異世界で吟遊詩人のパトロンになりました

水都(みなと)

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 よそよそしかった空気が若干緩み、ぽつりぽつりと兄さんと軽い話をしていく。

 兄さんが今統治している小さな村は農村地で、自然に溢れ森や川がとてもキレイだという。
 仕事の合間に散歩に出かけ、農家の人々から野菜を貰うこともあるんだとか。

 アレク兄上は庶民と積極的に関わることなんてないが、リュシアン兄さんは違うようだ。
 兄弟だというのに、本当に好みが真逆だ。そもそも兄上だったら仕事のためとはいえのんびりとした田舎の人たちと馬が合わず、すぐに揉めるだろう。

「フレディも最近よく街へ出ているそうじゃないか。何かおもしろいものでも見つけたかい?」
「まあちょっと……ぶらぶら散歩したり、本屋とか入ったり」

 適当に言っただけなのだが、兄さんは興味深そうに頷いた。

「本を読んでいるんだね。どんな本が好きなんだい?」
「どんな、って……」

 前世ではバトル漫画や異世界もののラノベを読んでたが、こっちにそんなものはない。
 第一、この家には軍事記録だの歴史書だの小難しい本ばかりで小説すらない。
 兄さんたちは読書家だったが、フレデリックとしてはあまり本に親しみはなかった。

「私も小説をよく読むんだ。だが、今暮らしている村には大きな本屋がなくてね。なかなか新しい本を手に入れることが出来なくて残念だよ」
「え、兄さんが小説を読むのか?」
「ああ、特に魔法使いや妖精が出てくる話がおもしろい。空想小説というのかな」

 兄さんがファンタジー小説を!?
 前の世界では驚くことでもないが、こっちの世界では空想小説なんて暇を持て余した貴族の女が読むものという認識だ。
 アレク兄上もリュシアン兄さんも、てっきりそんな本は嫌いだと思っていたが。

 俺が驚いていると、兄さんが照れ臭そうに頭を掻いた。

「兄上からは良い顔をされないけれどね。実際の魔法使いはこんな風じゃないとか、妖精や精霊なんているはずがないと散々言われたよ。でもそういうことを空想していると、心がわくわくとしてくるだろう」

 まるで少年のような顔をして、兄さんはそう言った。
 それは前世で好きなアニメを語らう子供や俺たちオタクと、なんら変わらないように見える。
 
「現実と違うからこそ、夢が見られて楽しいんだよな」

 思わず口をついて出てしまった言葉に、前世の記憶がよみがえった。
    
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