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4最終章//少年期2
4-1 3年生に進級
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もうすぐ3年生の新学期が始まる。僕はこの2年で身長が随分伸びたから制服を新調した。新しい制服を着て姿見を見ると、そこには銀の髪を後ろで一つに纏めた紺の瞳の少年、アイスブルーでの夢見で見た”おとこのこ”そっくりの顔が僕の方を見ている。
そっくりだけれど彼と僕は全く違う。僕の両親は健康で今朝だって家族一緒に散歩をして朝食を一緒に食べた、エディやクレアをはじめとした使用人たちとも仲良しだ。姉上の部屋のドアをノックすれば、直ぐに姉上は出迎えてくれるし、クレアが許可すれば姉上の部屋で一緒に過ごす事だって有る。僕は夢見の彼とは違う幸せな毎日を送っている。もちろんこれからも……
「さてと、作戦会議だね。ビイ、ルディ」
父上が広げた紙は、以前見た時よりも書き込みが増えているような気がする。
「今年はフレーミイ王子が卒業する年、リリも王子と一年学園で共に過ごして二年生になる。『運命神』が作る未来の中での大きな出来事『エリザベスの糾弾劇』が行われるのが、次の学園祭後夜祭だ」
父上が体の向きを変えて、僕と向かい合う。
「学園祭の後夜祭でエリザベスは王子にリリへの謝罪を迫られるがエリザベスは謝罪しない。それどころか挑発さえしてその場を去る。ここまでが子供のころに見たビイの夢見だね。『運命神』の未来でのこの事件は、今年の後夜祭の出来事だ。フレーミイ王子にとって最後の後夜祭だからね」
僕は頷き、ルディは表情を変えない。
「それから、ビイのこの前の夢見。舞台は卒業パーティでエリザベスは、リリを伴なった王子に糾弾され剣を突き付けられる、のだね?」
音が全くなかったけれど、王子はエリザベスに向かって剣を振りかざしていた。
「後夜祭と卒業パーティ、この二つの事件の間が約半年。『運命神』の未来では後夜祭の時点でエリザベスは『悪役令嬢』になっている。後夜祭で「証拠もないのに」とエリザベスに言われたフレーミイ王子は卒業パーティまでの間にエリザベスの行動を調べ、証拠を握り証人を用意する。そして、フレーミイ王子の卒業パーティでは、エリザベスは断罪され王子から剣を突き付けられ国外追放を言い渡される、という訳だ」
「国外追放ですか?」
「王子は剣で脅しながらエリザベスに国外追放を言い渡す」
父上は手を伸ばしてテーブルの隅に置かれたお茶を一口飲んだ。
「そして、王子の卒業後すぐにリリは妃候補となりエリザベスは国外追放。ネイビー伯爵家は妃候補への加害を止められなかったという科で訴えられ莫大な賠償金を要求されることになる。エリザベスがリリに危害を加えていた時点ではリリは単なる男爵令嬢なのだから、いくらなんでも重すぎる罰だと思うけれどね、『運命神』の未来ではトリアは既に亡くなっていて、僕も既に死んでいるのかもしれない。まだ16歳のヒビキに異議を唱える力は無く、全ての責任を負うことになったのだろう」
「僕が見でたお化け屋敷や荒れ果てた庭はその未来なんですね」
夢見の中のヒビキが、そんな中でもエリザベスの事を案じていたのは彼も義姉が好きだったからなのかもしれない。
3年生になると、女生徒は扇の携帯が許される……胸ポケットに扇を差しているのは貴族令嬢の証だ。姉上も母上から進級のお祝いだと白い小ぶりの扇を頂いて携帯している。平等とか言っておきながら、こんなふうに見た目でも分かるようになるのはどうなんだろう、いずれ出て行く不平等社会に向けて心の準備をしておきなさいって事なのかな?
