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162 新婚の心得と大喜びの夫 前編

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リュカと夫婦になって一週間目。
夫になったリュカの愛を喜びながら受け止める日々。
リュカ本人も公言しているけれど、リュカの愛は大変重たいものだ。いや、リュカだけではなくてマティアスもヴァレもカイルもそうなのだけど。
色んな事を沢山考えていると思う。それは良い事だけじゃなく悪い事も沢山あるのだろう。
これまでの生活環境やリュカの立場故の影響が大きく影響しているのも分かる。
何事も『失敗がある』と考えなくてはならない。
常に前向きに、が出来ないのは人の命、生活を守らなければならない立場だからだ。
重い、責任ある立場にいるから楽天的ではいられない。
思い付きや軽い考えで行動は出来ない。
もしこれが駄目なら次はこうしなくては。あれも駄目なら次はこれを。
常に“万が一”を考え生活してきたリュカ。
だからリュカの中にはいつまでも不安がある。

“万が一、私がリュカを疎んだり嫌いになったら”
“万が一、私のリュカへの愛が冷めたら”
“万が一、私を失ってしまったら”

確かめずにはいられない。
人の思いや未来に確かなんてものはないけれど、それでも今、実感出来る“確か”が欲しい。
けれど、この重たい想いを私が受け入れてくれるか恐がって、圧し殺しているものが多いのだと思う。
初夜の時に、私はリュカのそんな想いを感じたのだ。
悲しく、切ない。だけど愛しくてたまらないそんな彼の大きな負の感情を、確かに感じた。

私の出来る事は、リュカを愛していると伝え続けること。
言葉や行動、私の全てでリュカへの愛を伝え続け、実感と安堵を与えること。
だから二人でいる時は、私の愛をリュカが沢山実感出来るようにしようと思う。
……うん。思ってはいるのだけど、今現在、私の脳は大混乱を起こしている。

「新婚期間中、夫婦が長く離れるのは良くないと聞いた。」

「…えっと、誰から…?」

「世間一般の常識らしい。」

「世間一般の常識…」

「そうだ。色々調査した結果でもあるんだ。」

「調査……調査?」

「お前も知っての通り、僕は多忙だ。
結婚前もお前と会う為色々な事を調整しなくてはお前に会えなかった。
夫婦になっても、意図的に時間を作らなければお前と過ごす時間がない。それなりの時間を共に過ごせるのは夜眠る時くらいだ。」

「うん。結婚してゆっくり出来たのは四日目までで、また忙しくなったものね。」

「ああ。折角お前と夫婦になれたというのに残念かつ不愉快極まりないが。僕の身分がゆっくりとはさせてくれない。非常に、非常に不愉快な事だが。」

「う、うん。…リュカは公爵だから、沢山しなくちゃいけない事もあるよね。
頼りないかもしれないけど、私に手伝える事があったら遠慮なく言ってね。」

「そう。…正にそれだ。」

「?」

ふう。と一つ、小さく息を吐いたリュカは真面目な顔で私を見る。
その余りにも真剣な表情にとても重要な話が始まる気がして、私は背筋を伸ばした。

「お前に手伝って欲しい事がある。
いや、僕の妻になったお前にしか出来ない重要かつ重大な仕事だ。」

「な、何でしょう…!」

「新妻の務めと言ってもいい。違うな…新妻という時期を過ぎてからも勿論続けなくてはならない。というか僕の幸せの為にも続けるべきだ。勿論、お前も幸せを感じるだろう。」

「新妻の務め…!?」

新妻の務めとはなんぞや。
私にはとんと想像出来ない。
だけどここは日本ではなく異世界で、これまでにも驚いた事は沢山あった。
美醜についても重婚についてもそうだ。
私はまだまだ、この世界について知らない事が沢山あるだろう。
だから、私の知らない、この世界での妻の務めがあったのかも知れない。
一体どんな重要かつ重大な任務があるのか…。
酷く真面目な顔で、いや、とても深刻な顔で私を見ているリュカに、緊張からごくりと喉が鳴った。

