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1 初仕事 前編
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「ああー…憂鬱だよー…」
オーナーから一ヶ月後の初仕事の相手が決まったと告げられてから毎日が憂鬱で仕方ない。
だって相手はきっと金持ちのオークだろうから。
『…サイカ、…相手が決まったよ…。』
『はあ。……え!?もう!?』
『うん…こちらとしても急で…でも断れる相手じゃなかったんだ…』
『…は、はあ…すごく権力のある人…なんですか?』
『…まあ…すごく…というか…かなり。
ごめんね、サイカ…君を守ってあげられなくて…』
『あ、いえ…お仕事ですし…』
『そのお客様はかなり高貴な方なんだ。一応…お断りはしてみたんだけど…かなりの金額の前金を頂いてしまってね…。自分が最初に会うまで決して他の客を宛がわない様にとも言われたんだ…。
その方をお相手する際は…失礼のないようにだけ…してほしい。
じゃないと君の命が危ないかも知れない…。』
『わっつ!?』
オークでも嫌悪感が酷いのに下手をしたら命も危ないかも知れないなんて…もう憂鬱すぎる。嫌だ。日本に帰りたい。帰りたいけど帰りたくない。いや、帰れない。精神的な問題で。
「…絶対知られてるよ…」
私がこの世界に来て既に三ヶ月。
恐らく私がこの異世界に来たきっかけは車に轢かれて、だ。本当に間抜けだった。あれを自業自得と言わず何と言う。
その日に届く予定だった新しい大人の玩具が楽しみすぎて浮かれていた私は赤信号にも気付かず横断歩道を渡っていて車に轢かれてしまった…。
激痛に必死に耐えていたらこの世界に来ていたわけで…多分あの衝撃から自分が生きているとは思えないわけで……そうなるとあれだ。一人で暮らしていた私の部屋を両親が片付けるわけで……ね。帰れないよね。だって今帰ってみなよ。両親の顔見れないよ。
一個じゃないんだよ大人の玩具は。
両乳首用のローターに色んな種類のバイブにバイブに被せる為のコンドームにエロ本に男性向けのエロゲー…おっふ。とてもじゃないけど戻れない。という事で私はどうしてもこの世界で生きていかなければならない切実な理由があるのだ。
「…私の馬鹿…!どうして一個で我慢出来なかったの…!一個ならまだ…皆持っていそうなのに…!」
それもこれも私が悪いけど。
性欲に忠実な私が悪いけれど!
「ふふ…日本も地獄…異世界も地獄…もうどうにでもなーれ…」
目隠しでもしてもらおうか。
妄想は得意だから行為の最中相手を脳内変換して…いけるかもしれない。
毎日毎日妄想の相手とセックスしてたんだから脳内変換くらいわけないはずだ。オークなお客様の顔を見なければ。
「…いやでも初っぱなからそれは流石に失礼だよね…。変な性癖持ってるって思われて乱暴にされるのも嫌だし…でも目隠しはないにしろずっと相手を見ない様にするのも失礼だし…。」
つまり私の初体験は詰んだも同然。
それから初仕事の日まで私は枕を濡らし続けた。
「…サイカ…本当に綺麗だよ…」
「アリガトウゴザイマス」
「ぐす…本当なら…うちの大事な大事な、だいっっっじなサイカには違う相手を選んであげたかった…!」
「オキニナサラズ」
「ごめんね…サイカ…。
でも、これだけは言っておくよ。
人生は長い。悪い事ばかりじゃないんだ。だから絶対に自分から人生を諦めたりしないでほしい!
僕が出きる事でなら全力でサイカを支えるから!」
「…え。私死ぬの?」
何度もごめんねと謝りながら涙を流すオーナー。
それほどまでにやばいお客なのかと不安になる。
女を苦しめるのが好きとか…傷付けるのが好きだとか…そういう特殊な性癖を持ってる人とか?
