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耳に触れないように丁寧に梳かしていく。
灰褐色の毛並みは、きちんとブラシを通せば手触りも良くなる。所々黒ずんでいるように見えたのは黒いブチ模様で、ちゃんと見えればメッシュのようでかっこいい。
ホント、ちゃんとしてれば人気出るんだろうにな。
ピクン、とヨルの耳が動いた。うっかり手が触れてしまったらしい。
「あっ、悪い」
「い、いえ……あの……」
ヨルが落ち着かないように俯いた。
「あの、耳……触っても、大丈夫ですよ」
「え?」
「というか……触って、ください」
ヨルの横顔を覗き込むと、ほんのり顔を赤くしていた。
「……耳が性感帯とかじゃないよな」
「ち、違います!」
ああ、よかった。何させられんのかと思った。
嫌なら不用意に触ろうとは思わなかったが、ひょこひょこ動く耳が気になってはいた。
「じゃあ……」
遠慮なく、と耳に触れる。
丸い耳は案外柔らかい。ふにふにと触ると、くすぐったいのかヨルが笑った。
「気持ちいい?」
「はい。あ、いえ、変な意味じゃないですよ!」
「別に何も言ってねえよ」
耳の毛並みに沿って撫でる。髪の毛よりも柔らかな毛並みは手触りが良い。気に入って何度も撫でてやると、次第に耳がふにゃふにゃと垂れてきた。
「陽向さん……」
振り向いたヨルの目は少しトロンとしていて、その視線はもちろん俺に向いている。
ドキッと、心臓が跳ねた。
「そ、そうだ。尻尾! 尻尾もブラシかけてやるよ!」
「あ、はい。お願いします」
早鐘のように鳴る心臓に気づかれないように、俺はヨルから少し離れて尻尾にブラシを掛けた。
「尻尾は毛先だけ色が違うんだな。黒くって、なんか筆みたいだ」
ムリヤリ喋って動揺を誤魔化す。ああ、なにドキドキしてんだ俺。
案外細い尻尾は、本当に墨をたっぷり吸った筆のように見える。
ボリュームのない尻尾に黙々とブラシをかけていると、あっという間に終わってしまった。
「はい、終わり。触ってみろよ、ツヤツヤになっただろ」
「本当だ。手触りが全然違いますね」
「だろ? せっかくキレイな毛並みしてるんだから、ちゃんと手入れしないともったいないぞ」
ヨルがキョトンとして顔を上げた。
「キレイ、ですか?」
「ああ、キレイな灰褐色だろ」
「ハイエナの毛並み、そんな風に言う人なんていませんよ。こんな、汚い色……」
ヨルの苦笑した顔に落ちた影は、どこか物悲しかった。
「ハイエナの毛並みなんて、まともに見たことあるやついないだろ。偏見にまみれた目で見てるから、そんな風に思うだけだ」
「はい……でもいいんです。陽向さんが褒めてくれるだけで、僕は」
「ヨル……ッ!?」
瞬間、ヨルに抱き寄せられていた。あっという間に、俺はヨルの腕の中。
「ちょっ、おまっ」
「嬉しいです。陽向さんが褒めてくれるなら、僕もこの毛並みのこと好きになれました」
「そ、そりゃ良かったけど。なら、これからはちゃんとブラッシングしろよ」
「陽向さんにしてもらいたいです」
甘えるように小首を傾げてる。別に可愛くないからな。
けど、俺の背中にまわされた腕は、頷いてやらないと放してはくれなそうで。
「……わかったよ」
「ホントですか!」
「ライブとか出る前だけな! 仕事の前だけはやってやる」
「はい! いっぱい仕事貰えるようにならないとですね!」
笑顔の弾けたヨルが、ぎゅーっと俺を抱きしめる。
解放してほしかったのに逆効果かよ。
でもその身体はあたたかくて、やわらかくて、振り解くのは……もう少し、待ってやってもいい。