「それで、だ。結婚したばかりの夫婦が長く離れ離れでいるのは良くない、という話に戻る。」

「はい。」

「新妻の、お前の務めは。
常に夫たる僕の傍にいる事だ。」

「……はい?」

「トイレなどの所用を除き、僕の傍にいる事。
愛する妻が傍にいる、それが仕事で忙殺される夫のやる気を向上させ作業効率も上がると聞いた。」

「…えと、それは誰から?」

「だから世間一般だ。
屋敷の者たちに調査した。」

「…そう、なんだ…。でも…仕事中もずっと…だと、逆に邪魔にならない…?」

「いいや?何せ既に実証済みだからな。」

「?」

「四日目の時に仕事をする僕の傍にいただろう?
あれはとても良かった。確かにやる気もいつも以上に出たし作業効率も上がった気がする。ややこしい案件ばかりでいつもは考える時間が多いんだが…あの日はこう…ふっと考えが閃いたりだな。兎に角スムーズに仕事が進んだし何より癒された。これは間違いない。」

「…ああ、うん……それは良かった…。」

「傍にいる、というよりはこの間のように僕の膝に座っていると尚良しだ。
面倒な仕事も楽しみながら出来る。
夫を支える。これが妻の役目であるならば、お前は僕を支えなくてはならない。」

「う、うん。…それは勿論、支えるけども。」

「世間一般の常識、というのも中々役に立つ事もあるのだな。これからもいい部分は取り入れようと思っている。」

何か、ちょっと方向性が違う気がしてならないでもないが……ここは異世界。
私の知らない夫婦文化があって当然で、やっぱりまだまだ知らない事が多いみたいだ。

「新婚というのは蜜月期間で、僕たちが誰かの目の前でいちゃついていようと、どんな事をしても新婚だから許される期間でもあると聞いた。」

「…誰から?」

「世間一般の常識だ。」

「また世間一般…」

「ルドルフにも言われた。
新婚期間から習慣付けておかねば後々苦労する事や後悔する事もあると。」

「…えっと?」

「例えばだ。お前が会いに来るか、僕が会いに行くか。どちらかをしなくては同じ屋敷で暮らしていても顔を合わす時間が少ない。食事や就寝の時くらいだ。
人間はこれまでしてこなかった事に対し、急にやろうと思っても二の足を踏んでしまう。中々行動に移せない事もあるだろう?」

「…うん、確かに。
きっかけがないと動かないよね。」

「だが今から習慣付けておけばそれが当たり前になるんだ。僕とお前が使用人たちの前で仲睦まじくしようとそれが当たり前になれば恥ずかしくないだろう。」

「…うん?」

「それに。お前が傍で、仕事をする僕を応援し癒すのは新妻の、強いては妻の務めなんだ。そう聞いた。なら、それが今後の僕たちの当たり前になればいい。
夫婦円満の秘訣はこうした努力から始まるとルドルフにも言われ僕は納得したぞ。」

「納得しちゃったんだなぁ。」

理由が何となくこじつけのような気もするし、何となく無理もあるような気もするし、何となくリュカがルドルフに騙されていると言うか、からかわれていると言うか、そんな気がしないでもないけれど、言っている事も何となく理解出来る気がしないでもない。
流石異世界。私の知らない夫婦の文化があったんだ。
いやいや、思い出してみれば日本でだって古くからバカップルというものがあったし、人前でいちゃつくカップルを目にした事もある。
…第三者目線で見ると居たたまれないと言うか、ちょっと引いてしまうというか、思わず真顔になってしまった事もあるけれど。
これはきっと異世界というのは関係なくて、そもそも国が違うと文化も違うのは当然だ。
そう、だってテレビや映画で見た外国のスキンシップは“これ人前でやってるの?”と思うくらい濃いものが多かったし、日本人は愛情表現が薄いと聞いた事もある。
そんなどうでもいい事ばかり頭を巡っているのは絶賛大混乱しているからです。