医者や公務員…お堅い職業に就いている人程特殊な性癖を持ってるって聞いたことあるし…今から相手をする人はかなり権力があるって言ってたし…。
ああ嫌だ。不安だ。恐い。
「…じゃあ、連れてくるから…。
…頑張るんだよ…。」
パタンと閉まる扉。
まるで牢獄にいる気分になってきた。
いよいよ生身の男との初体験を迎えるんだ…。
好きな人と…なんて拘りは無いけど、嫌悪感しかない相手とセックスするとなると別だ。
娼婦なんだから選り好み出来ないのは分かっているけど日本基準の普通すらいないなんて思わないじゃないか。
「…うう…泣けてきた…どうしよう…メイクとれる…」
じわりと涙が浮かんでくると同時に扉の向こうで誰か…恐らくお客と話しているオーナーの声がした。
「…今日初めてお客様の相手をします。どうか優しくしてあげて下さい。」
「分かっている。」
「それでは…宜しくお願いします。ごゆっくりお楽しみ下さい。」
キイ、と小さく軋んだ音を立てて扉が開く。
ああ、ついにこの時が来てしまった。
何をするんだっけ。ええと、ああ。そうだ、まずはカーテシーだ。挨拶をしなくては。
「よ…ようこそおいで下さりました。
私は月光館の娼婦、サイカと申します…。
本日は、私をお相手に選んで下さり…誠に有難う存じます。」
「………。」
「………。」
「………。」
沈黙が続きチラリと相手の様子を伺う。
その相手を見て驚いた。
「…あ、貴方は…!」
いつかのフード付きのローブを着ていた人ではないか。
しかも驚いたのはそれだけじゃない。どう見ても太ってない事にも驚いた。
「し、失礼致しました…まだ、面を上げるお許しも頂いておりませんのに、」
「…い、いや、構わない…。面を上げてくれ。」
「はい…。」
あの時は遠目だったから確信が持てなかったけれど、やっぱり太っていない。
初めて太ってない人を見た気がする…というか初めて見た。
「あ、あの、…どうぞおくつろぎ下さいませ。
今…お茶を入れますから。」
「…あ、ああ、すまない。」
「いいえ……あの、…ローブは脱がないのですか…?」
「…あ、ああ、まだ…いい。」
「そう…ですか。」
お姉様に教わった通りに紅茶を淹れる。
お茶は会社でもよく淹れていたから覚えるのは早かった。
サイカは貴族だったの?と聞かれるくらいには。
「あ、…あの、お名前を伺っても…?」
「あ、ああ、そうだったな…。俺はマティアスと言う。」
「マティアス様」
「…俺を知らないのか…?」
「?…えっと、一月前にお見かけしました…よね?」
「いや…そういう事ではなく…」
「あ…申し訳ありません…。その…私、四ヶ月程前にこの国に来たばかりで…。」
「…ああ、成る程…。しかし何故…そなた程の女性が娼館にいるのか…聞いても…?」
ことり、と淹れたての紅茶をテーブルの上に置き、相手の隣に座る。
この部屋には…というかどの部屋にも椅子は丁度人二人が座れるくらいの長椅子が一つしか置かれていない。
お客の隣に座るのが娼館では普通だから、椅子が二つあっても意味がないのだが…私の隣に座っている人は私が隣に腰を下ろすと体を強張らせたではないか。
「す、すまない。不躾だった。」
「あ、いいえ…大丈夫です。言い辛い事でもないですし…。
一言で言えば…薬を盛られて売られたんです。」
「な、」
「自分の町にいた筈なんですけど…気付いたら森にいて…数時間程歩いて誰かいないか探して…運よく小屋を見つける事が出来たんですが…。」
「…その小屋の住人に…?」
「ええ。老夫婦が二人で生活していました。
…事情を話すと家の中に入れてくれて…温かいスープまで…。
…まあ、そのスープに眠り薬が仕込まれていたんですけど…。
家の中もとても質素でしたし…お金に困っていたんでしょうね。」
「…そう、か……すまない…。」
「?…何故マティアス様が謝るんです?」
「…いや…」
「大丈夫です。それに、この月光館に売られてよかったと思ってるので…。
この月光館のオーナーはとても優しいです。他の娼館ではお客が取れないとまともにご飯にありつけない所もあるとお姉様から聞きました。
でも、この月光館ではお客が取れなかった娼婦もオーナーの方針でちゃんとご飯が食べれるそうです。
もし、あの老夫婦が娼館じゃなく盗賊みたいな人に私を売ったていたら…多分、また違っていたでしょうし。」
「…ああ…恐らく買うより老夫婦を殺した方が早い。
そう考えると娼館に売った方が確実に金は手にはいるからな……それに…サイカ程の美貌だ…かなり高額な金を手に入れただろう…。
…万が一…賊に引き渡されていたら酷い扱いを受けていたかも知れない…。」
「………。」
許すまじあの老夫婦。
あんな優しそうな顔して…人なんて騙せません、みたいな顔して…!
