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しおりを挟む喫茶店に入ると、既に守谷さんが来ていた。
「初めまして、灰村くん。元キューブのマネージャー、守谷新です」
「は、初めまして。灰村ヨルです。ご挨拶もなく、椎名さんとコンビ組ませてもらってすみません」
ニコニコしてる守谷さんとは対照的に、ヨルはガチガチに緊張していた。
「謝らなくていいよ。キミがいなかったら、椎名くんは地元に帰ってただろうからね。引き留めてくれてありがとう」
「いえ、僕はそんな……」
「それで守谷さん、話ってなんなんですか? まさか、社長を説得してくれたわけじゃないですよね」
「うん、悪いけどそれはできなかった」
少しだけチラついた希望が一瞬で消える。
でも守谷さんの瞳の奥に、何かの決意がある気がした。
「僕、事務所を辞めて独立することにしたんだ」
寝耳に水だった。今までそんな話聞いたこともない。
それに、このタイミングって……
「まさか、俺を庇ったせいでクビに……」
自分が辞めただけならまだしも、人の人生まで狂わせたとなっちゃ責任が重すぎる。
でも守谷さんは「違う違う」と顔の前で手を振った。
「前々から考えてはいたんだ、いつか独立したいって。でもなかなか踏ん切りがつかなくてね」
守谷さんは、控え目で堅実なタイプだ。優秀なマネージャーだし、このまま事務所に勤めていれば出世できただろう。
独立なんて、そんな野心を秘めていたとは思わなかった。
「でも、なんで今……」
「椎名くんを見てね」
俺? と自分を指差すと、守谷さんがうなずく。
「周りに反対されても自分を貫く椎名くん、一緒に頑張ってる灰村くん。キミたちを見て、自分が恥ずかしくなったよ。マネージャーとして散々偉そうなことを言ってきたのに、僕がこんなんじゃダメだって反省した」
守谷さんが俺とヨルを交互に見据えた。
「今独立すれば、キミたちのチカラになることができる。協力させてほしい。僕が作る事務所に、所属してほしいんだ」
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