「サイカ。今からお前に新婚の心得を伝える。」

「新婚の心得」

「言っておくがこれは新婚期間だけに適用される訳ではない。
習慣化させる為に設けたもので新婚期間が過ぎても継続だ。」

「…えと、さっき言ってた私たちの当たり前って事、だよね。」

「そうだ。
一、夫婦は長く離れてはならない。
これは今後の夫婦仲に関わってくるらしい。
二、思いっきりいちゃいちゃする。
スキンシップを多くするという事だな。
これも今後の夫婦仲に関わってくると聞いた。
三、人の目を気にする事なく妻は夫に甘えるもの。
これも理由は同じだろうな。」

「…なる…ほど…?」

「理解したか?」

「あ、はい。」

そんな馬鹿みたいな心得ある?と思ってしまったのは許して欲しい。
納得していいのか分からないけれど、リュカの表情が真剣そのものだったので頷くしかなかった。
だって、どう見ても冗談ではなく本気で言ってる顔だったから。
だけども色々と衝撃が凄かったので、この日はリュカにお願いして部屋に戻らせてもらったのだけど…私が部屋に戻って話の整理と心の準備をしたいと言った瞬間、ちょっぴり残念そうな顔をしていた。

リュカから新婚の心得なるものを聞いた翌日、夫婦の寝室で朝食を取った後、私は身支度を手伝ってくれている侍女たちにこの世界の新婚…というか夫婦事情を聞いてみることにした……の、だけど。

「うふふ。ええ、新婚というのはとっても大切な期間なのです、奥様。
旦那様と思いっきりいちゃいちゃして下さい!奥様は旦那様にもっと甘えるべきです!」

「そうですわ!夫婦の愛を深める大切な期間なのです!ただでさえ旦那様と奥様はこれまで中々お会い出来なかったのですし、お屋敷にいられるのだって限られていらっしゃるのですから!
いちゃいちゃはとても大切ですわっ!!」

「ええ、ええ!その通り!
世の新婚夫婦は馬鹿になっていいのです!頭の中がお花畑なのは当然なのです!だから奥様、旦那様ともっとベタベタいちゃいちゃすべきですよ!ここは奥様から積極的に甘えていかないと!!」

「そ、そうなんだ。…マティアスと結婚した時は…そ、そういう新婚の心得的なものは聞いてなかったから…本当かなって思ったんですけど…。」

「それは……ええと。
ええ、そ、それは当然ですわ!陛下は皇族ですもの!皇族に嫁ぐというのと貴族に嫁ぐのはまた別なのですわ!!」

「ええ!色々と別なのです!
皇族と世間一般は違うのです!
同じであるわけがない、それは当然なのです奥様!!」

「皇族の新婚生活と世間一般の新婚生活は全く別物ですよ奥様!!
世間一般の夫婦生活にちょっぴり恥ずかしい心得があっても仕方ないのです!だって!世間一般ですので!!愛し合って結ばれた夫婦は貴族も平民も概ね似たようなものです!場所関係なくいちゃいちゃしてますよ!!」

「そ、そっか。そういうものなんですね。その…私、世間に疎くて……、」

「奥様はクライス侯爵様が見つけられるまでは世間から離れて生活していらっしゃったのですから、当然でございますよ!」

「そうですわ!クライス侯爵様の養女になられてからも陛下の婚約者として学ぶ事が多い日々だったでしょう。知らない事も多いはずです!特に俗世については!!」

「ご安心下さい奥様!
私たちがいますからね!知りたい事があれば何でも!遠慮なく聞いて下さいね!!」

「あ、ありがとう…?」

侍女たちに聞いてみれば、皆揃ってリュカのが言っていた内容と同じ事を言うではないか。
あんな恥ずかしい心得がレスト帝国の世間では常識で…当たり前というのは理解した。