いやまあ、優しそうって安心して信じきってしまった私も悪いしどうやって異世界で生活するかも考えてなかったから結果的には娼館に売られて良かったんだけど…。
「す、すまない。気分を害しただろうか…。」
「あ、いいえ!少し考え事をしていただけで…!」
「そ、そうか。」
「は、はい!」
やだな…。緊張してきた…。でもやっぱりこの人太ってはない感じだし…話をして嫌悪感もない。
…オークよりはきっと全然マシな人だ。
「…あの……ど、どうしましょう、か…。わ、私、お客様を取るのは今日が初めてで……つ、つまりその、べ、ベッドに行った方がいいでしょうか…、」
「っ、」
「す、すみません、お客様に聞く事じゃないですよね…!」
「い、いや、……その、…一つ、聞いても…いいだろうか…」
「な、なんでしょう!?」
「…もう…分かっているとは思うが……俺は太ってはいない…だろう?
その……嫌ではないか…?」
「…いえ、嫌ではないですが…」
「……そうか、……大抵門前払いを食らうんだが…」
「え…でも…マティアス様は今…ここにいますが…」
「…それは……どうしても、そなたに会いたくて…。
あの時…一目見てから…どうしても…。
だから…だから初めて…権力を使って無理矢理今日の権利を買ったんだ…。」
「…は、はあ…。」
「いつもは…この格好で娼館に行くと大概が門前払い…運よく娼館に入れたとしても娼婦は皆嫌悪感丸出しのままで…最終的にローブを脱ぐと…吐くか気を失うから…強制的に帰らされる。」
「…嫌悪感丸出し…吐くか倒れる……」
「どこに行ってもそうなんだ…。
……側妃…も…から……に、」
後半が呟くような小さい声だったからよく聞こえなかったけれど…ちょっと待ってほしい。
皆が嫌悪感を抱いて…吐くか倒れる…?それってつまり、つまりよ?この人はこの世界基準で嫌悪感を抱かれるくらい周りの女にとって生理的に無理なレベルの凄い不細工だからという事で…つまり私基準だともの凄いイケメンなのではないだろうか!!
だとしたらオーナーがあんなに悲壮感漂っていたのも私に謝ってたのも死ぬんじゃないぞ的な事を言ってたのも…相手がこの世界で超が付く不細工だから!?
ごくりと喉が鳴る。
そうなると俄然顔が見たい。いや、顔じゃなく全身見たい。
「…マティアス様…どうか、ローブを脱いで下さいませんか…?」
「っ、」
「…今日、私を買って下さった事…後悔させたくありません…。
マティアス様にも私にも、最高の夜になる様にしたいのです…。」
「…だ、だが、」
「…お願い、マティアス様…。」
私は絶世の美女、私は絶世の美女!だからちょっと気持ち悪いくらい上目使いしても大丈夫!!うええ気持ち悪いこいつ何してんのとは思われないはず!
「……わ…かった、…目を……目を、閉じていてほしい…。ローブを脱ぎ終えたら…声を掛ける…。」
「はい…」
声が震えていた。
一体、どれだけ傷付いてきたんだろう。
門前払いな上、運よく娼館に入れたとしても、嫌悪感丸出しの対応をされローブを脱ぐと吐くか倒れて帰されるって…。
私基準のイケメンは迫害でもされているレベルで蔑まれているのは実話だったんだ…。
…神様に与えられた器だから、不細工は神様から見放された存在…か。
「…マティアス様。」
「…な、んだ…」
「…こんなお願いをしてごめんなさい。
…私のお願いを聞くのが…マティアス様にとってどれだけ勇気のいる事か…。」
「……。」
「でも…ちゃんと、マティアス様を見たい。
マティアス様を知りたいと思うのです。」
「…っ……サイカ…、」
ゆっくりと布の擦れる音がやけに響く。
ローブを脱ぐだけなのに、とても時間が掛かった様に思えるがそれ程嫌な思いをし続けてきたんだろう。
目を開けてもいいと声が掛かるまで、多分…三十分は経っていた。
「………。」
「………。」
目を開けたはいい。うん。
…な、んですと…?
