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11-1.ブラッシング
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数日後、フロリック事務のサイトに『キューブ解散のお知らせ』が発表された。
SNSでも報告され、いいねが数件。まあそんなものだろう。
『元』相方となった佐野からは、解散話をされて以降何の連絡もない。
放送作家をやる以上、どこかで会うことにはなるだろうが。
「解散って、やっぱり寂しいですね」
ネタ作りのためにヨルを家に呼び出すと、俺よりセンチメンタルになっていた。
「俺がキューブ続けてたら、お前と組めねえけど」
「そ、そうなんですけど。でもずっと見てきたキューブさんの解散はやっぱり、寂しいです。陽向さんは寂しくないんですか?」
「俺は別に。終わったもんは仕方ないだろ。それより」
ネタ帳から顔を上げて、ヨルを見据える。
「これからは、Wアッシュが始まるんだからな」
「……はいっ」
ヨルの灰褐色の瞳が薄く細められた。
とは言ったものの、俺たちはフリーだ。
勢いで事務所を辞めてしまったが、完全にノープランだった。
芸人として大事な横や縦の繋がりも、佐野に任せきりだったことを今更反省する。
フリーではオーディションすらロクに受けられない。とはいえ、フリーでやっている芸人だっていることにはいる。
俺たちが門前払いにあっているのはつまり、ヨルがハイエナ獣人だからだ。オーディションに行けなければネタさえ見てもらえない。ハイエナの獣人を知ってもらうチャンスすら掴めなかった。
「次のライブ、新ネタでいくんですか?」
「おお、しっかり覚えろよ」
「はいっ!」
ヨルは嬉しそうに尻尾を揺らしたが、ライブと言っても仕事じゃない。誰でも金を払えば出られる地下ライブ。
結局俺たちは、そういう活動しかできていない。
「あー……くたびれたっ」
しばらく書き続けた後、ラグの上にひっくり返る。まだ完成じゃないが、とりあえず一旦休憩だ。
「お疲れさまでした」と覗き込むヨルの髪の毛が蛍光灯に照らされている。相変わらずのボサボサ頭。
「お前、ライブの前は髪くらい梳かせよ。この前もボサボサだっただろ」
「梳かしてますよ、ほら」
そう言って、ヨルが手櫛でちょちょいっと髪を触った。いや、なんにも変わってねえし。
「俺が梳かしてやるよ」
「え! 陽向さんがしてくれるんですか!」
「ほっといたらお前一生やらないだろ」
部屋の隅に放置していたビニール袋から、ブラシを取り出す。柔らかい羊毛のブラシ。
「犬用のだけど」
「もしかして、僕のために買ってくれたんですか?」
「それ以外にないだろ」
「ありがとうございます!」
キラキラした目で見つめられる。ハイエナのくせに、子犬みてえ。
ヨルの背後にまわって、灰褐色の髪を梳かす。少しゴワゴワしているのは、ハイエナというよりヨルの手入れの問題のような気がする。
ヨルは少し猫背になって、俺が髪を梳かしやすいように屈んだ。
「ちょっと髪に引っかかるな。痛かったら言えよ」
「大丈夫です。ドキドキしますね」
「なんでだよ」
「だって僕、ブラッシングなんてしてもらうの初めてで。血統書付きの獣人になったみたいです」
「大げさ。これ百均のブラシだぞ」
SNSでも報告され、いいねが数件。まあそんなものだろう。
『元』相方となった佐野からは、解散話をされて以降何の連絡もない。
放送作家をやる以上、どこかで会うことにはなるだろうが。
「解散って、やっぱり寂しいですね」
ネタ作りのためにヨルを家に呼び出すと、俺よりセンチメンタルになっていた。
「俺がキューブ続けてたら、お前と組めねえけど」
「そ、そうなんですけど。でもずっと見てきたキューブさんの解散はやっぱり、寂しいです。陽向さんは寂しくないんですか?」
「俺は別に。終わったもんは仕方ないだろ。それより」
ネタ帳から顔を上げて、ヨルを見据える。
「これからは、Wアッシュが始まるんだからな」
「……はいっ」
ヨルの灰褐色の瞳が薄く細められた。
とは言ったものの、俺たちはフリーだ。
勢いで事務所を辞めてしまったが、完全にノープランだった。
芸人として大事な横や縦の繋がりも、佐野に任せきりだったことを今更反省する。
フリーではオーディションすらロクに受けられない。とはいえ、フリーでやっている芸人だっていることにはいる。
俺たちが門前払いにあっているのはつまり、ヨルがハイエナ獣人だからだ。オーディションに行けなければネタさえ見てもらえない。ハイエナの獣人を知ってもらうチャンスすら掴めなかった。
「次のライブ、新ネタでいくんですか?」
「おお、しっかり覚えろよ」
「はいっ!」
ヨルは嬉しそうに尻尾を揺らしたが、ライブと言っても仕事じゃない。誰でも金を払えば出られる地下ライブ。
結局俺たちは、そういう活動しかできていない。
「あー……くたびれたっ」
しばらく書き続けた後、ラグの上にひっくり返る。まだ完成じゃないが、とりあえず一旦休憩だ。
「お疲れさまでした」と覗き込むヨルの髪の毛が蛍光灯に照らされている。相変わらずのボサボサ頭。
「お前、ライブの前は髪くらい梳かせよ。この前もボサボサだっただろ」
「梳かしてますよ、ほら」
そう言って、ヨルが手櫛でちょちょいっと髪を触った。いや、なんにも変わってねえし。
「俺が梳かしてやるよ」
「え! 陽向さんがしてくれるんですか!」
「ほっといたらお前一生やらないだろ」
部屋の隅に放置していたビニール袋から、ブラシを取り出す。柔らかい羊毛のブラシ。
「犬用のだけど」
「もしかして、僕のために買ってくれたんですか?」
「それ以外にないだろ」
「ありがとうございます!」
キラキラした目で見つめられる。ハイエナのくせに、子犬みてえ。
ヨルの背後にまわって、灰褐色の髪を梳かす。少しゴワゴワしているのは、ハイエナというよりヨルの手入れの問題のような気がする。
ヨルは少し猫背になって、俺が髪を梳かしやすいように屈んだ。
「ちょっと髪に引っかかるな。痛かったら言えよ」
「大丈夫です。ドキドキしますね」
「なんでだよ」
「だって僕、ブラッシングなんてしてもらうの初めてで。血統書付きの獣人になったみたいです」
「大げさ。これ百均のブラシだぞ」
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