「…やっぱり人の目があると…は、恥ずかしいな…。」

「はぅん…!照れていらっしゃる奥様可愛い…!!いいですか奥様、何も恥ずかしい事はないのです!」

「本当、絶世の美女ですのにこんなに可愛いなんて反則…!
そうですよ奥様!可愛い新妻に甘えられて喜ばない夫はおりません!!」

「ずっと見ていたい…!
その通りです奥様!愛する奥様に甘えられれば、旦那様はとても嬉しいはずです!!」

「う、うん、私も、喜んでくれる…とは思ってる…。」

根が日本人気質なのか、人の目を気にせずいちゃつく…という事に少し抵抗感があるのは仕方ないけれど、郷に入っては郷に従えという言葉に素直に従った方がいい。
何事もそう。従い、経験しながら知らない事を学んでいくものなのだ。

「奥様、新婚とはそう…それはそれは甘ったるいものなのです。それは砂糖のように甘いものなのです。どこの新婚夫婦も四六時中いちゃこらしております。皆総じて同じなのです。」

「旦那様の奥様愛はもう周知の事実です!奥様が自ら行動すると旦那様はそれはもう、すごく喜ぶと思いますわ!ええ!!」

「新婚なのですから、気にせずいきましょう!私たちは旦那様と奥様がいちゃいちゃしていてもぜんっぜん気にしませんから!寧ろもっとやれ…いえ!極当たり前の事と認識しておりますから!
奥様が奥ゆかしい方なのは存じておりますが、楽しまなければ勿体ないですよ!こういう事は実践あるのみですからね!」

「う、うん?」

「さて。仕度も丁度整いましたし…奥様、先程も申し上げました通り、実践あるのみ!で御座いますよ!!」

「きっと旦那様は楽しみにしておられますからね!」

「旦那様の期待に応えましょう!難しく考える必要はありませんよ!奥様は旦那様に甘えるだけでいいのです!!恥ずかしいと思う事はありませんよ!皆やってますから!みーんな!!なので安心していちゃついて下さいね!!」

「あ、はい。」

侍女からの激励?を受け、仕事をしているリュカの元へ向かう私。
恥ずかしいのは人の目がある時で、二人の時は全然問題ない。
寧ろ私がこのお屋敷で過ごす間はリュカをどれだけ愛しているか沢山伝えようと思っていたわけなので、いちゃいちゃも全然問題ない。
人の目がなければ喜んでいちゃいちゃするし、私だってしたい。

「……愛してるって沢山実感してもらうには絶好の機会って考えればいいよね、うん。」

そう。私の羞恥心よりもリュカの心の安寧の方が大事だ。
それに、この世界の新婚夫婦は皆総じて人前でもいちゃいちゃするのが当たり前らしいのだから、私が恥ずかしく思うだけで実際は多分、周りからすればそれほど恥ずかしい事でもないのだろう。
…そういえばマティアスの時も結構いちゃついてた記憶が…。
侍女や護衛の騎士たちがいようとマティアスは構わず私を膝の上に乗せたし、何ならミケーレたちがいる前でキスもした記憶がある。
なるほど、と何か納得した瞬間だった。色々調べたらしいリュカの言葉だけでなくマティアスとの夫婦生活でも身に覚えがありまくるし、侍女たちも揃って同じ事を言うのだから世間一般の常識で間違いない。きっと。
なら、なら私の羞恥心以外何の問題もないわけだ。

「……よし…!」

“普通”で“当たり前のこと”なのだと頭や心が理解すると、覚悟が決まるのは早かった。
リュカを幸せにするのは私だけが出来る事で、リュカに甘えたりリュカを甘やかしたり出来るのは恋人で妻になった私だけ。
そう思うとむくむくと湧いてきたのが乙女心。…乙女?女心?どっちでもいいか。兎も角、この機会に嫌という程リュカに愛を実感してもらおう作戦を実行しようと思う。