灰褐色の毛並みは、きちんとブラシを通せば手触りも良くなる。所々黒ずんでいるように見えたのは黒いブチ模様で、ちゃんと見えればメッシュのようでかっこいい。
ホント、ちゃんとしてれば人気出るんだろうにな。
ピクン、とヨルの耳が動いた。うっかり手が触れてしまったらしい。
「あっ、悪い」
「い、いえ……あの……」
ヨルが落ち着かないように俯いた。
「あの、耳……触っても、大丈夫ですよ」
「え?」
「というか……触って、ください」
ヨルの横顔を覗き込むと、ほんのり顔を赤くしていた。
「……耳が性感帯とかじゃないよな」
「ち、違います!」
ああ、よかった。何させられんのかと思った。
嫌なら不用意に触ろうとは思わなかったが、ひょこひょこ動く耳が気になってはいた。
「じゃあ……」
遠慮なく、と耳に触れる。
丸い耳は案外柔らかい。ふにふにと触ると、くすぐったいのかヨルが笑った。
「気持ちいい?」
「はい。あ、いえ、変な意味じゃないですよ!」
「別に何も言ってねえよ」
耳の毛並みに沿って撫でる。髪の毛よりも柔らかな毛並みは手触りが良い。気に入って何度も撫でてやると、次第に耳がふにゃふにゃと垂れてきた。
「陽向さん……」
振り向いたヨルの目は少しトロンとしていて、その視線はもちろん俺に向いている。
ドキッと、心臓が跳ねた。
「そ、そうだ。尻尾! 尻尾もブラシかけてやるよ!」
「あ、はい。お願いします」
早鐘のように鳴る心臓に気づかれないように、俺はヨルから少し離れて尻尾にブラシを掛けた。
「尻尾は毛先だけ色が違うんだな。黒くって、なんか筆みたいだ」
ムリヤリ喋って動揺を誤魔化す。ああ、なにドキドキしてんだ俺。
案外細い尻尾は、本当に墨をたっぷり吸った筆のように見える。
ボリュームのない尻尾に黙々とブラシをかけていると、あっという間に終わってしまった。
「はい、終わり。触ってみろよ、ツヤツヤになっただろ」
「本当だ。手触りが全然違いますね」
「だろ? せっかくキレイな毛並みしてるんだから、ちゃんと手入れしないともったいないぞ」
ヨルがキョトンとして顔を上げた。
「キレイ、ですか?」
「ああ、キレイな灰褐色だろ」
「ハイエナの毛並み、そんな風に言う人なんていませんよ。こんな、汚い色……」
ヨルの苦笑した顔に落ちた影は、どこか物悲しかった。
「ハイエナの毛並みなんて、まともに見たことあるやついないだろ。偏見にまみれた目で見てるから、そんな風に思うだけだ」
「はい……でもいいんです。陽向さんが褒めてくれるだけで、僕は」
「ヨル……ッ!?」
瞬間、ヨルに抱き寄せられていた。あっという間に、俺はヨルの腕の中。
「ちょっ、おまっ」
「嬉しいです。陽向さんが褒めてくれるなら、僕もこの毛並みのこと好きになれました」
「そ、そりゃ良かったけど。なら、これからはちゃんとブラッシングしろよ」
「陽向さんにしてもらいたいです」
甘えるように小首を傾げてる。別に可愛くないからな。
けど、俺の背中にまわされた腕は、頷いてやらないと放してはくれなそうで。
「……わかったよ」
「ホントですか!」
「ライブとか出る前だけな! 仕事の前だけはやってやる」
「はい! いっぱい仕事貰えるようにならないとですね!」
笑顔の弾けたヨルが、ぎゅーっと俺を抱きしめる。
解放してほしかったのに逆効果かよ。
でもその身体はあたたかくて、やわらかくて、振り解くのは……もう少し、待ってやってもいい。
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