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最終話 夢列車
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街の明かりに近づいてるのか、空の暗さは先のようではない。ちらちらと星屑のような光が地に転がり、無機質に照らされた夜空は沈黙のまま雄弁に語る。
聡太はゆっくりと目覚めた。窓ガラスにもたれた身体を起こし、記憶を整理する。そして思い起こした、晶の死。
晶は数日前、狭い自室の中央で首を括り亡くなった。遺書もなく、身辺の整理も行っていない切実な死だった。
それは聡太にとって硬く封じられた記憶であり、避けたい事実として刻まれていた。出来ることなら矮小な自尊心と軽薄な自虐に溺れていたかった。そしてその報を聞いて以来、聡太は初めて彼の地に戻る。
晶は夢列車が好きだった。それは、夢列車の凛としたフォルムやそこから見える四季折々の景色ではなく、もっと空想的なものへの好意だった。
晶曰く、夢列車は夢を運ぶのではなく、夢を見せる列車だという。昔はロマンチストが過ぎると笑っていたが、今は少しばかり頷ける。
やはりあれは夢だったのだ。聡太の中に確信が生まれる。
もしかしたらあの夢は、晶が不甲斐ない自分に与えてくれたエールかもしれない。そして晶が最後に言った言葉———聡太が次にすることは決まっている。
「終点、響林駅。終点、響林駅」
車内アナウンスが流れ、重い荷物と切符を手に、聡太は夢列車を出る。冷気が身体に染み渡り、聡太の気を引き締めた。こうしている間にも先の夢は、聡太の頭から薄れて消えて行く。
右手首につけた時計を見ると午後七時を回っていた。響林で降りて晶の墓まで向かうのに十分な時間がある。
「忘れないからな」
聡太はぽつりと呟き、早歩きで駅を出た。彼の目には前のような光はない。しかし、その奥には微かな覚悟の灯火が静かに燃えている。
聡太は急ぐ。あの夢を忘れぬために、晶という存在を心に刻むために。罪を赦さぬために、罪と向き合うために。
ふと背後を振り向くと、折り返しの夢列車が再び夢咲へと向かっていた。夜を切り裂き、あの白銀の列車はただ煌々と進む。
———また誰かに夢を見せているのかもしれない。
了
聡太はゆっくりと目覚めた。窓ガラスにもたれた身体を起こし、記憶を整理する。そして思い起こした、晶の死。
晶は数日前、狭い自室の中央で首を括り亡くなった。遺書もなく、身辺の整理も行っていない切実な死だった。
それは聡太にとって硬く封じられた記憶であり、避けたい事実として刻まれていた。出来ることなら矮小な自尊心と軽薄な自虐に溺れていたかった。そしてその報を聞いて以来、聡太は初めて彼の地に戻る。
晶は夢列車が好きだった。それは、夢列車の凛としたフォルムやそこから見える四季折々の景色ではなく、もっと空想的なものへの好意だった。
晶曰く、夢列車は夢を運ぶのではなく、夢を見せる列車だという。昔はロマンチストが過ぎると笑っていたが、今は少しばかり頷ける。
やはりあれは夢だったのだ。聡太の中に確信が生まれる。
もしかしたらあの夢は、晶が不甲斐ない自分に与えてくれたエールかもしれない。そして晶が最後に言った言葉———聡太が次にすることは決まっている。
「終点、響林駅。終点、響林駅」
車内アナウンスが流れ、重い荷物と切符を手に、聡太は夢列車を出る。冷気が身体に染み渡り、聡太の気を引き締めた。こうしている間にも先の夢は、聡太の頭から薄れて消えて行く。
右手首につけた時計を見ると午後七時を回っていた。響林で降りて晶の墓まで向かうのに十分な時間がある。
「忘れないからな」
聡太はぽつりと呟き、早歩きで駅を出た。彼の目には前のような光はない。しかし、その奥には微かな覚悟の灯火が静かに燃えている。
聡太は急ぐ。あの夢を忘れぬために、晶という存在を心に刻むために。罪を赦さぬために、罪と向き合うために。
ふと背後を振り向くと、折り返しの夢列車が再び夢咲へと向かっていた。夜を切り裂き、あの白銀の列車はただ煌々と進む。
———また誰かに夢を見せているのかもしれない。
了
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