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3王立学園に入学//少年期1
3-7 一度目の学園祭
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そうこうするうちに学園祭の季節になった。
王立学園の学園祭は出入りの業者や卒業生が店を出していたり、生徒が模擬店や出し物をしていたりと賑やかだ。招待状があれば身分に関係なく誰でも入場できるから、卒業生らしき御令嬢が連れ立って歩いていたり、平民の家族が物珍し気に学園の建物を眺めていたりと様々な人の姿が見られる。今僕たちがいる三階のパーラーの窓から見る風景はとても平和で楽し気だ。
「ビイはいいの?伯爵たちと一緒じゃなくて?」
僕の隣で同じように下を見下ろしているアルが僕の方をみた。気を使ってくれているのかな?
「いいんですよ。家族とはいつでも一緒に居られますから」
「ふーん家族仲が良いのだな」
「使用人とも仲良しですよ。リックに内緒でエディに剣術を教わってるくらいですからね」
「エディ?」
「アルが来た時に僕の部屋に居た使用人です。ここの卒業生で、剣も強いんですよ」
「ふーん、護衛も兼ねてる感じかな?……良かったなあ、皆仲良しで」
アルの言い方が 妙にしみじみしていて、アルの家族仲はどうなんだろうかと少し心配になる。
「アルのご家族はどうなんですか?」
不敬だと思うけれどつい聞いてしまった。アルは留学を許されるほどに愛されているのか、それとも留学と言う名で放り出されたのか?
「心配してくれるの?ボクだって家族仲が悪い訳じゃないからね」
アルが僕の意図するところを察したのか苦笑いをする
「そうですよね。いくら家族といっても王族が気軽に他国に息子を訪ねては来れませんね」
「でしょ?」
開け放たれているドアの向こうから こちらを伺う気配がする。
「あの人はいつもの護衛ですか?」
「国からは三人連れて来ているから交代だよ、彼らにも休みは必要だからねえ」
「アルとは…仲、いいんですか?」
「ああ 子供のころからの付き合いだからな」
僕とエディくらい仲が良いのかもしれない。
「何か食べに行きますか?」
「うん、いいね」
僕達は模擬店で買った串焼きを立ち食いして、瓶に入ったジュースを瓶に口をつけて飲みながら歩いた……講堂の方から、音楽が聞こえてくる。講堂では昼間の数時間ダンスパーティが催されているのだ。
「学祭のダンスパーティ、音楽を演奏する学生も踊る方も失敗しないように、選曲が絶妙らしいね」
何処から聞いたのかアルが面白そうに言いながら講堂に足を向ける
「まさか、アル、踊るんですか?」
「さあどうしようかなあ?ビイは?……ダンス苦手だったね」
講堂に近づくと窓もドアも開け放たれていた。
「どうりで音楽が良く聞こえてくると思った。音楽はまずまずだね?」
階段を登ろうとしたアルが一段目に足をかける前に方向を変えた
「窓から覗いてみようか?」
二人で窓からのぞいてみるとフレーミイ王子が踊っていた。お相手は婚約者候補と言われている4年生のグリーン公爵令嬢、簡単な曲でもやっぱり上手下手は分かるんだなあ。お二人ともダンスのレッスンのお手本の様、息もピッタリなのは普段から一緒にいるからなのかな?
「ねえビイ、ボクと踊ってよ?」
「は?」
踊る二人を見ながら考え事をしていた僕の思考をアルが遮る。
「ボク女性パートも得意なんだよね」
「はああ??」
アルが何を言っているのかが理解できない。踊りに行こう、じゃなくて 踊ってよ?女性パート?誰が?アルが?
「でも、ここじゃ目立っちゃうからなあ」
アルは何かを探してキョロキョロしている。
「あ!こっちこっち」
アルに引っ張られて講堂の裏側に連れていかれると、なぜか空間が出来ている。なんでアルこんな場所を知っているのだろう?
