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第十一章 最強魔法対決!
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ジュダは、顔を覆った。
「王妃陛下は、赤子をどこかで取り違えたんじゃないですか! 俺はやっぱり、ベゲットの子供じゃないのかも……」
「ちょっと、フィリッポさん」
我慢できずに、真純は声をかけていた。
「さっきから、言い過ぎです。殿下が仰る通り、戦いは本来剣で行うべきなんですから。魔法は二の次です。それなのに、魔法のことでこんなに追い詰めて、剣術の方にまで支障が出たらどうするんです!」
フィリッポは、ハッとしたような表情になると、ジュダのそばに寄り添った。ぽんぽんと、赤毛を撫でる。
「マスミさんの言う通りですね。私が悪かったです。チョコをあげますから、元気を出して?」
「チョコは、もううんざりだ。大体、甘い物は苦手なんだよ。力が出る気がしない」
相変わらず顔を覆ったまま、ジュダがぶつぶつ言う。フィリッポは、首をかしげた。
「昔は、甘い物が好きだったのに? 私が食べていた焼き菓子を、ひったくろうとしていたじゃないですか」
ジュダは、パッと顔を上げると、フィリッポの腕を叩いた。
「いつの話をしてんだよ、小っ恥ずかしい! 赤子だし、訳がわかってなかったんだろ!」
そう言うジュダの顔は真っ赤だが、不快というわけでは無さそうだ。少しは元気を取り戻したかな、と真純は安心した。
「まあまあ。ジュダさん、苦手でも、戦う前にはチョコレートを食べた方がいですよ。栄養がありますから。僕のいた世界では、疲労回復効果があると言われていました」
「へえ、そうなのか」
ジュダが、目を見張る。ルチアーノは、それを見て微笑んだ。
「フィリッポ殿は、いいものを盗んでくれたようだな。ジュダ、ひとまず食べて元気を出せ。そなたがベゲット殿の息子であることは、間違い無い。父君を知る者は皆、面差しが似ていると言っておる。……そして父君は、賢く正義感にあふれた人物だった。そなたは、その性格をそっくり受け継いだではないか。それで十分だ。仮に受け継がない部分があったとて、落ち込む必要は無い」
ジュダの顔がほころぶ。それから、とルチアーノは続けた。フィリッポをじろりと見る。
「フィリッポ殿は、モーラントで家庭教師をしていたのだろう? 教え子たちにも、あのような物言いをしていたのか?」
「まさか。あんなことを言えば、首が飛びますよ。それに、そこまでして学問を極めさせようとは思いませんでしたし……」
フィリッポは、そこでハッとした表情になった。ルチアーノが微笑む。
「だ、そうだ、ジュダ。つまり、フィリッポ殿がそなたに一生懸命になるのは、優れた魔術師になって欲しいという一心、愛情ゆえと言えよう。しかも、給金をもらっているわけでも無いのにな」
ジュダは、何とも言えない表情になった。ルチアーノが、再び厳しい声音になる。
「とはいえ、物には限度というものがある。フィリッポ殿、指導時の言葉には気を付けるように」
「はい、反省しております」
いつに無く神妙に、フィリッポが答える。ルチアーノは満足げに頷くと、三人の顔を順繰りに見た。
「さて。そこで、本日の戦法だが。アルマンティリア側は、火魔法を中心としようと思う」
「王妃陛下は、赤子をどこかで取り違えたんじゃないですか! 俺はやっぱり、ベゲットの子供じゃないのかも……」
「ちょっと、フィリッポさん」
我慢できずに、真純は声をかけていた。
「さっきから、言い過ぎです。殿下が仰る通り、戦いは本来剣で行うべきなんですから。魔法は二の次です。それなのに、魔法のことでこんなに追い詰めて、剣術の方にまで支障が出たらどうするんです!」
フィリッポは、ハッとしたような表情になると、ジュダのそばに寄り添った。ぽんぽんと、赤毛を撫でる。
「マスミさんの言う通りですね。私が悪かったです。チョコをあげますから、元気を出して?」
「チョコは、もううんざりだ。大体、甘い物は苦手なんだよ。力が出る気がしない」
相変わらず顔を覆ったまま、ジュダがぶつぶつ言う。フィリッポは、首をかしげた。
「昔は、甘い物が好きだったのに? 私が食べていた焼き菓子を、ひったくろうとしていたじゃないですか」
ジュダは、パッと顔を上げると、フィリッポの腕を叩いた。
「いつの話をしてんだよ、小っ恥ずかしい! 赤子だし、訳がわかってなかったんだろ!」
そう言うジュダの顔は真っ赤だが、不快というわけでは無さそうだ。少しは元気を取り戻したかな、と真純は安心した。
「まあまあ。ジュダさん、苦手でも、戦う前にはチョコレートを食べた方がいですよ。栄養がありますから。僕のいた世界では、疲労回復効果があると言われていました」
「へえ、そうなのか」
ジュダが、目を見張る。ルチアーノは、それを見て微笑んだ。
「フィリッポ殿は、いいものを盗んでくれたようだな。ジュダ、ひとまず食べて元気を出せ。そなたがベゲット殿の息子であることは、間違い無い。父君を知る者は皆、面差しが似ていると言っておる。……そして父君は、賢く正義感にあふれた人物だった。そなたは、その性格をそっくり受け継いだではないか。それで十分だ。仮に受け継がない部分があったとて、落ち込む必要は無い」
ジュダの顔がほころぶ。それから、とルチアーノは続けた。フィリッポをじろりと見る。
「フィリッポ殿は、モーラントで家庭教師をしていたのだろう? 教え子たちにも、あのような物言いをしていたのか?」
「まさか。あんなことを言えば、首が飛びますよ。それに、そこまでして学問を極めさせようとは思いませんでしたし……」
フィリッポは、そこでハッとした表情になった。ルチアーノが微笑む。
「だ、そうだ、ジュダ。つまり、フィリッポ殿がそなたに一生懸命になるのは、優れた魔術師になって欲しいという一心、愛情ゆえと言えよう。しかも、給金をもらっているわけでも無いのにな」
ジュダは、何とも言えない表情になった。ルチアーノが、再び厳しい声音になる。
「とはいえ、物には限度というものがある。フィリッポ殿、指導時の言葉には気を付けるように」
「はい、反省しております」
いつに無く神妙に、フィリッポが答える。ルチアーノは満足げに頷くと、三人の顔を順繰りに見た。
「さて。そこで、本日の戦法だが。アルマンティリア側は、火魔法を中心としようと思う」
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