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しおりを挟む反射的に、隣に座るヨルと顔を見合わせた。
「所属!? マジで言ってるんですか?」
「ああ、社長には椎名くんを連れてっていいと了承は得てるよ。あとは、WアッシュがOKしてくれればいい」
コンビを解散し、事務所を辞めて、すべて立ち切ったと思い込もうとしていた。
それでもモヤモヤと残っていた胸の奥が、晴れていく。
「どうする、ヨル?」
「僕はもちろん、陽向さんが良いのなら」
ヨルの耳と尻尾がピンと立っていた。
それならもう、答えはひとつだ。
「ありがとうございます、守谷さん。またよろしくお願いします!」
「お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ。まだなーんにも決まってない、まっさらな事務所だからね。フロリック事務所とは円満にやっていけるとは思うけど、他に何も強みなんてないから。フリーでいるのとあんまり変わらないかもしれないよ」
「そんなことないです。心強いですよ。な?」
「はい! 不束者ですが、よろしくお願いします!」
ヨルがついて来てくれれば、ライブで浴びたあの笑いと拍手があれば、それだけで進んでいけると思ってた。
でも俺たちを信じてくれる人がいるってことは、こんなにも心強い。
守谷さんも緊張していたのか、ホッと肩の力が抜けたようだった。
「こちらこそよろしくね。いやあ、結成して間もないのにすっかり仲良しみたいで安心したよ」
「っ、そんな仲良く見えます?」
こっちは抱かれてきたばかりだ。まさかとは思うが、バレてはいないかと気が気じゃない。
そんな心情を知ってか知らずか、守谷さんがニヤリと笑った。
「灰村くんが『陽向さん』って呼んでるじゃない。僕にも佐野くんにも絶対呼ばせなかったのにねぇ」
さっきまでガチガチだったヨルの顔がパッと明るくなって、照れたように耳が垂れていた。
「お前、2人きりのとき以外は呼ぶなっつっただろ!」
「す、すみません! つい……」
「かわいい名前なのにね~。僕もこれからは陽向くんって呼ばせてもらおうかな」
事務所の社長じゃなければ殴ってますよ。
……と言う前にヨルの声が飛んでいた。
「守谷さんはダメです」
きっぱりと言い放たれ、守谷さんの目が点になる。
「おい」と俺が小突くと、ヨルがハッと我に返った。
「い、いえ、あの……名前は、僕が無理言って呼ばせてもらってて、陽向さんは本当は呼ばれたくないので、その……」
慌てふためくヨルに、守谷さんが「ごめんごめん」と笑った。
「冗談だよ。灰村くんだけ特別なんだもんね」
「まあ、相方なんで」
横を見ると、ヨルが「僕だけ特別……」と喜びを噛みしめていた。これ、バレるのも時間の問題な気がするぞ。
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