「わあ、ホンモノの秘密のホールだ!ビイ、踊ろう!」
アルは女性パートと言っていたクセに強引に僕の手を取る。こんな強引な女性パートナーはいません!でも、アルにお願いスマイルされると断れないんだよな。
講堂から聞こえてくる音楽に合わせて、僕とアルは踊る。自分で言った通りアルの女性パートは完璧で、授業で組む女生徒よりもよほど上手で踊りやすい。
「アル、お上手ですね!」
「今は簡単な曲ばかりだしね」
「それでも僕は自分のパートだけでも必死です」
チラリチラリと足元を見ながら踊る僕に対してアルはお喋りをする余裕がある
「基本的な曲だけだよ。ルバートの王宮では兄さまたちのダンスの練習相手していたからね。ナイショだけど、今の王太子はビビと同じくらい下手だったからさ、それが外に漏れるのをお母さまが心配してさあ」
さも僕のリードの様にアルがクルリと回る
「ダンスの上手な二番目の兄さまが王太子のお相手で女性パートを踊って練習したんだって。その流れでボクも女性パートを先に覚えて、二番目の兄さまのダンスのお相手――イタ!」
「すいません!」
「よくこれで上級クラスにいるな?」
学園に入る前から一応エディ達や姉上と練習していたんですけどね
「相手が姉上じゃなくてよかった」
「は?」
「だって踏んでも靴、丈夫そうだし」
今度の曲はちょっと難しい、それに話していたら音楽が聴きとりにくい
「え?イタ!」
「ちょっとダメだ もう、アル 黙って!」
「イテ!」
男の子はケンカすると仲良くなるってエディが言っていたけれど、ダンスで足を踏みまくっても仲良くなるのかな?アルは足を踏まれて怒っているけど楽しそうだし、僕も王族相手というより友達相手って気がしてきた。
「ビイ、大分上手くなったんじゃないか?」
「アルのお陰です!でも、こんな場所で男子同士で踊ったのはナイショにして下さいね?」
「ナイショ?いいね。その代わりボクに対しては友達に対するのと同じ言葉遣いにしてね」
「……畏まりました」
ふーん とアルが目を細めた。
「分かった。ダンスで足を踏まれた話をザベスに――」
「了解!分かった、敬語は無し」
うんうんとアルは頷いて今度はご機嫌な顔になった。
王立学園の学園祭は出入りの業者や卒業生が店を出していたり、生徒が模擬店や出し物をしていたりと賑やかだ。招待状があれば身分に関係なく誰でも入場できるから、卒業生らしき御令嬢が連れ立って歩いていたり、平民の家族が物珍し気に学園の建物を眺めていたりと様々な人の姿が見られる。今僕たちがいる三階のパーラーの窓から見る風景はとても平和で楽し気だ。
「ビイはいいの?伯爵たちと一緒じゃなくて?」
僕の隣で同じように下を見下ろしているアルが僕の方をみた。気を使ってくれているのかな?
「いいんですよ。家族とはいつでも一緒に居られますから」
「ふーん家族仲が良いのだな」
「使用人とも仲良しですよ。リックに内緒でエディに剣術を教わってるくらいですからね」
「エディ?」
「アルが来た時に僕の部屋に居た使用人です。ここの卒業生で、剣も強いんですよ」
「ふーん、護衛も兼ねてる感じかな?……良かったなあ、皆仲良しで」
アルの言い方が 妙にしみじみしていて、アルの家族仲はどうなんだろうかと少し心配になる。
「アルのご家族はどうなんですか?」
不敬だと思うけれどつい聞いてしまった。アルは留学を許されるほどに愛されているのか、それとも留学と言う名で放り出されたのか?