クラスメイトの女子たちの扇の扱いが様になってきた頃、いつもは遅刻ギリギリのアルが余裕のある時間に教室に入ってきたと思ったら、真っすぐに姉上の前に来た。
「ザベス この手がピンクウサギを突き飛ばしたって噂を聞いたんだけど、この手はそんなことしないよね?」
朝の挨拶も抜きで姉上の手を握ったアルの手を僕は引きはがす
「おはようございます アル殿下、朝っぱらからふざけるのはおやめください」
「あ、ビイも居たんだ。おはよう」
アルが肩を竦めて、僕に挨拶を返し
「おはようございます殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。ええとウサギの事でしたら、わたくし個人的にあの方とお会いしたこともございませんわ」
姉上が我に返ってにこやかにアルに挨拶をする。
「だよね? よくよく言っておいたよ」
アルは満足げに頷いているけれど、僕には看過できないな。
「アル その噂はどこから?」
「ボクの護衛から聞いたんだよ。ザベスがフレーミイ王子をめぐってピンクウサギと揉めてるって噂があるらしいよ?」
「わたくしが?」
「そう、単なる噂だよね。護衛達もあのピンクウサギをボクに近寄らせたことも無いのに、ザベスがピンクウサギといつ接触したのかって首をひねって――」
そこで予鈴がなり、その話は打ち切られた。
そっくりだけれど彼と僕は全く違う。僕の両親は健康で今朝だって家族一緒に散歩をして朝食を一緒に食べた、エディやクレアをはじめとした使用人たちとも仲良しだ。姉上の部屋のドアをノックすれば、直ぐに姉上は出迎えてくれるし、クレアが許可すれば姉上の部屋で一緒に過ごす事だって有る。僕は夢見の彼とは違う幸せな毎日を送っている。もちろんこれからも……
「さてと、作戦会議だね。ビイ、ルディ」
父上が広げた紙は、以前見た時よりも書き込みが増えているような気がする。
「今年はフレーミイ王子が卒業する年、リリも王子と一年学園で共に過ごして二年生になる。『運命神』が作る未来の中での大きな出来事『エリザベスの糾弾劇』が行われるのが、次の学園祭後夜祭だ」
父上が体の向きを変えて、僕と向かい合う。
「学園祭の後夜祭でエリザベスは王子にリリへの謝罪を迫られるがエリザベスは謝罪しない。それどころか挑発さえしてその場を去る。ここまでが子供のころに見たビイの夢見だね。『運命神』の未来でのこの事件は、今年の後夜祭の出来事だ。フレーミイ王子にとって最後の後夜祭だからね」
僕は頷き、ルディは表情を変えない。
「それから、ビイのこの前の夢見。舞台は卒業パーティでエリザベスは、リリを伴なった王子に糾弾され剣を突き付けられる、のだね?」
音が全くなかったけれど、王子はエリザベスに向かって剣を振りかざしていた。
「後夜祭と卒業パーティ、この二つの事件の間が約半年。『運命神』の未来では後夜祭の時点でエリザベスは『悪役令嬢』になっている。後夜祭で「証拠もないのに」とエリザベスに言われたフレーミイ王子は卒業パーティまでの間にエリザベスの行動を調べ、証拠を握り証人を用意する。そして、フレーミイ王子の卒業パーティでは、エリザベスは断罪され王子から剣を突き付けられ国外追放を言い渡される、という訳だ」
「国外追放ですか?」
「王子は剣で脅しながらエリザベスに国外追放を言い渡す」
父上は手を伸ばしてテーブルの隅に置かれたお茶を一口飲んだ。
「そして、王子の卒業後すぐにリリは妃候補となりエリザベスは国外追放。ネイビー伯爵家は妃候補への加害を止められなかったという科で訴えられ莫大な賠償金を要求されることになる。エリザベスがリリに危害を加えていた時点ではリリは単なる男爵令嬢なのだから、いくらなんでも重すぎる罰だと思うけれどね、『運命神』の未来ではトリアは既に亡くなっていて、僕も既に死んでいるのかもしれない。まだ16歳のヒビキに異議を唱える力は無く、全ての責任を負うことになったのだろう」
「僕が見でたお化け屋敷や荒れ果てた庭はその未来なんですね」
夢見の中のヒビキが、そんな中でもエリザベスの事を案じていたのは彼も義姉が好きだったからなのかもしれない。
3年生になると、女生徒は扇の携帯が許される……胸ポケットに扇を差しているのは貴族令嬢の証だ。姉上も母上から進級のお祝いだと白い小ぶりの扇を頂いて携帯している。平等とか言っておきながら、こんなふうに見た目でも分かるようになるのはどうなんだろう、いずれ出て行く不平等社会に向けて心の準備をしておきなさいって事なのかな?
クラスメイトの女子たちの扇の扱いが様になってきた頃、いつもは遅刻ギリギリのアルが余裕のある時間に教室に入ってきたと思ったら、真っすぐに姉上の前に来た。
「ザベス この手がピンクウサギを突き飛ばしたって噂を聞いたんだけど、この手はそんなことしないよね?」
朝の挨拶も抜きで姉上の手を握ったアルの手を僕は引きはがす
「おはようございます アル殿下、朝っぱらからふざけるのはおやめください」
「あ、ビイも居たんだ。おはよう」
アルが肩を竦めて、僕に挨拶を返し
「おはようございます殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。ええとウサギの事でしたら、わたくし個人的にあの方とお会いしたこともございませんわ」
姉上が我に返ってにこやかにアルに挨拶をする。
「だよね? よくよく言っておいたよ」
アルは満足げに頷いているけれど、僕には看過できないな。
「アル その噂はどこから?」
「ボクの護衛から聞いたんだよ。ザベスがフレーミイ王子をめぐってピンクウサギと揉めてるって噂があるらしいよ?」
「わたくしが?」
「そう、単なる噂だよね。護衛達もあのピンクウサギをボクに近寄らせたことも無いのに、ザベスがピンクウサギといつ接触したのかって首をひねって――」
そこで予鈴がなり、その話は打ち切られた。
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