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7-1.秘密の場所
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屋敷に来てから初めての外出。
そしてルーカスとの初めての散歩に、シェルの鼓動は高鳴っていた。
屋敷の周りは雑木林になっていて、シェルはルーカスの斜め後ろについて歩く。
朝の陽射しが重なり合う木々の隙間を塗ってチラチラと覗いている。
ルーカスは何も言わなかったが、この静かな早朝を歩くだけで尻尾が自然と揺れた。
もう叶わないと思っていた、ご主人と一緒に散歩をするという夢の時間を、歩みを進めるごとに噛みしめる。
屋敷から離れていくと道も舗装され、同じように獣人を連れている人たちとすれ違った。この辺りは散歩コースになっているらしい。
主人と仲良さげにアイコンタクトを交わしたり、笑い合う獣人を見る度そんな関係を羨ましく思う。
しかし、シェルが挨拶しようとすると、皆一様に顔を背け、足早に通り過ぎてしまう。怯えたように大きく道の端に避けるものも少なくない。
「ご主人様……」
朝の陽射しに似合わず、ルーカスは眉ひとつ動かさずにいた。
じっと前だけを見て、リードを引いている。
ふと、ルーカスが道を逸れた。
散歩コースから外れると、シェルの腰ほどにもなる草が生い茂っている。
掻き分けながらしばらく進んで行くと、水の音と匂いを感じた。
水が落ちる音が一層強くなり、肌に冷たいものが当たるようになると、開けた場所に辿り着いた。
岩壁から湧水が細い滝のように落ち、その下は小さな池のようになっている。
ルーカスは首輪からリードを外すと、平たい岩の上に腰を降ろした。
「ここはあまり人が来ない。少し自由にしていろ」
ルーカスの声色が柔らかい。
けして激しくはない水しぶきがミストのように飛んできた。
「素敵な場所ですね。ご主人様の秘密の場所ですか?」
「まあ、そうだな」
口の端を緩ませるルーカスに、シェルの尻尾も動き出す。
池を覗き込むと、陽の光が揺れる水面にキラキラと反射していた。手を差し入れると、驚くほど冷たい。
「ご主人様、とても冷たくて気持ちいいですよ」
こちらに来てほしかったのだが、ルーカスは穏やかな笑みを向けるばかりだった。
両手を水につけ、ルーカスの元へ戻る。ルーカスの手に両手で触れた。
その冷たさに、ルーカスは驚いて目を剥く。そして、呆れたように苦笑した。
「何をするのかと思えば」
「ビックリしましたか?」
突然、ルーカスに手を掴まれた。その手がルーカスの頬に持って行かれる。
「冷たいな」
冷えた掌に、ルーカスの体温が直に伝わる。ルーカスの双眸に自分が映っている。
なんだか気恥ずかしくなり、視線を外した。
「ご主人様、あの……」
「お前、本当に覚えてないのか?」
何を問われているのかわからず、シェルは小首を傾げた。
そしてルーカスとの初めての散歩に、シェルの鼓動は高鳴っていた。
屋敷の周りは雑木林になっていて、シェルはルーカスの斜め後ろについて歩く。
朝の陽射しが重なり合う木々の隙間を塗ってチラチラと覗いている。
ルーカスは何も言わなかったが、この静かな早朝を歩くだけで尻尾が自然と揺れた。
もう叶わないと思っていた、ご主人と一緒に散歩をするという夢の時間を、歩みを進めるごとに噛みしめる。
屋敷から離れていくと道も舗装され、同じように獣人を連れている人たちとすれ違った。この辺りは散歩コースになっているらしい。
主人と仲良さげにアイコンタクトを交わしたり、笑い合う獣人を見る度そんな関係を羨ましく思う。
しかし、シェルが挨拶しようとすると、皆一様に顔を背け、足早に通り過ぎてしまう。怯えたように大きく道の端に避けるものも少なくない。
「ご主人様……」
朝の陽射しに似合わず、ルーカスは眉ひとつ動かさずにいた。
じっと前だけを見て、リードを引いている。
ふと、ルーカスが道を逸れた。
散歩コースから外れると、シェルの腰ほどにもなる草が生い茂っている。
掻き分けながらしばらく進んで行くと、水の音と匂いを感じた。
水が落ちる音が一層強くなり、肌に冷たいものが当たるようになると、開けた場所に辿り着いた。
岩壁から湧水が細い滝のように落ち、その下は小さな池のようになっている。
ルーカスは首輪からリードを外すと、平たい岩の上に腰を降ろした。
「ここはあまり人が来ない。少し自由にしていろ」
ルーカスの声色が柔らかい。
けして激しくはない水しぶきがミストのように飛んできた。
「素敵な場所ですね。ご主人様の秘密の場所ですか?」
「まあ、そうだな」
口の端を緩ませるルーカスに、シェルの尻尾も動き出す。
池を覗き込むと、陽の光が揺れる水面にキラキラと反射していた。手を差し入れると、驚くほど冷たい。
「ご主人様、とても冷たくて気持ちいいですよ」
こちらに来てほしかったのだが、ルーカスは穏やかな笑みを向けるばかりだった。
両手を水につけ、ルーカスの元へ戻る。ルーカスの手に両手で触れた。
その冷たさに、ルーカスは驚いて目を剥く。そして、呆れたように苦笑した。
「何をするのかと思えば」
「ビックリしましたか?」
突然、ルーカスに手を掴まれた。その手がルーカスの頬に持って行かれる。
「冷たいな」
冷えた掌に、ルーカスの体温が直に伝わる。ルーカスの双眸に自分が映っている。
なんだか気恥ずかしくなり、視線を外した。
「ご主人様、あの……」
「お前、本当に覚えてないのか?」
何を問われているのかわからず、シェルは小首を傾げた。
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