目の前に…とんでもないイケメンがいた。
キラキラサラサラの金髪にぱっちり二重の碧眼…すっと筋の通った鼻に薄い唇……マティアス様は私の予想…もの凄いイケメンを通り越して超絶イケメンな王子様だった。
「………。」
間抜けな顔をしている自覚はある。
口も開いてると思う。
惚けてしまう程マティアス様の顔面は輝いていた。
「っ、す、すまない、…今、ローブを着る…!目を閉じていてくれ…!」
「!!」
私の馬鹿やろう!折角勇気を出してローブを脱いでくれたのに何を惚けていたんだ!
ここはにっこり笑っておくべきだったのに!
「マティアス様!」
慌ててローブを掴む。
今ローブを着られてしまえばこの後もずっとローブを着ていそうだし下手したらセックスせずに終わりそうな気がしたからだ。
「マティアス様、大丈夫です!
顔をお隠しにならないで…!大丈夫ですから!」
「だ、だが…!」
「大丈夫です。私の好みのお顔です。だから隠したりしないで下さい…。」
「…好みの顔などと…」
「本当です。マティアス様のお顔、私は好きですよ。」
本当に。もう、ドストライクです。
この人が私の初めてを捧げる人でいいのかと思うくらい。…処女ではないけれど。
でも本当によかった。嬉しい。オークが相手かと思ってたから余計に。涙が出るくらい嬉しい…。
「…泣いて……サイカ、無理はするな…俺は醜い…それは十分分かっている…。
サイカが俺の容姿に嫌悪感も出さない優しい娘なのは分かった…好みの顔だと優しく労ってくれる娘だと…」
「いいえ、マティアス様…これは嫌な涙ではありません…!
私の初めてのお客様が…マティアス様でよかったと…そういう涙ですから…!」
「…っ、サ…イカ…」
「どうか、私の初めてのお客様になって下さい。
帰ったりしないで…。」
「な、…い…い、のか…?俺が、サイカの相手で、…本当に…?」
「構いません。…マティアス様…私、男性を相手するのはマティアス様が初めてなのです。…だから…優しく…して、下さいね…?」
ちゅ、と。マティアス様の唇に自分の唇を重ねる。
涙目でマティアス様の目をじっと見つめて…そうするとすごい勢いでキスされた。
「…は…!ちゅ、…ちゅ。…もう、止められないぞ…サイカ…!ちゅ、もう、…今更止めろと言われてもっ…!」
「んっ、んはっ…、…ちゅ、…いいです…嫌だなんて…言いません…からっ、んっ…マティアスさま、ちゅ……私、…マティアス様に…愛されたく思います…んっ、」
「~~~っ!なんて愛らしい事を…!サイカ…サイカっ…!愛してやる!沢山、沢山…!
だからサイカも俺を愛してくれ…!一緒にいる時間だけでもいい…!それでも…構わない…!そなたの言葉が全て嘘でもいい、騙されてもいい…!」
「嘘だなんて…そんな悲しい事を仰らないで…私、マティアス様を本当に好ましく思って、んんっ!」
ごり、と鳩尾の位置に固い物を感じる。
頭の中は嬉しさでいっぱいだった。
いよいよ私は生身の男とセックスするんだと思うと凄く興奮する。
しかも…相手は私にとって文句のつけようがない程超絶イケメン…!これ以上願ってもない人が私の初体験の相手に…!
