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2-1.コンビ結成
しおりを挟む終演後、楽屋口の前で出待ちをした。
続々と芸人たちが出てくる中、なかなか灰村は出てこない。
一本しかない街灯の下で待つことしばらく、やっと灰村が出てきた。
目の前に立っているというのに、俺に気づかないのかそのまま帰ろうとする。
「灰村くん?」
「えっ、はい」
振り返った彼は俺より少し大きいだけなのに、どこか迫力がある。これがハイエナの獣人か。
「俺、フロリック事務所の……」
「キューブの椎名さん、ですよね?」
『キューブ』は養成所で知り合った佐野と組んでいたコンビだ。知られてるなら話が早い。
灰村がひょこっと頭を下げた。
「お疲れさまです。灰村ヨルと言います」
「さっきのライブ、見させてもらったよ」
「あ、そうなんですか」
テンション低いな。もう少しリアクションしろよ。
「これから時間ある? メシ行かない?」
「でも僕、お金なくて……」
「心配すんな、俺の奢りだから」
「そんな、申し訳ないです」
断りたいのかと思ったが、どうやら本当に金の心配をしてるらしい。
「お前、芸歴何年?」
「3年目です」
「じゃあ俺の方が先輩だな。この世界、先輩は後輩に奢るもんだから気にすんな」
強引にそう言って歩き出すと、観念したのか灰村がついてきた。
少し歩けば安いファミレスがあったはずだ。奢ってやる、なんて偉そうなことを言っても俺だって売れない芸人。そんなたいしたもの食わせてやれるわけじゃない。
にしても、この辺暗いな。細い路地にはほとんど街灯がない。
あの劇場、なんであんな辺鄙な場所にあるんだ。あれじゃ客が来ないのも当然……
「ぶつかりますよ」
灰村に腕を引っ張られた。
「そこ、バケツが落ちてます」
灰村が指差した場所に目を凝らすと、道の真ん中に銀色のバケツが転がっていた。
「なんでこんなとこにバケツが……お前、よく見えたな」
「ハイエナは夜行性なので、夜目がきくんです」
これが獣人の特殊能力ってやつか。
「へえ、ありがと。便利な目だな」
「いえ……」
ふいと視線を逸らされた。クールというか、無愛想なやつ。
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