「心配してくれるの?ボクだって家族仲が悪い訳じゃないからね」
アルが僕の意図するところを察したのか苦笑いをする
「そうですよね。いくら家族といっても王族が気軽に他国に息子を訪ねては来れませんね」
「でしょ?」
開け放たれているドアの向こうから こちらを伺う気配がする。
「あの人はいつもの護衛ですか?」
「国からは三人連れて来ているから交代だよ、彼らにも休みは必要だからねえ」
「アルとは…仲、いいんですか?」
「ああ 子供のころからの付き合いだからな」
僕とエディくらい仲が良いのかもしれない。
「何か食べに行きますか?」
「うん、いいね」
僕達は模擬店で買った串焼きを立ち食いして、瓶に入ったジュースを瓶に口をつけて飲みながら歩いた……講堂の方から、音楽が聞こえてくる。講堂では昼間の数時間ダンスパーティが催されているのだ。
「学祭のダンスパーティ、音楽を演奏する学生も踊る方も失敗しないように、選曲が絶妙らしいね」
何処から聞いたのかアルが面白そうに言いながら講堂に足を向ける
「まさか、アル、踊るんですか?」
「さあどうしようかなあ?ビイは?……ダンス苦手だったね」
講堂に近づくと窓もドアも開け放たれていた。
「どうりで音楽が良く聞こえてくると思った。音楽はまずまずだね?」
階段を登ろうとしたアルが一段目に足をかける前に方向を変えた
「窓から覗いてみようか?」
二人で窓からのぞいてみるとフレーミイ王子が踊っていた。お相手は婚約者候補と言われている4年生のグリーン公爵令嬢、簡単な曲でもやっぱり上手下手は分かるんだなあ。お二人ともダンスのレッスンのお手本の様、息もピッタリなのは普段から一緒にいるからなのかな?
「ねえビイ、ボクと踊ってよ?」
「は?」
踊る二人を見ながら考え事をしていた僕の思考をアルが遮る。
「ボク女性パートも得意なんだよね」
「はああ??」
アルが何を言っているのかが理解できない。踊りに行こう、じゃなくて 踊ってよ?女性パート?誰が?アルが?
「でも、ここじゃ目立っちゃうからなあ」
アルは何かを探してキョロキョロしている。
「あ!こっちこっち」
アルに引っ張られて講堂の裏側に連れていかれると、なぜか空間が出来ている。なんでアルこんな場所を知っているのだろう?
「わあ、ホンモノの秘密のホールだ!ビイ、踊ろう!」
アルは女性パートと言っていたクセに強引に僕の手を取る。こんな強引な女性パートナーはいません!でも、アルにお願いスマイルされると断れないんだよな。
講堂から聞こえてくる音楽に合わせて、僕とアルは踊る。自分で言った通りアルの女性パートは完璧で、授業で組む女生徒よりもよほど上手で踊りやすい。
「アル、お上手ですね!」
「今は簡単な曲ばかりだしね」
「それでも僕は自分のパートだけでも必死です」
チラリチラリと足元を見ながら踊る僕に対してアルはお喋りをする余裕がある
「基本的な曲だけだよ。ルバートの王宮では兄さまたちのダンスの練習相手していたからね。ナイショだけど、今の王太子はビビと同じくらい下手だったからさ、それが外に漏れるのをお母さまが心配してさあ」
さも僕のリードの様にアルがクルリと回る
「ダンスの上手な二番目の兄さまが王太子のお相手で女性パートを踊って練習したんだって。その流れでボクも女性パートを先に覚えて、二番目の兄さまのダンスのお相手――イタ!」
「すいません!」
「よくこれで上級クラスにいるな?」
学園に入る前から一応エディ達や姉上と練習していたんですけどね
「相手が姉上じゃなくてよかった」
「は?」
「だって踏んでも靴、丈夫そうだし」
今度の曲はちょっと難しい、それに話していたら音楽が聴きとりにくい
「え?イタ!」
「ちょっとダメだ もう、アル 黙って!」
「イテ!」
男の子はケンカすると仲良くなるってエディが言っていたけれど、ダンスで足を踏みまくっても仲良くなるのかな?アルは足を踏まれて怒っているけど楽しそうだし、僕も王族相手というより友達相手って気がしてきた。
「ビイ、大分上手くなったんじゃないか?」
「アルのお陰です!でも、こんな場所で男子同士で踊ったのはナイショにして下さいね?」
「ナイショ?いいね。その代わりボクに対しては友達に対するのと同じ言葉遣いにしてね」
「……畏まりました」
ふーん とアルが目を細めた。
「分かった。ダンスで足を踏まれた話をザベスに――」
「了解!分かった、敬語は無し」
うんうんとアルは頷いて今度はご機嫌な顔になった。
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