「神様に感謝しなければ…マティアス様が、私の初めての人である事を…」
「…つ、サイカ……!ああ、俺の方こそ神に感謝を捧げなくては…!これ程幸福な事が今までにあっただろうか…!今までの苦しみは…全て今日のこの時の為だとも思える…!」
震えた手でマティアス様が私の背中にあるドレスの紐を掴む。
くん、と後ろに引っ張られた感覚がした瞬間、胸を圧迫していた苦しさが和らぎゆっくりとドレスが床に落ちていった。
オーナーから一ヶ月後の初仕事の相手が決まったと告げられてから毎日が憂鬱で仕方ない。
だって相手はきっと金持ちのオークだろうから。
『…サイカ、…相手が決まったよ…。』
『はあ。……え!?もう!?』
『うん…こちらとしても急で…でも断れる相手じゃなかったんだ…』
『…は、はあ…すごく権力のある人…なんですか?』
『…まあ…すごく…というか…かなり。
ごめんね、サイカ…君を守ってあげられなくて…』
『あ、いえ…お仕事ですし…』
『そのお客様はかなり高貴な方なんだ。一応…お断りはしてみたんだけど…かなりの金額の前金を頂いてしまってね…。自分が最初に会うまで決して他の客を宛がわない様にとも言われたんだ…。
その方をお相手する際は…失礼のないようにだけ…してほしい。
じゃないと君の命が危ないかも知れない…。』
『わっつ!?』
オークでも嫌悪感が酷いのに下手をしたら命も危ないかも知れないなんて…もう憂鬱すぎる。嫌だ。日本に帰りたい。帰りたいけど帰りたくない。いや、帰れない。精神的な問題で。
「…絶対知られてるよ…」
私がこの世界に来て既に三ヶ月。
恐らく私がこの異世界に来たきっかけは車に轢かれて、だ。本当に間抜けだった。あれを自業自得と言わず何と言う。
その日に届く予定だった新しい大人の玩具が楽しみすぎて浮かれていた私は赤信号にも気付かず横断歩道を渡っていて車に轢かれてしまった…。
激痛に必死に耐えていたらこの世界に来ていたわけで…多分あの衝撃から自分が生きているとは思えないわけで……そうなるとあれだ。一人で暮らしていた私の部屋を両親が片付けるわけで……ね。帰れないよね。だって今帰ってみなよ。両親の顔見れないよ。
一個じゃないんだよ大人の玩具は。
両乳首用のローターに色んな種類のバイブにバイブに被せる為のコンドームにエロ本に男性向けのエロゲー…おっふ。とてもじゃないけど戻れない。という事で私はどうしてもこの世界で生きていかなければならない切実な理由があるのだ。
「…私の馬鹿…!どうして一個で我慢出来なかったの…!一個ならまだ…皆持っていそうなのに…!」
それもこれも私が悪いけど。
性欲に忠実な私が悪いけれど!
「ふふ…日本も地獄…異世界も地獄…もうどうにでもなーれ…」
目隠しでもしてもらおうか。
妄想は得意だから行為の最中相手を脳内変換して…いけるかもしれない。
毎日毎日妄想の相手とセックスしてたんだから脳内変換くらいわけないはずだ。オークなお客様の顔を見なければ。
「…いやでも初っぱなからそれは流石に失礼だよね…。変な性癖持ってるって思われて乱暴にされるのも嫌だし…でも目隠しはないにしろずっと相手を見ない様にするのも失礼だし…。」
つまり私の初体験は詰んだも同然。
それから初仕事の日まで私は枕を濡らし続けた。
「…サイカ…本当に綺麗だよ…」
「アリガトウゴザイマス」
「ぐす…本当なら…うちの大事な大事な、だいっっっじなサイカには違う相手を選んであげたかった…!」
「オキニナサラズ」
「ごめんね…サイカ…。
でも、これだけは言っておくよ。
人生は長い。悪い事ばかりじゃないんだ。だから絶対に自分から人生を諦めたりしないでほしい!
僕が出きる事でなら全力でサイカを支えるから!」
「…え。私死ぬの?」
何度もごめんねと謝りながら涙を流すオーナー。
それほどまでにやばいお客なのかと不安になる。
女を苦しめるのが好きとか…傷付けるのが好きだとか…そういう特殊な性癖を持ってる人とか?