「旦那様、奥様をお連れしました。」

侍女の一人がノックすると、部屋の中から『入れ』とリュカの声がして、侍女がゆっくりとドアを開ける。
私はもう、恋も愛も知らなかった頃とは違う。
マティアス、リュカ、ヴァレ、カイルに恋をして、恋人になって、妻にもなった。
私の夫となった二人と恋人の二人は私をとても愛してくれている。
私の我が儘をもっと聞きたいと言ってくれているし、もっと甘えて欲しいとも言ってくれる。
今でも十分我が儘を言っていると思うし甘えているつもりなのだけど、皆はまだまだだと言う。
彼らと恋をして。手探りながらこれまで過ごしてきて、女として学んだ事も沢山ある。
大好きなひとを喜ばせられるようになったのも、その内の一つ。
これからする事に対し、リュカはどんな反応をするだろう。
想像すると私の女子…いや、妻スイッチがONになった。

「サイカ、どうした。何故突っ立ったままでいる。」

ドアの近くで立ったまま動かない私を、リュカが不思議そうに見ている。
ルドルフや侍女、誰かの目がある前でいちゃついたり甘えたりするのはやっぱり恥ずかしいけれど、新婚夫婦がいちゃつくのは当たり前だと皆言っているし、きっと言葉通り気にしないでいてくれるだろう。

「リュカ、」

「サイカ?…まさか!おい、体調でも悪いのか!?おい!お前たちは何をしてい「リュカ。」何だ!体調が悪いのなら無理して「抱っこして。」………え…?」

かなり…これはかなり恥ずかしい。
しかしこれも新妻の務め…!そしてリュカに私の愛と日々の幸せを実感してもらう為!!

「抱っこして膝に乗せて。」

「…………。」

手を広げて待ってみるけれど、リュカは時を止めたように固まっている。
覚悟を決めてやってるけれどかなり恥ずかしいので何か反応して欲しい。
段々と顔に熱が集まっていくのが分かる。すごく熱い。耳がじんじんしているのも気のせいじゃない。
どうしよう、恥ずかし過ぎて涙が出そうになってきた。
やらなきゃよかったかも、何て思いつつリュカを見つめ続けると、ぷはぁ!とリュカが息を吐いた。

「な、…え?……なん、……?」

「リュ、リュカ……ダメだった…?」

恥ずかし過ぎて目に溜まった涙が決壊しそうになった瞬間、リュカが座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がり、無言で目の前まで来ると私を抱えソファーに移動する。

「…はーーーーーー、」

「…リュ、リュカ…?」

「…息、止まったぞ…。」

「ご、ごめんね…?」

リュカの膝の上でぎゅうう、と力一杯抱き締められてちょっぴり苦しいけど、嬉しい。

「…あーーーー…、可愛い…。
僕の妻が可愛過ぎて死にそうだ…。」

「お、大袈裟な…」

「大袈裟なものか。実際息が止まったんだぞ?…だが良い。可愛すぎるのも大歓迎だ。是非明日もしてくれ。いや、毎日でもいい。毎日さっきのをやってくれ。」

「え…ええ…?」

「…あーーー…、もう、…何なんだ。結婚生活最高だな。マティアスに自慢してやろう。」

「ええ…?恥ずかしいよ…!」

「仕方ないだろう?こんな可愛い甘え方されちゃ自慢するなというのが無理だ。僕は自慢したい。マティアスだけじゃなくヴァレリアにもカイルにも自慢してやりたい。僕の前でこんな可愛く甘えたんだぞと声を大にして自慢してやりたい。駄目か?駄目じゃないよな?お前は僕の望みを叶えてくれるんだよな?ん?」

ちゅ、ちゅ、ちゅ、と顔中に口付けるリュカは止まらない。
目尻や頬、鼻先へキスしていたものが唇へ移動し、何度も何度も繰り返される。
その内舌も入って、気持ちよくて心地よくてうっとりしてしまいそうなキスの嵐……の最中にはっと気付いた。ここにはルドルフや侍女がいる事を!
新婚夫婦のいちゃいちゃが当たり前とは言っても、流石にディープなキスとこの今にも致してしまいそうな雰囲気を見られているのはいくらなんでも恥ずかし過ぎるので唇を離そうとリュカの胸を押してみる……が、離れたい私の意思に反し、私の顔をがっちり固定したリュカは周りにルドルフたちがいようとも気にもしていない様子でディープなキスを続けるのだった。
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