俺の相方はハイエナです

水都(みなと)

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16-1.新たな旅立ち

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ぼんやり目を開けると、天井の蛍光灯が見えた。
もしかしたら、あれは夢だったんじゃないだろうか。
でもこの腰と更にその奥の痛みが、夢ではなかったことの何よりの証拠だ。

俺は、ヨルに抱かれた。

「陽向さん、大丈夫ですか?」

狭いベッドの横で、ヨルが俺に添い寝してる。
心配そうな顔してるが、お前がヤったことだろうが。

「なんとか、な……」
「陽向さん」

またヨルが俺を抱きしめる。抱き枕じゃねえっつーの。
あんなことしたのに、俺もヨルの身体もキレイだった。後始末は全部ヨルがしてくれたのか。甲斐甲斐しいことで。

素肌同士で抱き合って、ヨルの身体から直に体温が伝わってくるのは悪くない。

「僕、これからは絶対に陽向さんを守ります。陽向さんが泣くことがないように」
「自分が散々泣かしといてよく言う」
「陽向さんを泣かせていいのは、僕だけですから」

まっすぐしたヨルの灰褐色の瞳。
それに映る俺はムカつくけど、幸せそうな顔をしていた。

「ばっかじゃねえの」


次の日はお互いライブもバイトもなかったから、ダラダラとベッドの上にいた。

ヨルはメシ食うときとトイレ行くとき意外、俺を腕の中から放さなかった。下手すりゃトイレまでついてきそうな勢いだったから、いい加減にしろと蹴り飛ばしてやった。

と、スマホが鳴る。画面を見ると『守谷さん』と表示されている。
意外な名前に、慌てて飛び起きた。

「守谷さん!?」

誰ですか? というように首を捻るヨルに、「前の事務所のマネージャー」と言って通話に出た。

「もしもし」
『椎名くん、久しぶり。今大丈夫?』
「えっ、ええ、はい」
『ちょっと話がしたいんだけど、いつもの喫茶店にでも来てくれないかな。良ければ、灰村くんも一緒に』
「ヨルもですか?」

この距離なら会話も聞こえていたのだろう。チラリとヨルを見ると、頷いていた。

「わかりました。すぐ行きます」

通話を切ると、はーと息が漏れた。
あんな啖呵を切って辞めたくらいだ。守谷さんとはもう縁が切れてしまったと思っていた。

「お前も一緒にだってさ」
「何のお話でしょうね?」

俺だって見当がつかない。
なんとなく声が弾んでいたから、悪い話ではなさそうだが。

と、ヨルの耳が落ち着かないように忙しなく動いていた。あっちを向いたりこっちを向いたり。

「大丈夫だって。守谷さんの口調からして、悪い知らせじゃなさそうだ」
「でも、僕にも話なんて……もしかしたらマネージャーさん、僕が陽向さんの相方に相応しくないと怒っているのでは!」
「は?」

ヨルは大真面目に、切羽詰まった顔をしていた。

「マネージャーさんにとって、陽向さんは今まで育ててきた大切な芸人さんのはずです。そんなキューブとして未来ある陽向さんを僕がたぶらかして引き抜いたって、マネージャーさん怒っているのかもしれません!」
「たぶらかしてって……キューブ解散は元々決まってたんだぜ」
「でもマネージャーさんからしたら、僕のせいだって思ってるのかもしれませんよ! 実際、そのせいで陽向さんは事務所を追い出され……」

追い出されたんじゃなくて、自分から辞めたんだっつーの。
ヨルはぎゅっと目をつぶったかと思うと、今度は力強い視線で俺を見た。

「でも、僕はもう覚悟しました。誰に何と言われようとも、絶対に陽向さんと別れません。もう絶対に陽向さんに悲しい思いをさせませんから」
「お前、俺と駆け落ちでもする気かよ」

すっかり変なスイッチ入ってんな。
ヨルの顔がサッと赤くなる。

「か、駆け落ち……! そうですね。事務所から陽向さんを攫ってしまったようなものですから、僕と陽向さんは駆け落ちしたもどうぜ……あいたっ!」

ヒートアップしているヨルの額をベシッと叩いた。

「バカ言ってないで着替えろ。出掛けるぞ」
「はぁい……」

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