医者や公務員…お堅い職業に就いている人程特殊な性癖を持ってるって聞いたことあるし…今から相手をする人はかなり権力があるって言ってたし…。
ああ嫌だ。不安だ。恐い。
「…じゃあ、連れてくるから…。
…頑張るんだよ…。」
パタンと閉まる扉。
まるで牢獄にいる気分になってきた。
いよいよ生身の男との初体験を迎えるんだ…。
好きな人と…なんて拘りは無いけど、嫌悪感しかない相手とセックスするとなると別だ。
娼婦なんだから選り好み出来ないのは分かっているけど日本基準の普通すらいないなんて思わないじゃないか。
「…うう…泣けてきた…どうしよう…メイクとれる…」
じわりと涙が浮かんでくると同時に扉の向こうで誰か…恐らくお客と話しているオーナーの声がした。
「…今日初めてお客様の相手をします。どうか優しくしてあげて下さい。」
「分かっている。」
「それでは…宜しくお願いします。ごゆっくりお楽しみ下さい。」
キイ、と小さく軋んだ音を立てて扉が開く。
ああ、ついにこの時が来てしまった。
何をするんだっけ。ええと、ああ。そうだ、まずはカーテシーだ。挨拶をしなくては。
「よ…ようこそおいで下さりました。
私は月光館の娼婦、サイカと申します…。
本日は、私をお相手に選んで下さり…誠に有難う存じます。」
「………。」
「………。」
「………。」
沈黙が続きチラリと相手の様子を伺う。
その相手を見て驚いた。
「…あ、貴方は…!」
いつかのフード付きのローブを着ていた人ではないか。
しかも驚いたのはそれだけじゃない。どう見ても太ってない事にも驚いた。
「し、失礼致しました…まだ、面を上げるお許しも頂いておりませんのに、」
「…い、いや、構わない…。面を上げてくれ。」
「はい…。」
あの時は遠目だったから確信が持てなかったけれど、やっぱり太っていない。
初めて太ってない人を見た気がする…というか初めて見た。
「あ、あの、…どうぞおくつろぎ下さいませ。
今…お茶を入れますから。」
「…あ、ああ、すまない。」
「いいえ……あの、…ローブは脱がないのですか…?」
「…あ、ああ、まだ…いい。」
「そう…ですか。」
お姉様に教わった通りに紅茶を淹れる。
お茶は会社でもよく淹れていたから覚えるのは早かった。
サイカは貴族だったの?と聞かれるくらいには。
「あ、…あの、お名前を伺っても…?」
「あ、ああ、そうだったな…。俺はマティアスと言う。」
「マティアス様」
「…俺を知らないのか…?」
「?…えっと、一月前にお見かけしました…よね?」
「いや…そういう事ではなく…」
「あ…申し訳ありません…。その…私、四ヶ月程前にこの国に来たばかりで…。」
「…ああ、成る程…。しかし何故…そなた程の女性が娼館にいるのか…聞いても…?」
ことり、と淹れたての紅茶をテーブルの上に置き、相手の隣に座る。
この部屋には…というかどの部屋にも椅子は丁度人二人が座れるくらいの長椅子が一つしか置かれていない。
お客の隣に座るのが娼館では普通だから、椅子が二つあっても意味がないのだが…私の隣に座っている人は私が隣に腰を下ろすと体を強張らせたではないか。
「す、すまない。不躾だった。」
「あ、いいえ…大丈夫です。言い辛い事でもないですし…。
一言で言えば…薬を盛られて売られたんです。」
「な、」
「自分の町にいた筈なんですけど…気付いたら森にいて…数時間程歩いて誰かいないか探して…運よく小屋を見つける事が出来たんですが…。」
「…その小屋の住人に…?」
「ええ。老夫婦が二人で生活していました。
…事情を話すと家の中に入れてくれて…温かいスープまで…。
…まあ、そのスープに眠り薬が仕込まれていたんですけど…。
家の中もとても質素でしたし…お金に困っていたんでしょうね。」
「…そう、か……すまない…。」
「?…何故マティアス様が謝るんです?」
「…いや…」
「大丈夫です。それに、この月光館に売られてよかったと思ってるので…。
この月光館のオーナーはとても優しいです。他の娼館ではお客が取れないとまともにご飯にありつけない所もあるとお姉様から聞きました。
でも、この月光館ではお客が取れなかった娼婦もオーナーの方針でちゃんとご飯が食べれるそうです。
もし、あの老夫婦が娼館じゃなく盗賊みたいな人に私を売ったていたら…多分、また違っていたでしょうし。」
「…ああ…恐らく買うより老夫婦を殺した方が早い。
そう考えると娼館に売った方が確実に金は手にはいるからな……それに…サイカ程の美貌だ…かなり高額な金を手に入れただろう…。
…万が一…賊に引き渡されていたら酷い扱いを受けていたかも知れない…。」
「………。」
許すまじあの老夫婦。
あんな優しそうな顔して…人なんて騙せません、みたいな顔して…!
