人の心が読める少女の物語 -貴方が救ってくれたから-

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六章 -交わる関係-

Day1②湿った風

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 車に戻ると、男の子達は既に戻っていたようで中に乗り込んでいた。
 そして、私達もそれぞれの席に向かう中、さっきまでと違う助手席側の扉を開けた私の顔をお兄さんが不思議そうに見るのがわかる。


「すいません。ほんの少しだけ酔ってしまって、助手席に座らせて貰ってもいいですか?」

「ああ、そういうこと。大丈夫?一応酔い止めとか持ってきたけど飲むかい?」(窓も開けといたほうがいいかもな)

 
 どうやら、千佳ちゃんのお兄さんは良い人らしい。
 少し嘘を吐くのは心苦しいけれど、彼の妹のためなのでそこは見逃してもらう他ない。


「いえ、本当に少しだけなので大丈夫です」

「そうなんだ」(とりあえず、なんかしら袋だけ鞄から出しておくか)

「……それと、袋と薬も一応持ってきたので安心してください」

「そっか。じゃあ、辛くなったら言ってね」(この子、ほんとしっかりしてるなー)

 
 優しい人なようでよかった。さすがに、運転してもらっている立場で冷たい対応も取りづらいと思っていたし。


「え?蓮見さん酔ったの?大丈夫?」

 
 そして、そんなことを話しながらシートベルトを締めようとした時、後ろから千佳ちゃんの想い人の声が聞こえてきて少しだけ首を動かす。


「……はい。大丈夫です」

「そっか。早く治るといいね」(せっかくのチャンスで席離れるとか、無いでしょ)

「……ありがとう、ございます」

「何か、できることあったら言ってね?」(まぁ、とりあえず今はポイント稼ぎしとくか)

「……どうも」


 前から思ってはいたが、やっぱりこの人は自分勝手だと思う。
 今は、私相手だから取り繕っているけど、いつもの人との関わり方を見ていればわかる。

 確かに、容姿も整っているし、運動も、勉強もどちらもできるらしいから自信を持っても仕方が無いのかもしれない。

 それに、そういったところが千佳ちゃんや他の女の子達に、強さや、頼りがいといった魅力に思えるようだからいい所でもあるのだろう。


「えー、雄哉くん透ちゃんにだけ優しすぎじゃない?私も酔おうかなー」

「はぁ?そんなこと言ってんなら、体揺さぶってやろうか」

「あははっ。嘘だって、ほんとに酔っちゃうからやめて!」


 でも、やっぱり私はこの人のような表面だけの優しさは嫌いだ。
 前から思っていたことだが、誠君の優しさを知った今はなおさら強くそう思う。

 
「ほらほら、みんな暴れずにシートベルトして。そろそろ車出すよ」

「「はーい」」

 
 全員と仲良くなれる気はしないし、する気もない。
 その一方で、全てを切り捨てていくのも違うと思う。

 少しだけ開けられた助手席側の窓を見ながら、何となくそう思った。
 






◆◆◆◆◆






 やがて今日の宿泊先に到着すると、一旦荷物を置くためにそれぞれの部屋に向かう。


「すごーい。海も見えるじゃん!」

「あっ、ほんとだ。ちょー近い!」


 お風呂やトイレ、部屋の設備を探検していた千佳ちゃん達のはしゃぐ声が部屋中に響き渡り、少し苦笑する。


「荷物置いたらロビーにって言ってたし、そろそろ行かないと」

「あっ、やば。忘れてた」

「ほんとだ、もうこんな時間経ってる」

 
 時間を忘れたように歩き回っていた彼女たちは、案の定それが頭から抜け落ちていたようだ。  


「うん、部屋は後にしよ?夜はバーベキューだし、早く行けば綺麗な夕日も見えるかも」
 
「「ビーチの夕日っ!」」

「ふふっ。忘れ物はしないようにね」


 今度はまるで暴れるようにして準備を始める二人に再び苦笑してしまった。
 でも、楽しいことならそうなるのも無理はないのかもしれない。

 ふと、誠君との夏の思い出を思い出しながら、そんなことを思う。


「そういえば、どの水着が良いと思う?」

「え?千佳、あんたそんなに水着持ってきたの?」

「あはは、悩んでたら決まらなくてさー。みんなと被るのも嫌だったし」

「ふーん。ちなみに私はこれだけどね」

「あっ、可愛い」

「へへ。でしょ?」


 恐らく、また違うことに興味が移ってしまったんだろう。
 さすがに、遅れるわけにもいかないので、とりあえず会話の流れを修正するため会話に入る。


「この水着。千佳ちゃんの今の髪色に合ってていいかもね」

「あっ、やっぱり?」

「うん。とってもよく似合うと思うよ」

「えへへ、そっかなー」

 
 視線がチラチラと向けられていた水着を選んで伝えると、案の定というべきか彼女は得意げな顔で鏡の前で体に合わせ始めた。
 それに、個人的にもそれが一番似合うように思える。


「透ちゃんは、どんなの着てくの?」

「私は、これかな。日焼けに弱いのもあるし」

「え?そんなのでいいの?良かったら、着ないやつ貸そっか?」

 
 いわゆるラッシュガードと言われる露出の少ない水着に、海でも着れるシンプルなグレーのパーカー。
 持ってきていたそれを取り出すと、明らかにげんなりした顔で見られる。


「ううん。大丈夫、いつもこんな感じだから」

「えー、せっかく可愛いのに勿体ないよ」

「ほんとだよ。せめて、もっと明るい感じの色のにすれば?」

「ありがとう。でも、今日はこれでいいから」

「まぁ、そこまでいうなら止めないけどさ」


 正直なところ、最低限の形だけ整っていればあまり着飾ろうとは思ってない。
 そもそも、誠君に着て見せた水着は元々持ってくる気もなかったので家に置いたままだし。


「じゃあ、そろそろ行こっか。忘れ物は大丈夫そう?」

「「おっけー」」


 そして、私は元気な足取りで出ていく二人の背中を見ながら、寂しく置いていかれたカードキーをそっと掴んで外に向かった。
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