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2 アサータ王国へ

1 案ずるより

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王と王妃は、レーナの留学にあまり良い顔をしなかったらしいけど辺境伯に言いくるめられたみたい。いいぞ!辺境伯ほめて遣わす

「お父様とお母様がわたくしが居なくなるのは寂しいっておっしゃってね、なんだか嬉しかったわ。でも、わたくしの心は変わらないわ」

僕と鼻と鼻をくっつけながら言うレーナは一日で雰囲気が変わったような気がする。

辺境伯の滞在は予定よりもずいぶん伸びたけれどあの日以来レーナの部屋には来ない。なんだかすごく忙しいらしい。

レーナが例の帽子を被って少年の姿で城や園庭のあちこちに出没するのが僕たちの新しい日常になった。マオリのお化粧も上達したし、近寄って来る令嬢へのけん制もすごくうまくなった。

「わたくしは幻の王女だったけれど、今度は幻の王子になったのね」

レーナが楽しそうに笑いながら弱い阻害魔法をかけたガゼボでお茶を楽しむ。なぜ弱いかって?それは魔力のある貴族に見つけてもらう為さ。

「魔力の強い自分だからこそ、阻害魔法をかけているガゼボの中の王子を見つける事が出来たのだ」って自慢させようってレーナが言いだしたんだ。


幻の王子のうわさが広がれば広がるほど、レーナは城を離れやすくなるんだ。



そして、今日、しばらくレーナに代わって”幻の王子”を演じる少年が来た。辺境伯の執事候補の一人で、レーナよりも年齢も背格好も大きいけれど、いいのかな?

モリーオから馬車に乗ってやってきた少年は僕にお土産も持ってきたんだ。金の鈴のついた赤いリボン、もちろん金はレーナの髪の色。

レーナが僕の首にこのリボンを結ぶと、レーナが小さくなった。

「すごいわ!本物の猫にしか見えない!」

僕を膝にのせてレーナがパチパチと手をたたき、マオナが満足げにうなずいた

「コドモトビネコには見えませんね」

「ナー」

うん、声は変わらないぞ、みんなが小さくなったんじゃなくて僕が大きくなったんだ。レーナの膝からドレッサーに乗り移って自分自身の姿を確かめようとジャンプした、のに、ドレッサーに届かずに着地するハメになった。

「マダナ!」
「能力も普通の猫並みになってしまうのでしょうか?」

僕は二人の声は無視してドレッサー前の椅子を経由して鏡の前に立った。

へー普通の猫になった僕もなかなか男前だね。座った姿や後ろ姿も確認する。猫というのもなかなかいいね。でも
飛べないのは調子狂うなあ

それから少年の姿のレーナと僕でモリーオから来た少年と軽く阻害魔法をかけたガゼボで打ち合わせをする。少年は今日から数日城に滞在し、レーナは明日から病気で寝込むことになっている。

どんな噂が広がるのか聞くことが出来ないのがちょっと残念だ

だって今晩僕たちはモリーオ領へ向かうんだからね
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