いやまあ、優しそうって安心して信じきってしまった私も悪いしどうやって異世界で生活するかも考えてなかったから結果的には娼館に売られて良かったんだけど…。
「す、すまない。気分を害しただろうか…。」
「あ、いいえ!少し考え事をしていただけで…!」
「そ、そうか。」
「は、はい!」
やだな…。緊張してきた…。でもやっぱりこの人太ってはない感じだし…話をして嫌悪感もない。
…オークよりはきっと全然マシな人だ。
「…あの……ど、どうしましょう、か…。わ、私、お客様を取るのは今日が初めてで……つ、つまりその、べ、ベッドに行った方がいいでしょうか…、」
「っ、」
「す、すみません、お客様に聞く事じゃないですよね…!」
「い、いや、……その、…一つ、聞いても…いいだろうか…」
「な、なんでしょう!?」
「…もう…分かっているとは思うが……俺は太ってはいない…だろう?
その……嫌ではないか…?」
「…いえ、嫌ではないですが…」
「……そうか、……大抵門前払いを食らうんだが…」
「え…でも…マティアス様は今…ここにいますが…」
「…それは……どうしても、そなたに会いたくて…。
あの時…一目見てから…どうしても…。
だから…だから初めて…権力を使って無理矢理今日の権利を買ったんだ…。」
「…は、はあ…。」
「いつもは…この格好で娼館に行くと大概が門前払い…運よく娼館に入れたとしても娼婦は皆嫌悪感丸出しのままで…最終的にローブを脱ぐと…吐くか気を失うから…強制的に帰らされる。」
「…嫌悪感丸出し…吐くか倒れる……」
「どこに行ってもそうなんだ…。
……側妃…も…から……に、」
後半が呟くような小さい声だったからよく聞こえなかったけれど…ちょっと待ってほしい。
皆が嫌悪感を抱いて…吐くか倒れる…?それってつまり、つまりよ?この人はこの世界基準で嫌悪感を抱かれるくらい周りの女にとって生理的に無理なレベルの凄い不細工だからという事で…つまり私基準だともの凄いイケメンなのではないだろうか!!
だとしたらオーナーがあんなに悲壮感漂っていたのも私に謝ってたのも死ぬんじゃないぞ的な事を言ってたのも…相手がこの世界で超が付く不細工だから!?
ごくりと喉が鳴る。
そうなると俄然顔が見たい。いや、顔じゃなく全身見たい。
「…マティアス様…どうか、ローブを脱いで下さいませんか…?」
「っ、」
「…今日、私を買って下さった事…後悔させたくありません…。
マティアス様にも私にも、最高の夜になる様にしたいのです…。」
「…だ、だが、」
「…お願い、マティアス様…。」
私は絶世の美女、私は絶世の美女!だからちょっと気持ち悪いくらい上目使いしても大丈夫!!うええ気持ち悪いこいつ何してんのとは思われないはず!
「……わ…かった、…目を……目を、閉じていてほしい…。ローブを脱ぎ終えたら…声を掛ける…。」
「はい…」
声が震えていた。
一体、どれだけ傷付いてきたんだろう。
門前払いな上、運よく娼館に入れたとしても、嫌悪感丸出しの対応をされローブを脱ぐと吐くか倒れて帰されるって…。
私基準のイケメンは迫害でもされているレベルで蔑まれているのは実話だったんだ…。
…神様に与えられた器だから、不細工は神様から見放された存在…か。
「…マティアス様。」
「…な、んだ…」
「…こんなお願いをしてごめんなさい。
…私のお願いを聞くのが…マティアス様にとってどれだけ勇気のいる事か…。」
「……。」
「でも…ちゃんと、マティアス様を見たい。
マティアス様を知りたいと思うのです。」
「…っ……サイカ…、」
ゆっくりと布の擦れる音がやけに響く。
ローブを脱ぐだけなのに、とても時間が掛かった様に思えるがそれ程嫌な思いをし続けてきたんだろう。
目を開けてもいいと声が掛かるまで、多分…三十分は経っていた。
「………。」
「………。」
目を開けたはいい。うん。
…な、んですと…?
