館だからそれほど大きくはないが、優花の列は出入口より先まで続いている。

ーこの乳オバケ、枕でもしてんじゃないのぉ
バストアピールの強い今回の衣装、サイズEだともう零れ落ちんばかりである。
「きてくれてありがとうxxさん、ゆかうれしい!かんげき~!」
「おぼえててくれたんだね ゆかた~ん 僕もかんげきだおー」

ーあんな脂ぎったオタク相手によくやるわ
「なっつん、手でハートつくろぉ~」
”そうなんですか” ”ありがとうございます” 
を駆使して上の空で対応していた相手が近づいてきた。写真撮影をするらしい。
「は、はい」
脂ぎってはいないがセットもされていない髪、こ汚い顔面が真横にやってくる。
ーまじ、むり
奈都はそっと顔を反対側にひいた。
「なっつんもっとちゃんとやってよー。そんなんじゃゆかたんに浮気しちゃうよ?」
「えええ、そんなマタキテクダサイヨー」
ーそもそもお前さっき優花の列に並ぼうとして人多いからこっちきたんだろうが!
心の中で毒づきながら、我慢する。

ーあぁ早くおわんないかな
実際、奈都は学内では屈指の美人であったし、ちやほやされて過していた。
ちょとほほえんで手をふれば、同級生は奈都に夢中になった。
だからまず、男の機嫌をとらないといけないということがわからない。
ーアニメ研究会のオタクくんたちはかわいいもんだったんだわ
学生のオタクと、社会人のオタクはパワーが違う。
お金がある分、見返りを求める力が強いのだ。


奈都とて、アイドルにそこまで夢を見ていたわけではないし
ちょっとしたステータスをゲットするぐらいの感覚だった。
ー読者モデルぐらいでやめておけばよかったーそれが奈都の正直な気持ち。
限度を知らない欲求を聞いていてはきりがない。
流して、かわして、時には妥協しつつ。
わりとすぐ奈都はオタクに対して猛烈に嫌悪感を抱いた。
そしてアイドルになったことを大いに後悔した。

ただ、奈都がアイドルになったのは彼女にとってとても幸運なことだったのである。




11月にその日はやってきた。
日が沈むのがかなり早くなり、18時だというのにあたりは真っ暗だ。
帰宅途中、コンビニを過ぎたあたりの住宅地。
人通りのない道から路地へと引きずり込まれたのだ。
咄嗟に捩った身体を2,3人に押さえつけられる
見下ろすようにモヒカンの女性が立っていた。
体のラインがあらわな革のボディースーツ。
銃のようなものを奈都につきつけた。
「騒がないでね。余計な人は殺したくないの」

足音が近づいてくるのが聞こえた。
天の助けだ。が、口元をおさえられて呼ぶことができない。
しかし、幸運なことにその人と目があった。

ー優花
帽子を深く被り、地味な服を着ているが確かに優花だ。
ー助けて!!
出せない声にかわって目で訴えた。

信じられないことに優花はついと目を背けて歩き去っていった。
何事もなかったかのように。
ーウソでしょ!完全に目があったじゃない!!

突きつけられた銃口が冷たかった。
「悪く思わないでね」
絶望で胸がいっぱいになる。
女はなかなか引き金を引かなかった。
震えているのは私じゃなくて銃を持つ彼女なんだろうか。


「なっつんをうつなら僕をうてえええええええ」
叫びながら何か巨大なものが突進してきた。
ーなんかベタっとした・・・
「うぉおおおおおおおお」
なにかが吠えながら小刻みに震えながら自分に覆いかぶさっている。
弾き飛ばされたらしいモヒカンと、男たちが見えた。
全員が覆面をしていて怪しさ満載だ。
「困るわぁ」
モヒカンは再び奈都ーと覆いかぶさっているでかい男ーに銃口を向けた。

「やめろ!」
新たに登場したイケメン風の男性がモヒカンを制した。
「それは殺してはならない」
助けがきたのだろうか、奈都は少し安堵した。
「いや、データ的にオタクだとは思いますけど、違うでしょ、コレは」
「そもそもターゲット以外は削除対象外だ」
「・・・」
「そしてオタクは殺してはいけない!絶対だ!」
ー話がおかしい気がする・・
イケメン風は私ではなく、このデブを助けに来たように聞こえるんだけど・・。

「オタクをひっぺがして」
軽くため息をついたあとモヒカンが覆面たちに顎で支持をした。
必死に奈都を抱きしめ抵抗するオタク。100kgは超えるであろう巨体。
ムチムチした感触(デブの)汗と体臭(オタクの)荒い息遣い。
助けてもらっておきながら奈都はちょっと卒倒しそうになっていた。

「エイイチ、もう時間がない」
いつのまにか増えていた覆面が声をかけた。赤いラインが入っている。
覆面にも階級があるのかもしれない。
「予定時間はまだあるはずだ」
「思ったより時空トンネルが安定してないんだ。早く戻らないと」
「帰還準備!」モヒカンの一声で覆面たちが奈都とオタクから離れ走り去った。
エイイチと呼ばれたイケメン風は奈都をにらみつけて去っていった。
「さようなら佐倉奈都。また会おう」
赤ラインが手を振りながら去っていった。


しばらくしてパトカーのサイレンと多くの足音が聞こえた。
「あそこだ!!」
警察官と刑事らしき人物が駆け寄ってきた。
「男性に襲われている少女を発見。保護します」
「はなれなさい!」
警察官たちが奈都とオタクを引き離した。
いまだ呼吸の整わないオタクは勃起していた。

憔悴しきっていた奈都はそのまま病院に運ばれた。
そしてオタクは強姦未遂で逮捕されてしまったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...