目の前に…とんでもないイケメンがいた。
キラキラサラサラの金髪にぱっちり二重の碧眼…すっと筋の通った鼻に薄い唇……マティアス様は私の予想…もの凄いイケメンを通り越して超絶イケメンな王子様だった。
「………。」
間抜けな顔をしている自覚はある。
口も開いてると思う。
惚けてしまう程マティアス様の顔面は輝いていた。
「っ、す、すまない、…今、ローブを着る…!目を閉じていてくれ…!」
「!!」
私の馬鹿やろう!折角勇気を出してローブを脱いでくれたのに何を惚けていたんだ!
ここはにっこり笑っておくべきだったのに!
「マティアス様!」
慌ててローブを掴む。
今ローブを着られてしまえばこの後もずっとローブを着ていそうだし下手したらセックスせずに終わりそうな気がしたからだ。
「マティアス様、大丈夫です!
顔をお隠しにならないで…!大丈夫ですから!」
「だ、だが…!」
「大丈夫です。私の好みのお顔です。だから隠したりしないで下さい…。」
「…好みの顔などと…」
「本当です。マティアス様のお顔、私は好きですよ。」
本当に。もう、ドストライクです。
この人が私の初めてを捧げる人でいいのかと思うくらい。…処女ではないけれど。
でも本当によかった。嬉しい。オークが相手かと思ってたから余計に。涙が出るくらい嬉しい…。
「…泣いて……サイカ、無理はするな…俺は醜い…それは十分分かっている…。
サイカが俺の容姿に嫌悪感も出さない優しい娘なのは分かった…好みの顔だと優しく労ってくれる娘だと…」
「いいえ、マティアス様…これは嫌な涙ではありません…!
私の初めてのお客様が…マティアス様でよかったと…そういう涙ですから…!」
「…っ、サ…イカ…」
「どうか、私の初めてのお客様になって下さい。
帰ったりしないで…。」
「な、…い…い、のか…?俺が、サイカの相手で、…本当に…?」
「構いません。…マティアス様…私、男性を相手するのはマティアス様が初めてなのです。…だから…優しく…して、下さいね…?」
ちゅ、と。マティアス様の唇に自分の唇を重ねる。
涙目でマティアス様の目をじっと見つめて…そうするとすごい勢いでキスされた。
「…は…!ちゅ、…ちゅ。…もう、止められないぞ…サイカ…!ちゅ、もう、…今更止めろと言われてもっ…!」
「んっ、んはっ…、…ちゅ、…いいです…嫌だなんて…言いません…からっ、んっ…マティアスさま、ちゅ……私、…マティアス様に…愛されたく思います…んっ、」
「~~~っ!なんて愛らしい事を…!サイカ…サイカっ…!愛してやる!沢山、沢山…!
だからサイカも俺を愛してくれ…!一緒にいる時間だけでもいい…!それでも…構わない…!そなたの言葉が全て嘘でもいい、騙されてもいい…!」
「嘘だなんて…そんな悲しい事を仰らないで…私、マティアス様を本当に好ましく思って、んんっ!」
ごり、と鳩尾の位置に固い物を感じる。
頭の中は嬉しさでいっぱいだった。
いよいよ私は生身の男とセックスするんだと思うと凄く興奮する。
しかも…相手は私にとって文句のつけようがない程超絶イケメン…!これ以上願ってもない人が私の初体験の相手に…!
「神様に感謝しなければ…マティアス様が、私の初めての人である事を…」
「…つ、サイカ……!ああ、俺の方こそ神に感謝を捧げなくては…!これ程幸福な事が今までにあっただろうか…!今までの苦しみは…全て今日のこの時の為だとも思える…!」
震えた手でマティアス様が私の背中にあるドレスの紐を掴む。
くん、と後ろに引っ張られた感覚がした瞬間、胸を圧迫していた苦しさが和らぎゆっくりとドレスが床に落ちていった。
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